第39話

「それにしても何があった?あんなことになってる以上何か起きてるのは確実だろう」


逃げる冒険者の方を観察してみる。

とにかく全力で何かから逃げている様子だ。

その何かを確認できないかと冒険者の後ろを目を凝らして見てみると薙刀を持って二足歩行をする馬が見える。


「馬頭か……」



馬頭はレッサードレイクより強い魔物だ。

いくら強い魔物が出現するダンジョンだって言っても一階層で出てくる魔物じゃない。


「あの時のレッサードレイクと違ってボスモンスターじゃないから、謎結界が無いから実質同じぐらいの脅威度ってところかな」


あの謎結界はほんとに厄介だからな。あれがあるかないかで脅威度が2段階以上変わってくる。


それでも馬頭はレッサードレイクより素早いし力も強い。

油断していいような相手では無い。


なんで戦うこと前提で話が進んでるのか不思議に思うかもしれないけど。

冒険者たちこっちに向かって走って来てるんだよね。


「サテツ達は後ろに下がってて、周りの被害とか考えずに妖術使うから」


魔力回復ポーションを飲んで減った魔力を回復させておく。


「『泥沼』」


馬頭の足元の地面が泥沼に変わり馬頭は足を取られて、逃げている冒険者と馬頭の距離が広くなる。


コレで巻き込む心配もないだろう。


「『氷砲十式』」


10発の氷の玉が馬頭に向かって飛んでいく。

10発のうち2発が馬頭に当たり当たった場所が凍り付く。

残り8発も意味がなかったわけでなく、泥沼を凍らせて馬頭を拘束することに成功する。


「動きが早くても動けなければ問題ないな。あっぶな!」


馬頭は最後の抵抗と言わんばかりに薙刀を俺に向かって投擲してきた。

縮地を使って横に避けたことでなんとか直撃は避けた。


「おっかね〜。風圧だけで頬がちょっと切れたんんだけど」


投擲された薙刀自体は避けたけど。高速で投げられたことによって発生した風圧によって頬に傷を負ってしまう。


「こうなっちゃえば後は首を落とすだけだから、素材について考えて綺麗に倒すことができるけど。馬頭って素材として使える部分あんまり無いはずだからな。『 火槍10式』」


馬頭の素材として使える部分ってたてがみ、尾毛、蹄ぐらいの筈なんだよね。


なのであんまり考えずに胴体に向かって火の槍を飛ばして、胴体を穴だらけにした。


やっぱり謎結界が無いってそれだけで、だいぶ戦闘が楽になるな。

一撃くらったら即死しかけない危ない状況ではあったけど…。


「かなり目立っちゃったことだし絡まれる前に」


今日は目立つつもりは無かったんだけどな。

まぁ、俺が馬頭を倒したって広まれば。

絡まれることがこれ以降も回避出来るかもしれないけど。


馬頭が倒されたってわかって逃げてた冒険者が戻って来てるんだよね。

はぁ、逃げるのは無理かな。

馬頭をストレージに収納して冒険者が到着するまで大人しく待っていることにした。


「男!貴方が馬頭を倒したの!?」


耳的にうさぎの獣人だろう。うさぎの獣人が俺のことを見るとそんな感じで驚きながら話しかけてきた。


「そうだけど?」


特に会話することもないし。適当に返事をしておく。

そうだ。念話でカエデさんにこの事態について連絡しておこう。


(あーあー聞こえますか。カエデさんヒロキです。討伐はしましたが、馬頭が出現しました。コレってイレギュラーですよね?)


(聞こえてるよ。ヒロキ君が対処してくれたんだね。良かった、一階層から逃げてきた冒険者が馬頭がでたって報告して冒険者ギルドは大慌てだったんだよ。私に討伐依頼がでたとこだったんだけど、私の連れが遭遇して討伐したって報告していい?)


(結構、騒ぎになってたんですね。大丈夫ですよ。俺もすぐに帰ります)


(そしたらダンジョンの入口で待ってるよ。一応馬頭の死体を冒険者ギルドに見せて討伐したことを証明しないといけないから)



確かに倒したって口で言われただけじゃ信用しきれないよな。


(わかりました)


そうなると、最初転移してきた場所に戻らないと。

そこに転移魔法陣があるからダンジョンから外にでれるはずだ。


「ちょっと!どこ行くの!」


「どこって帰るんだよ。馬頭を倒したことを報告しなきゃなんないし。あっ 、馬頭の使ってた薙刀拾ってきてくれたんだねありがとうサテツ」


サテツが薙刀を拾ってきてくれたのでお礼を言って受け取る。


と言っても身長3m以上の薙刀なんて使うどころか持ち上げるのも大変そうだ。

それを平然と片手で持ち上げてるソテツ流石だな。

サテツが手に持っている状態のままストレージに収納させてもらった。

他人が持ってても俺が触れていればストレージに収納できるみたいだ。

コレ戦闘にも応用出来そうだな、覚えておこう。


「ならなんでそっちに行くのよ。ここからなら2階層に降りる魔法陣の方が近いわよ?」


あっそうなの?先に進む魔法陣が何処にあるかなんて知らなかったしそう言うこともあるか。


「このダンジョンには今日初めて入ったからそこら辺よくわかってないんだよね。道案内をお願いしても?」


なんか呆れられた顔をされたけど、その魔法陣まで案内してくれることになった。



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読んでいただきありがとうございます。

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