第38話

「ダンジョンの入口って言うより古代ギリシャの神殿って感じだな」


ダンジョンの入口って洞窟みたいなものをイメージしてたけど。パルテノン神殿みたいなのがポツンと建っている。


パルテノン神殿の中心に魔法陣があってその魔法陣の上にのった人が消える。


あの魔法陣はチュートリアルの森を脱出した時に使った転移魔法陣だ。

今回は脱出じゃなくて侵入するのに使うものだな。


「早速列にならぶか」


もうお昼をすぎてるし今から入る人は少ないかなって思ってたけど。結構並んでるな。


行ったことがある階層まで転移できるとか?

まぁ、浅い階層なら今から入っても帰って来れるってことか。


並んでいる間、やることも無く暇なのでハンゾウたちコボルトをモフって時間を潰した。


「ようやく俺の番か」


転移魔法陣の上に乗ると頭の中にどの階層に転移しますか?と浮かんでくる。

まだ、一階層目しか選択することは出来ないけど。


一階層と念じてみると、目の前が真っ白になる。


視界が回復すると、目の前には草原が広がっている。


「草原か。ダンジョンの情報を調べずに来ちゃったな、そう言えば」


他のダンジョンに比べて強い魔物が出てくる事とその代わりトラップは一切存在しないことしか知らない。


どんな魔物が出てくるのか注意をしながら草原をまっすぐ進む。

強い魔物が出てくるって言っても一階層にしてはってことだろうし。

今回はそこまで警戒する必要は無いだろう。


それよりもボチボチ冒険者がいる。ダンジョンなんだし当然なんだろうけど。

冒険者たちは魔物と戦闘したり、討伐した魔物を解体したり、たまに有る薬草の採集をしたりと冒険者らしい光景が広がる。


「それにしてもバイコーンか。一階層目にしては強い魔物だな」


他の冒険者が戦っている魔物を確認すると黒い体に紫色のたてがみと尻尾。そして額に2本の角が生えた馬の魔物、バイコーンだと言うことがわかった。


チュートリアルの森とは違うんだから出てくる魔物がバイコーン1種と言うことはないだろうけど。今のところバイコーン以外と戦っている冒険者は確認出来なかったからそれを確認することは出来ない。


「あれはライオン?ってあの色もしかしなくても雲獅子か!」


目の前に現れた真っ白な雄ライオンが現れ

る。

ハーレムクエストの知識通なら雲獅子って言う。

霧を発生させて、その霧に紛れて攻撃してくる厄介なライオンだ。


オマケに雲だから物理攻撃がほぼ効かない。

バイコーンより厄介な魔物だ。

無理に戦闘する必要ないかなと発見されないようにゆっくり離れようとしたけど。

瞬間辺りが濃い霧で覆われる。


まだ距離があるって思ってたんだけど、気づかれてたか。まぁ、人間が気づける距離だ。

人間より五感が優れているだろうなって魔物なんだから、気づいて当然か。


「こうなったら戦うしかないか。今は霧に囲まれてるおかげで外から中の状況を確認することも出来ない。サテツ俺には雲獅子の居場所を感知して教えてくれ。物理攻撃はほぼ意味ないから、俺以外は回避に集中」


「ヒロキ様2時の方角です」


指示を出すとすぐにサテツが雲獅子の場所を看破する。

雲獅子に移動される前に攻撃を加える。


「『火槍五式』」


サテツが指示した方角に向けて火の槍を5本飛ばす。


「やっぱり当たらないよな『雷撃』」


雲獅子は自分が作り出した霧と同化して攻撃を回避することが出来る。

当然ただ攻撃しただけではそうやって回避されてしまうことはわかっていた。

なので一度攻撃して、こっちが攻撃を当てたと油断していると判断して霧から飛び出して飛びかかって来た雲獅子にカウンターで速度の早い雷系の妖術で攻撃する。


攻撃する瞬間には霧と同化する能力を使うことは出来ないので雲獅子は雷撃をもろに食らう。

体の所々が焦げた雲獅子がフラフラ立ち上がる。

霧の中に逃げようとしているようだ。


「逃がすか『 影縫い』」


雲獅子が霧の中に姿を隠される前に妖術で動きを拘束する。


「『炎狐・爪斬撃』」


雲獅子の首を切り落とす。代償として木刀が灰になってしまう。


「斬撃シリーズを使っても壊れない武器が欲しいな」


斬撃系の妖術は近距離でも使えるし火力もあるしで使い勝手は良いんだけど。

今使っている武器だと1回斬撃系を使うだけでダメになってしまう。

だからこそ、変わらず木刀をそのままメイン武器として使ってるんだけどね。

鉄製の武器でも壊れちゃうから武器のグレードをあげる意味が無いから。


「武器も自分の1部と思って使ってみては?」


なるほど。確かに妖術を使った場合術者である俺がダメージを受けることはないし。

武器を体の一部と考えれば武器も壊れないかも?


そんな簡単に行くもんかな?

後、可能性が有りそうなのは魔剣とか?

魔力を消費して火を纏う魔剣とかあるはずだし、それなら妖術で火を纏わせても問題なかったりする?

妖術で作られた火って言うのが不安要素だけど。

逆に言えば魔法で作っても妖術で作っても同じ炎だしなんとかなるかも?


同じなのに別物扱いしてるのは俺自身なんだけど。

やっぱり九尾の狐様に相談するのが1番早くて確実なんだろうな。


そんなことを考えている間に雲獅子が生み出していた霧がはれて辺りを見渡せるようになる。


冒険者が何かから逃げるように同じ方向に逃げる姿が目に入ってきた。



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読んでいただきありがとうございます。

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