第3話

「・・・・・・・・・・・・ん」


「お、目が覚めたみたいだね、同盟軍の元エースパイロットさん」


「・・・・・・・ここは、天国か」


「ぷっ、なに寝ぼけたこと言ってんの。ここはただの医務室だよ」


「・・・また、俺だけ・・・」


「あれ? 生き残れたことに対する感動とかないの? てっきり泣いて喜ぶと思ってたんだけど・・・」


「・・・命が助かったからと言って、帝国軍の捕虜になって喜ぶほど、俺は落ちぶれちゃいない」


「帝国軍?」


「とぼけるな、お前ら帝国軍のせいで俺たちは――ッ」


「ありゃありゃ、そんな暴れないでよ~、お兄さん何か大きな勘違いをしてるみたいだね」


「――勘違い、だと?」


「ここは帝国軍の医務室ではないし、私はただの民間人だよ」


「・・・」


「あれ~信じてない顔だね? でも普通に考えてさ、私みたいなパンピーが捕虜の世話してるなんておかしくない? しかも、拘束具もなしに普通に会話してる。しまいには専用の個人ベッドまで用意しちゃって。これが捕虜ならVIP待遇過ぎるでしょ」


「・・・まあ、言われてみれば、確かに。でも、だとしたらあんたは誰で、ここはどこなんだ」


「いいよお兄さん、冷静になってきたねえ。真実にたどり着こうとする眼差し、たまらないねえ」


「なんかむかつくな」


「お兄さんは助けられたんだよ、私たち"――――"にね。って、やば、これ言っちゃダメな奴か、長に怒られちゃう」


「お、おい今なんて――」


「あーごめんごめん、今の忘れて! 何でもない! お兄さんがに助けられて、僚機共々この秘匿地帯に匿われてるなんて、私言ってないから! 絶対言ってないんだからね!」


「白銀の、狂戦機・・・」


ガラガラ


「ミサ、けが人の容態はどうかし――あら? もう目覚めてたの」


「り、りりりりりりりりリカさーん! 患者の容態! 問題なしであります! 衛生士ミサ、通常業務に戻ります! 押忍! 患者! 変なことを口走らないように! 以上! 失礼します!」


「な、なんだったんだあいつ・・・」


「ごめんなさいね慌ただしい子で。何か変なこと言ってしまわなかったかしら?」


「(変なことというか、至極言っちゃいけなさそうな事実を湯水のごとく垂れ流していったが)はぁ、まあ大丈夫です」


「良かった、あなたの目が覚めたら呼ぶようにって艦長から言われてたの。急ぎじゃないわ、立てるようになったら突き当りの部屋まで来て頂戴。それと、はいこれ。機体の中に忘れてたペンダントよ」


「あ・・・ペンダント、そういえば忘れてた・・・どうも」


「今回の戦場での出来事、それにきっとこれまでのことも、艦長は話したがっていると思うわ。よろしくね」


「・・・はあ。艦長さん、ですか」


「ええ、私たちの慕う、立派な艦長よ。それじゃあ私はこれで」


ガラガラ


「陽射しが、まぶしいな」

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