私はちゃんと人間だった

Mostazin

第1話

今日も昨日と同じように憂鬱な朝が来た。

外はすでに私達を照らす準備が出来ているようだった。

でも、私の心は照らされる準備はできていない。

いや、違うな。私の心は照らされたくないのだ。


元気でもないのに、無理やり元気にしてこようとする朝が私は嫌いだ。

まあ、これは太陽のせいでも、地球の自転のせいでもなく、全ては私のせいなんだろうけど。


私はごく普通な人生を歩んできてるのだと思う。

普通に小学校、中学校、高校、大学に進み、今では社会人5年目だ。

どの場所でも何かを必死に努力したことはなかったが、なんとなくで普通に生きてこれた。

だから、恐らく俺は幸せものだろう。

だって、この「普通」が難しい方もいるのに、「なんとなく」で「普通」を達成することが出来ているからだ。


でも、この「普通」がより「普通」になってきている。

というのも、朝起きた時に今日何が起きるのかが分かるようになってしまった。

朝起きて、行きたくもない会社にため息をつきながら出社する。

そして、一日に二回は怒られながら、業務を進めていく。

定時になったら、「お先に失礼します。」と言い、家に帰る。

そして、横になる。ちょっと仮眠をとったら、もう22時だ。

焦って、お風呂に入り、かなり遅い夕飯を食べて、また寝る。

こんな感じで誰から見ても不健康な生活をしているから、学生時代にはあんなに筋肉の鎧をまとっていたお腹には贅沢な肉しかついていなかった。


こんな代り映えしない生活送っていると、自分はロボットになってしまったのかと思ってしまう。

どんどん私の心は感情という熱を失っていってる気がしてならない。

だから、熱量が有り余ってる朝が嫌いなんだ。


さっきはロボットになってしまったと思うと言ったが、こんなひねくれた考え方をしてしまっている私は、もう既にロボットだ。


これ以上、表面上は笑えても、心からは笑えないだろう。


今日も朝が来た。なんで、こいつはこんなにまぶしいんだ。

私はいつも通りの朝を過ごし、仕事に行った。

今日もちゃんと怒られた。

「お前、もう5年目なのになんで、後輩のあいつよりも出来ないんだよ?」


こう指導されても私は何も感じない。

だって、ロボットだから。

でも、時間は非情というか、どんどん過ぎていき、定時に近づいていく。

そして、遂に開放の時間。いつも通りの挨拶をして、帰路につく。


いつも私は19時からする昼寝の時にYouTubeを見ている。

今日は私と同い年のマラソン系Youtuberが大会に出ている動画を見ていた。

やはり、同い年というのは不思議でどうしても見てしまう。


先に結果から言ってしまうとそのYoutuberは5位フィニッシュだった。

誰よりも頑張っていたかというとそうでもないだろう。

だって、優勝したわけではないから。

だって、そのYoutuberと同じくらい別の出場者も頑張っているのだから。


でも、彼がゴールした瞬間に目元に熱を感じた。

そして、そこから流れ出た水は私の心を優しく温めてくれた気がした。


私はロボットじゃなかった。

ちゃんと、誰かが頑張っている姿を見て、感動することが出来る。

ちゃんと、誰かの頑張りを見て、涙を流せる。

ちゃんと、誰かを応援することが出来る。


私はちゃんと人間だったみたいだ。

それに気づけたのは、あのYoutuberのおかげだろう。

誰かの頑張りで人は変われることを知った夜。

明日の朝とは少しだけ仲良くなれそうな気がした。


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