第34話


「おー凄い高い壁だ」


鬼人族の里から走ってアストに向かったおかげで2日目の昼頃に到着することが出来た。

今はアストに入場する為の列に並んでいるところだ。

何となくそうなんじゃないかな?って思ってたけど。

カエデさんはメッチャ有名人みたいだ。

さっきから並んでる人がソワソワしている。


「やっぱりカエデさん有名人なんですね」


カエデさん程の強者なんてほとんどいないだろうからな。


「まぁ、私もそこそこ有名だけど。列の連中がソワソワしているのはヒロキ君がいるからでしょ」


まぁ列に並んでる唯一の男だからな。

視線が集まっても仕方ないか。


「そういえば、中に入るのにお金かかりますよね?」


「そうだね。アストに住民登録しているならタダだけど。それ以外だと1回500マネー必要だね」


よくあるラノベの冒険者とか商人はタダで入れるとかそんなことは無いみたいだ。

それに住民登録をしていればタダとは言っても年間10万マネーを税金として納める必要があるみたいだ。


500マネーって日本円換算で500円だし。

それぐらいなら普通に払えば良いか。

問題は俺が500マネーすら持っていないことだけど。


「カエデさんコレ1万マネーで買取ません?」


コバルト製の指輪をストレージから取り出す。

付与は魔力量増加1.3倍だ。

俺は2倍の物をつけてるから使ってないけどカエデさんからしたら絶対に欲しい物のはずだ。


カエデさんは『 再生の炎』と『 鬼神変化』というふたつの魔力消費が大きいけど鬼人という種族上、魔力量はほかの種族より低い。

だから魔力量が増加する装備なんて喉から手が出る程欲しい装備のはずだ。


「それってヒロキ君がつけてる指輪?なんでそんなに持ってるの?」


もしかしたらイリスさんが知らないだけでカエデさんならコバルトについて知っているかなって思って見せてみたけどやっぱり知らないのか。


「これつけるだけで魔力が1.3倍に出来る指輪」


カエデさんにだけ聞こえるように小声で伝える。


「なっ!そんな装備聞いたこともないですよ!」


カエデさんは小声で騒ぐと言う器用なことをしている。


ダンジョンで手に入る装備か…。

ハーレムクエスト準拠なら、コバルト装備より強い効果がある装備もあったはずだけど。

そう言われて見れば。

魔力を増やすって効果の装備はコバルト以外には無かった気がする。


いや、死霊王の王冠があったな。

装備したらアンデットの最上位種リッチになってしまうけど。魔力量が何倍にも膨れ上がる。

ゲームだとアンデットプレイを楽しんでいる人もいたけど、現実ではアンデットにはなりたく無いよな。


「とにかく指輪をつけて見てよ。それだけで効果を実感出来るはずだから」



俺もつけただけで魔力が増えたって分かったし。

手渡された指輪を恐る恐る指にはめる。

ちゃっかり左手の薬指にはめているけど、この世界では結婚指輪をはめるとか無いかも知れないからひとまず様子見しよう。


「ほ、ほんとに魔力量が増えてる……」


「旅について来てくれるわけだしタダで上げても良いんだけど。それだとあの街に入る時に払うお金がないからね」


「いやいやいや、この指輪の価値は1国すら手に入れることが出来るレベルだよ!」


引き続き小声で騒いでいる。


「因みに俺がつけてる指輪は全部付与がされてるんですけど。そのうち1つは魔力量2倍です。さらに言うとコレを作ったのはサテツです。勿論付与も含めて」


ゆっくりとコボルトスミスのサテツの顔を見る。

因みに他に人がいる場所ではソテツは喋らないようにお願いしているので、カエデさんに返事はしない。


「そんなことより、そろそろ俺たちの順番ですよ。早く1万マネー下さい」


コバルトの指輪の話をしていたら後数人で中に入れるという所まで来ていた。


「正直それどころじゃないんですけど…。そのぐらいいくらでもだしますよ。この指輪をくれるなら。後で詳しく教えてくださいね?」


不死鳥様含めコバルトについて何も知らないのか俺も聞いて見たいしな。

神獣様ならコバルトについて知ってるかもしれないし。


不死鳥様も人の目があるところではただの雀のフリをしているからここでは話を聞けない。


コバルト装備を用意できるのがサテツだけじゃないってだけで狙われる事も少しは減るだろうし。

コバルト装備について言いふらさなきゃ良いだけなんだろうけど、どんな些細なことで周りにバレるかわかんないからね。


街の中に入る手続きはカエデさんが有名人だからすんなり入れてしまった。


こうなると俺も冒険者になってランクを上げて有名人になっておいた方が色々便利かもな。


冒険者にならなくても、ダンジョンに潜る事もできるしお金を手に入れる事もできるから別に冒険者になる必要ないかな?って思ってたけど。

カエデさんは最高ランクの冒険者ってことでここまで有名人らしいし。

俺も最高ランクの冒険者を目指すのもアリかなって思えてきた。


ただ、この世界の常識的に冒険者ギルドに男が行ったらすげぇ面倒事が起きそうだな。


カエデさんが抑止力になってくれると嬉しいんだけど……どうかなぁ



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読んでいただきありがとうございます

m(_ _)m

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