第52話

「そりゃ、貴族だけとは言わず、冒険者も喉から手が出るほど欲しがる人気の装備品だよ。毒を使う魔物もいるからね」


確かに、下手したら貴族より冒険者の方が毒で攻撃される機会が多そうだ。


「まぁ、ダンジョンのある街を纏めている役得みたいなものだね」


ダンジョン産の装備品なんだから、ダンジョンのある街にいる人が1番手に入れやすいのは当然か。


「だから、屋敷を建てて滞在している貴族が多くて、対応が面倒くさいったらありゃしない。こんな辺境じゃなくて王都にいればいいのに。ヒロキくんも気をつけてね。めんどくさい貴族もいるから」


やっぱりいるんだめんどくさい貴族。


「ご忠告ありがとうございます」


「まぁ、絡まれたら私を頼って欲しい。

カエデとヒロキくんを敵に回す気はないから。それと、やむ無く実力行使に出る時はできるだけ街に被害がでないように暴れて欲しい」


アディルさんは俺の方ではなくカエデさんの方を見てそういった。

過去に貴族にブチ切れて街に被害を出した事があるんだろうな〜。


「肝に銘じておきます」


さすがに街に被害をだしてしまうと、アディルさんも俺たちを庇えなくなっちゃうだろうし。

俺はしっかり注意しますよ。俺は。


「まぁ、カエデが暴れまわった話は有名だし。そんなことにはならないと思うけど。念の為ね。そんなことより、これほどにガラスの加工技術。有名にならないわけがないんだけどな。どこで手に入れたの?」


アディルさんそう言うのをフラグって言うんですよ?少なくとも1回ぐらいは貴族に絡まれそうだな。


ガラスの出どころか。うーんどう答えようか。正直にMP交換について説明するのはまずいよな。

だからと言って嘘をついてもこの人にはバレる気がするんだよな。


「まぁ、俺のスキルで生み出したものですからね。大量に作ることはできないですけどね」


とりあえず詳細はバラさず俺が用意したことはバラす。


「へ〜。じゃあヒロキくんに頼めばこのグラスは手に入ると?」


「手に入りますけど。大量には難しいですし。柄の種類もそんなに種類ないですよ?

特殊な方法で用意してるんで」


「数個用意してくれれば良いから問題ないよ。数が少ない方が価値が上がるから」


それなら俺も沢山用意する必要ないから楽で良いや。


「アレ?誰かドアノッカー叩いてる?」


誰か人が来たみたいだ。


知り合いなんてシエラさんかジュリアナさんしか居ないからどちらかだろう。カエデさんかパニーに知り合いって可能性もあるけど。


「ジュリアナさんでしたか」


「昨日ぶり。自衛用にスクロールがもっと欲しいと思って来ちゃった!」


昨日作ったスクロールには殺傷力が高すぎて自衛に使うのはちょっと危ないし。

使い捨てなのに1枚だけじゃ、対して役に立たないよな。

カエデさんとパニーにあげたもの以外にも魔法が使える様になるコバルトの装備品があるから俺がそれをつけて手伝うか。


「スクロールを作成するのに協力するのは当然良いんですけど。今、アディルさんが来てるんですよね」


領主にスクロールの存在を教えるにはまだ早い。


「アディルがきてるのか。じゃあ今頃は酒呑んで2人で騒いでるんだ?」


どんちゃん騒ぎって感じじゃなけど。

喋ってる間もずっとお酒呑んでるよね。

俺だったら既に泥酔どころか急性アルコール中毒で死んでるんじゃない?ってぐらいの量を2人は呑んでいる。

体のどこに入っているんだろう。


「まぁ、概ねそんな感じですね」


そこまで言ってジュリアナさんがドワーフだったことを思い出した。


俺が追加で何か言う前にジュリアナさんはリビングに走って行った。


状態異常回復ポーションを飲めば3人に付き合うことはできるけど。

無理やり酔いを覚ましてまでお酒を呑む意義を感じられないので、リビングには向かわず2階に上がった。

あとは3人で楽しんで欲しい。


〜次の日〜


「うっわ。酷い」


3人はテーブルに突っ伏して眠っていた。


俺がだしたお酒以外の酒瓶や酒樽がリビングに転がっている。


自分たちの収納袋にお酒ストックしてるんだろうな。


「はぁ、片付けするか…」


酒瓶や酒樽をストレージにしまう。

最初はMPに変換して処分してしまおうと思ったけど。

樽とか瓶って再利用するのかな?って思ったのでストレージにしまうだけにしておいた。


MP交換ってどんなものでもMPに変換してくれるからゴミ箱としても優秀だな。

もちろんガラクタとかゴミは1MPにしかならないけど。

目的は処分なので1MPになるだけありがたい。


「うっわ。酒くさ」


パニーが鼻をつまみながら2階から降りて来た。


「とりあえず今日は片付けだけして、2人でダンジョンに行こう。サテツ達に家を守らせれば安全だろうし」


正直俺も酒臭くてずっと家にいたくない。


「それは良いんだけど。ヒロキもじゅうぶん酒臭いからね?」


俺もアウトだったか。


お風呂で体を洗ってできるだけ匂いを落としてから、パニーと二人でダンジョンに向かう。


7、8階層には俺がSP集めに良さそうって思っている魔物がいるから。今日は沢山SPを集めるぞ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んでいただきありがとうございます。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る