青春。青臭い同盟

によ

青春。青臭い同盟

高校二年生の初夏。僕は焦っていた。なぜかって?周りの友達はみんな童貞を捨てているからだ。

高校入学当初、仲良くなった奴らはみんな童貞だったはずだ。

いつからだろう。僕は「チェリーボーイ君は大変だねえ」とか「右手が恋人?左手が恋人?」なんてからかわれ始めた。

高校三年生になったら受験勉強で忙しくて、恋人作る暇なんてねえ!ましてや童貞を捨てられるわけがない!

そう言うわけで、今僕は非常に焦っているのだ。

ブーブー。スマホが鳴った。メッセージが表示される。

【バイト三回も変わって頂き有難うございました。良かったらご飯でもご馳走させてください】

バイト先の一つ年下のルリからだった。

暇人の僕は、ルリのシフトを三回も変わっていたのだ。下心も少しありきで。

もちろん、ご飯に行こうと返事を送った。

・・・・・・・・・

初めてルリとご飯に行ってから、五回ほどデートを重ね、僕たちは付き合い始めた。

今日は付き合って初めてのデートだ。

「あ、あのさ。今日、俺の家、誰もいないんだ。良かったら来る?」

真夏で外デートは暑すぎると言うのもあるが、僕はルリを早く抱きたかった。愛おしかったから。

「外、暑いですもんね…。行きます」

エアコンを利かしておいた自分の部屋は、ひんやりしていて気持ちよかった。

「ちょうどエアコン付けっ放しだったわー。寒くない?」僕が言うと「ちょっと寒いかもです」とルリが言ったので、リモコンの温度を上げた。

「麦茶持って来るね」僕はそう言い、リビングに麦茶を取りに行った。

女の子が自分の家に居る、それだけで興奮した。

「はい麦茶、持ってきたよ」僕が部屋に戻ると、ルリは僕のベッドに座っていた。

「私の家、布団だから、ベッドって新鮮で!」

理性が突然切れて、僕はルリをベッドに押し倒した。

「僕、初めてだから、うまくないかも知れないけど」

「私も、初めてなんです。ずっと佐藤先輩に初めてをあげたいって思ってて」

僕は、ただひたすら、彼女の肌を求めた。エアコンの温度を上げてしまったから、二人とも少し汗ばんでて、舐めるとちょっとしょっぱくて。お互いの動きはぎこちないけれど、幸せで満たされていて。

麦茶に入っていた氷は、いつの間にか全部溶けていた。

「大丈夫だった?」恐る恐る聞く。

「先輩のこと、実はずっと好きだったんです。だから、痛いっていう気持ちよりも幸せの方が上でした!」ルリはニコッと笑った。

布団には血がついていた。

この子を幸せにしたい。絶対にこの子と結婚するんだ。僕は思った。

・・・・・・・・・

あの日から、僕は何回もルリを抱いた。

最初のぎこちない動きも、だいぶマシになり、ルリも痛みは無くなったらしい。

大好きだ。気持ちは変わらない。

夏の終わり、ルリから突然【別れよう】とメッセージが来た。

僕は分からず、すぐに電話をかけた。

「突然どうしたの?」

「別れよう」

「なんで?」

「先輩。気づいてないかも知れないけどね。付き合ってから、会うたびにセックスしてるんだよ」

「それは、好きだから…」

「違うよ。それは、私のことが好きなんじゃない。愛おしいんじゃない。自分のためだよ。全部」

「でも、花火大会だって行ったし」

「浴衣のまま公衆トイレでやろうって頭おかしいと思ったよ。でも好きだから我慢したのに。毎回毎回」

「俺、好きだよ」

「ごめんね。もう無理」

僕とルリはあっけなく別れた。

・・・・・・・・

青臭い思い出だ。本当に。

今ならあの時どうすれば良かったのか分かる。

ただ、彼女と二人の時間を大切にすれば良かっただけだったんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

青春。青臭い同盟 によ @niyo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る