第94話

どうやら、ダンジョンに産み出されてからずっとここで1人ぼっち。

冒険者も俺が来るまで誰1人ここに来なかったし、寂しかったらしい。

何百年も閉ざされた空間に1人っきりって気が狂っても可笑しくない。


大変だったんだな君も。


そうなんだよ。といったニュアンスの返事がかえってくる。

もう、ピュアドラゴンから敵対の意思は感じられない。

但し、俺と一緒に外に出られると言うのはまだ完全に信じてくれている訳では無い。


それだとテイムが成功しない可能性があるんだよな。テイムは1回失敗したら同じ魔物に使うことが出来ない。

なので失敗する可能性がある状態でテイムして万が一失敗した場合、このピュアドラゴンを殺さなきゃいけなくなる。

だから1%だとしても失敗する可能性をなくして起きたい。

そのためにはテイムスキルについて魔物が理解してテイムされることを了承してくれることが必要なんだけど……。


俺の説明自体は理解できるけど、それが実在するのかという点で完全に信用をしてくれない。


産まれてからこの空間から出たこともないし、自分以外の知能を持った生命体と遭遇したのも今日が初めて、産まれた時にダンジョンから与えられた知識以外の知らないんだから仕方ないのかもしれない。


この説得に関しては俺より鳴神の方が良いかもしれないな。精霊だけど東洋龍の姿をしているし。

ピュアドラゴンが親近感を感じで言ってることを信じてくれるかもしれないし。


「ねえピュアドラゴン。精霊の仲間を召喚しても良いかな?龍の姿をしているからピュアドラゴンとも仲良くできると思うんだけど…」


突然召喚したらびっくりさせてしまうと思うので、ピュアドラゴンに召喚してもいいか相談する。


ピュアドラゴンは龍の姿をしていると言うところに興味を持ったらしく、会ってみたいと返事が返ってきた。


「『精霊召喚・鳴神』」


巨大な魔法陣が空中に現れそこから鳴神が姿を現す。

鳴神は常時召喚状態だったから久しぶりに精霊界に帰ったわけだけど、やっぱり精霊界はつまらないと召喚された1言目でそういった。


「えっ?お土産?精霊樹の枝?果物も?こんなに持ってきちゃって大丈夫だったの?問題ない?わかった、それならありがたく受け取るよ」


まさかお土産を受け取るとは思わなかった。

かなり貴重なものだと思うんだけど、精霊界になら腐るほどあるから気にする必要はないらしい。

俺のことを鳴神より更に上位の精霊に俺のことを自慢してたら、お土産に持って帰ったら喜んでくれるよと教えてくれたらしい。


有難いけど鳴神より上位の精霊ってそれこそ王クラスだと思うんだけど……

まぁ、聞かなかったことにしよう。


「それでね。朝話していた龍種の子が目の前の子なんだけど…」


精霊界のお土産を詳しく見てみたかったけど今はピュアドラゴンの方が重要なので全部ストレージに仕舞って、なんで召喚したのか鳴神に説明する。


すると鳴神は任せて!と言ってピュアドラゴンに話しかけに行った。


傍から見ると龍種が2体ガウガウ言ってるだけなんだけどちゃんと会話できているようだ。


ピュアドラゴンのことは鳴神に任せて俺はピュアドラゴンの切断した翼や回収できそうな血を回収して回っていた。

血に関してはいい品質とは言えないけど龍の血であることには変わりない。

使い道は有るだろうし出来るだけ回収しておいた。


「話し合いは終わった?そっか信用してくれるんだね?」


ピュアドラゴンが獣魔にして欲しいと近づいてきた。鳴神が説得してくれたおかげでテイムの話を信用してくれる気になったようだ。


こう言うのは気が変わる前にやってしまったもん勝ちだろうと思い。早速ピュアドラゴンの頭の上に手を置いてテイムスキルを発動させる。


「『テイム』……良し成功した。今日から君の名前はアイギスだ。よろしくなアイギス」


テイムスキルが成功すると転移魔法陣と宝箱が現れる。

しっかり龍種を倒した判定になったと言うことだろう。


隠しギミックのクリア報酬と言っても罠が仕掛けられている可能性もあるのでいつも通り影法師で作り出した分身で宝箱を開ける。


「まじか……」


宝箱の中に入っていたのはエリクサーだった。

しかもストレージにしまうと名前が

エリクサー(劣)になっていた。

MP交換で交換したエリクサーには(劣)なんて表記は無かったけど…

普通に考えて本来のエリクサーに比べて効果が劣っているってことだよね。

詳しくは帰ってからサテツに鑑定して貰えば分かるか。


(劣)とついていようと凄いものなんだろうけど。エリクサーに消費してエリクサー(劣)を手に入れた感じだから率直に喜べない。


まぁ、アイギスも仲間にできた事だし余裕で黒字なんだけど。


転移魔法陣に乗って通常の階層に戻ろうとすると、アイギスが少し不安そうにしているのに気づく。


もしかしたら自分だけ取り残されてしまうのでは?と不安になってしまったようだ。


もし、そうなったら神様にお願いしてでもアイギスのことをダンジョンから連れ出すから安心してと言って安心させた。


アイギス的には信じては無いみたいだけど、安心はしてくれたようだ。

まぁ、ガネーシャ様がテイムしたら良いって紹介してくれたんだし。もし、連れ帰れなかったらマジで苦情を入れてなんとしてでも連れ出すつもりだけど。


安心してくれたんなら、別に信じてもらう必要もないだろう。

アイギスも鳴神みたいに小さくなることができる様なので、小さくなってもらって俺が抱っこした状態で転移魔法陣を起動させた。



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読んでいただきありがとうございます。




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