第49話
「領主ってなると貴族様ですか…」
貴族な〜悪い人しかいない訳じゃないってわかってはいるけど。
どうしても権力者に会うならこっちもそれ相応の社会的地位を手に入れてからにしたいんだよね。
馬頭を倒した冒険者に会ってみたいってことだろうけど。
「そんなに難しく考える必要はないですよ。冒険者に理解があるお貴族様ですし。ダメもとでって感じですから」
ダンジョンのある街の領主をしている貴族なんだから、冒険者に理解があるのも当然か。
冒険者がいるからダンジョンを有効活用できるわけだし。
それすら理解できない自分が1番偉いんだから従っておけばいいんだって思考の貴族もいるだろうけど、領主やってる貴族はしっかりした貴族みたいだ。
それなら1回ぐらい会うのはアリかな。
いや、有能だからこそ1回でも会うと色々頼まれ事を断りにくい感じにお願いされそう。
やっぱり断るか。
「そんなに考える必要ないよ。今からダンジョンに向かうんだから領主館に行くわけないだろう」
俺が断る前に2階から降りてきたカエデさんが断ってしまった。
「そうですか。じゃあカエデ様がそっちから会いに来いって言ってたと伝えますね」
えっそんな風に伝えて良いのか?
カエデさんは知り合いなのかな?
だとしても貴族相手にそれはまずいだろう。
それともカエデさんレベルになれば貴族にそういうこと言っても許されるとか?
「そう伝えといて、ついでにいい酒が手に入ったって」
それなりに仲は良さそうかな?カエデさんの言い方的に。
それといい酒が手に入ったって俺にMP交換で用意させるつもりですか?
まぁ、いいけど、気に入って大量に欲しいって言われても無理だよ?めんどくさいし。
「それもお伝えしておきますね。では私はこれで失礼します。ヒロキさんご馳走様でした」
アイスティーとお茶菓子のお礼を言ってシエラさんは帰って行った。
「よし。早くダンジョンに行くよ。アディルは今日来るだろうし。これ以上時間かけるとダンジョンに行けなくなる」
アディルってさっき言ってた領主をしている貴族か?
って言うかあんな伝言で今日来るの?
冒険者に理解ありすぎない?
他の貴族にはよく思われてなさそうだな。
「ダンジョンに行けなくなるのは困るな。パニーが降りて来たら直ぐにダンジョンに行こう」
準備を終えたパニーが降りて来たら直ぐにダンジョンに向かうために家を出る。
今回はサテツたちは家でお留守番してもらっている。
「前回、2階層に転移する転移魔法陣を使ったから今回は二階層から挑戦できるってことだよね」
入口の転移魔法陣からどの階層にも転移することはできるけど。自力で行ったことのある階層にしか転移できないようになっている。
なので、カエデさんやパニーだけならもっと下の階層に転移できるんだけど。
俺がいるから2階層までしか転移できない。
「そう言うこと」
2階層を選択してダンジョンに転移した。
「1階と同じ草原だね」
バイコーンと戦っている冒険者がチラホラ視界に入る。
1階層の時よりバイコーンの数が気持ち多いかな?
「10階層までは草原だし出てくる魔物は特に変わらないけど、魔物の密度がドンドン上がっていくようになってるの」
バイコーンの数が増えたのは気のせいじゃなかったか。
「転移魔法陣はこっちよ」
パニーの案内で2階層を進み始めた。
カエデさんも転移魔法陣の場所を知らないわけじゃないけど、このダンジョンに入るのは久しぶりだし。
潜っていた時も、もっと下の階層に潜っていたから記憶が完璧ではないということで案内はパニーにしてもらっている。
パニーはソロだから基本1桁台の浅い階層に挑戦していたみたいだし。
ほかのダンジョンと違って魔物が強めだから浅い階層でもソロならそれなりに貯金ができるぐらいお金を稼げるらしい。
「このまま行くとバイコーンと戦闘になるけど、どうする」
バイコーンなら戦闘を避ける必要ないだろう。
「そのまま突っ込もう。余裕で勝てるし」
「じゃあ私が戦ってもいい?バイコーンなら慣れてるから1人でも倒せるし」
パニーが戦闘しているところは見たことないし、戦ってもらうか。
ジョブは武闘家って言ってたから。
スキル的には体術、気配察知、速度上昇、視覚強化。
戦闘に使うスキルだとそこら辺を覚えるんだったかな。
パニーは手足だけ金属製で胴体は皮製という感じの装備だ。
殴って蹴ってで戦うってことだよな。
この世界の体術スキルは素手、足で攻撃する時にダメージを上昇させる効果だ。
パニーは俺たちの返事を聞く前にバイコーンに接近する。
接近に気づいたバイコーンの角が光る。
光った角から電撃がパニーに向かって飛んでいくけど、斜め前に進むことで電撃を回避する。
電撃をかわされたバイコーンは頭を下げて角をパニーに向けて走り出す。
杖だけじゃなくて刺突武器にも使える角って地味に便利そうだよね。
バイコーンの刺突攻撃を難なく避けたパニーはバイコーンの首に回し蹴りをお見舞する。
ボキィという骨の折れる音が響き渡る。
バイコーンはそのまま倒れて動かなくなった。
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