第191話


「異世界から来ただけじゃなくて、異世界のものを取り寄せられるなんてすごい能力だね〜。ところでみんな同じ種類の銘柄違いみたいだけど。別のお酒はないの?」


「今回はこの種類だけです。またこんど別の種類も持ってきますよ」


「まぁ、あんまり一度に沢山新しいお酒を貰うとほかのドワーフ達に勘づかれるし今日はこれだけで我慢しよう」


今日1日でそのウイスキー詰め合わせ飲み干すつもりですか?

ウイスキーは量を飲むお酒じゃないと思うけど。

まぁ自由に飲んで貰えば良いか。


その後はお酒を飲みながらジュリアナさんの若い頃の話で盛り上がった。


この世界には俺の小さい頃のことを知ってる人はいないし仕返しされる心配もない。


「良いもん。たまにシロナ様がする小さい時のヒロキくんの話話しちゃうし。小学生の頃幼馴染に告白して振られたとか結構知ってるんだよ?」



……そういえば。小さい時に怪我したシロナさんを助けて家で保護していた頃。毎日話しかけてた記憶が……


「わかったこの話は終わりにしよう」


何を話していたかはっきり覚えてないしかなりの黒歴史を掘り返される可能性もある。


「分かればいいんだよ分かれば」


「飲んだことがない酒が私を呼んでいる!!」


そんな声と共に玄関が勢いよく開かれる音がする。


鍵閉めてたよね?

鍵を破壊してこじ開けたってこと?



「あぁ〜やっぱり来たか」


ジュリアナさんのお母さんとジュリアナさんは別にいつものことみたいな感じで酒を呑み続けている。

ドワーフからしたらこれは普通のことなの?


確かに珍しいお酒を呑んでるとどこからともなく嗅ぎつけて現れそうとは思ったけど。

ガチで起きるって割とびっくりなんだけど。



「ジェニーもうちょっと大人しく入ってくることはできないの?後ドアの修理代置いてってね」


「私の知らない酒を黙って呑むのが悪い」



また色々と濃い人が出てきた。

たぶんこの人ドワーフの中でもかなり酒が好きな部類の人だ。



「そう残念。新しいお酒だけじゃなくて作り方の載った本まで貰っちゃったからジェニー貴女にお願いしようかと思ってたのにほかの酒造にお願いにいこうかしら」


「申し訳ございませんでした。ドアは最上級の物に付け替えさせていただきます。なのでどうかそのお話を詳しく」


酒狂いのドワーフ、ジェニーさんはさっきまで知らんとか言ってたのに一瞬で土下座を決める。


「ドアだけ最上級になってもアンバランス過ぎるでしょ?」


「では家ごと最上級のものに建て替えさせていただきます」


えげつねぇって思ったけど。ドアを壊したのがいけないし。

ウイスキーが販売できる品質で製造できるようになれば家1軒分程度すぐに回収できるか。


「で、彼女はどちら様?」


早速建て替える家について話し始めてしまったお母さんとジェニーさんは放置してジュリアナさんに聞いてみる。


「彼女はへパスで1番の酒造を持つドワーフでお母さんの古い友人。ドワーフの中でもかなり酒好きでドワーフからも酒狂いって言われる。お酒モンスター」


酒狂いってガチで言われてるんですね。

それにしてもへパスで1番の酒造って言うけど。


この街って酒造りに適した土地なの?


鉱脈がいっぱいあるしダンジョンからも鉱石が採掘できるからドワーフが多くてお酒の需要が凄いのはわかるけど。

だけどこの土地で美味しいお酒が作れるって訳ではないでしょ?


ドワーフからも酒狂いって呼ばれるドワーフがこの街で酒造やってるんだから美味しいお酒が作れるんだろうけど。



「この街で美味しいお酒が作れるの?」


とはいえ気にはなるので質問してみる。



「ここのダンジョンは壁から鉱石が採掘できるのと合わせてもう1つドワーフ達が集まってくる理由があるんだけど。それが酒水って言う酒造に適した水が採取できるんだ」



まさにドワーフのためのダンジョンだな。


ダンジョンから水を持ってくるのだって錬金術師の作る収納袋が有れば比較的楽に運べちゃうし。


「それにレッサーディメンションワームまで出現するから。低品質の物なら収納袋も沢山作れる」


レッサーディメンションワームと言うのは食べたものを消化する通常の胃袋と食べたものを後で食べれるように収納しておける、異空間に繋がる特殊な胃袋。

2つの胃袋を持つディメンションワーム系の1番弱い種類だ。


ディメンションワーム系の特殊な胃袋を錬金術師が加工すると収納袋になる。


レッサーディメンションワームの胃袋だと低品質の収納袋しか作れないけど。

それでも100kgぐらいは収納できるらしいので充分な気もする。


それにレッサーディメンションワームがダンジョンに出現するんだから数でカバーすれば良い。


普通にダンジョン探索するならいくつも収納袋を持って行くのはじゃまだろうけど。

採集メイン戦闘は最小限で進むなら大して気にならないだろう。


なら安心して酒狂いのジェニーさんにウイスキーをお願いできそうだ。


まぁ作り方の本はジュリアナさんのお母さんに上げたから、最終決定権はジュリアナさんのお母さんが持ってるんだけど…

最初っから任せるつもりっぽいし。

ジェニーさんが作るってことになるだろう。


そういえばジュリアナさんのお母さんの名前聞いてないな。

今のうちにジュリアナさんから教えてもらっておこう。




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読んで頂きありがとうございます。

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