第40話

「それにしても、初めてのダンジョンだからってダンジョンの情報を調べないなんてちょっと油断しすぎじゃない?まぁ、馬頭を倒せるぐらい強いんだから要らない心配かもしれないけど」


うさぎの獣人のパニーちゃんが呆れた顔をしながらそう言った。

確かにその通りなんだよな。冒険者ギルドで地図ぐらい買っておくべきだった。

一階層目だったら普通に売ってるだろうし。


「全くもってその通りです」


ちょっと反省。それにしてもうさ耳がピコピコ動くのが凄い気になる。


「まぁ、情報収集なんて知らなくても、最初からダンジョンについて知ってる人と潜るのも手だけどね」


これは誘われてるのか?

あのうさ耳は反則だと思う。バニースーツを着た状態で誘惑されたら抗えない気がする。


「確かにカエデさんならダンジョンについて知ってるだろうし。明日からはちゃんとカエデさんに同行してもらおう」


正直、カエデさんと一緒にダンジョンに潜ってると。

カエデさんの金魚のフンだとか言って絡まれそうだけど。


今回1人で馬頭を倒したし、大丈夫かも?

そう考えると今回馬頭を倒したのはそう考えると悪いことではなかったかもしれないな。


「なんだ。ちゃんと連れが居るんじゃない…ってカエデって言った!」


「あぁ。付け加えて言えば鬼人族だよ」


「ってことは鬼姫…」


そんな感じで話していると魔法陣が見えてくる。


「とりあえず話はここまでだな」


魔法陣の上にのると、2階層に進むかダンジョンを脱出するかという選択肢が頭に浮かぶ。

当然、脱出を選択する。


「戻って来たね。おかえり」


「ただいまです。カエデさん」


ダンジョンの入口で大剣を構えて待機していたカエデさんと合流した。

他にも武装した冒険者が沢山控えている。

馬頭の討伐隊ってところか。


「冒険者ギルドで見せればいいと思ったけど。ここでも1回見せた方が良さそうだね」


結構空気がピリピリしてるし。この場で馬頭の死体を見せればこのピリピリした空気もなんとかなるだろう。


「そうだね。じゃあみんな1回離れて〜

今、馬頭の死体をここにだすから。じゃあどうぞ」


カエデさんが場所を作ってくれたので、その場所馬頭の死体を取り出す。


右肩に両足が凍って胴体に10箇所風穴が空いている馬頭の死体が目の前に現れて。冒険者たちは驚きの声をあげる。


「これを見て既に馬頭は討伐されたってわかったでしょ?みんな帰るわよ撤収〜」


カエデさんのその号令に従って冒険者は武器をしまってゾロゾロとダンジョンの入口から帰って行った。

みんな同じ方向に帰って行くけど、行先は冒険者ギルドかな?


「それじゃあ私たちも行こうか。移動するから早く収納して」


私たちも行こうかってことはやっぱり冒険者ギルドに向かってるんだろうな。

それにしてもなんでわざわざ冒険者ギルドに?

俺は行かなきゃいけないだろうけど。

ここで待機していた人達は冒険者ギルドに行く必要ないよね?

なんか嫌な予感がしたけど。

行かない訳にはいかないので馬頭の死体を収納して冒険者ギルドに向かった。


移動中にカエデさんに話しかけられたパニーちゃんがアタフタしたりしてたけどそれは割愛。


今回、俺たちが向かった冒険者ギルドは事務をメインでしている方の建物じゃなくて、買取をしている方の建物だ。


こちらの建物は西部劇に出てくるようなバーを大きくしたような建物だ。

冒険者がなんで冒険者ギルドに向かってたのか答えが分かってしまった。

宴会をするためだ。


実際、ギルドの外に空になった樽をテーブルにして飲んで騒いでいる人達で溢れている。

この様子では中でも同じことが起きてるはずだ。


「ねえ、もう帰っていい?」


どんちゃん騒ぎしている場所に入って行きたくない。


「まぁ、それだけ馬頭はやばい魔物だったってことだよ。報告によれば馬頭は階層を移動できる異常種だった。あのままだと街で馬頭が暴れ回って大きな被害が起きてた。だからこそあんなに喜んでるんだよ」


今回はカエデさんがいたんだから馬頭がダンジョンから外に出てきても問題なく倒せたと思うけど。


「私でも倒せたろうけど。ダンジョンに出てきた後に戦ったら私の攻撃で街に大きな被害が出てたろうしね。さすがに手加減できる相手じゃ無いからね馬頭は」


確かに。俺だってダンジョン内だったから大丈夫だけど。あたりの地形めちゃくちゃにしたもんな。


「覚悟を決めて中に入るか…」


覚悟を決めて冒険者ギルドの中に入る。


「おかえりなさいヒロキさん」


中に入るとシエラさんがおかえりなさいと出迎えてくれる。


中に入ると想像の3倍ぐらいどんちゃん騒ぎしている。


酒を飲んでる人が近づいてきたと思ったら抱きしめられたり、チンを揉まれたり。

凄いセクハラを受けた。

なんかセクハラした人は俺が制裁を加える間も無く、麻痺したみたいに痺れて動けなくなってしまったけど。


俺は何もしてないんだけど?って思ってたら

カエデさんがボソッっと「九尾の狐様の神罰…まぁ麻痺しているだけだろうし放置で良いか」

って言っているのが聞こえてきた。

神罰と聞いてちょっと嫌なことを思い出したけど。まぁ俺の事をミスって殺した神様の神罰じゃないしと深く考えないことにした。



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読んでいただきありがとうございます。

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