第32話

「負けは認める。良ければ今、どんなスキルを使ったのか教えてくれない?」


負けを認めてくれたらしい。

良かった良かった。再生能力にものを言わせて振り向いて攻撃されたらこっちには為す術なかったから、本当助かった。


「まぁ、凄いリアルな幻影を作り出す術を使ったんですよ」


「『 影法師』だな九尾の狐の得意技の1つだな。まぁ、九尾の狐は幻影を何体も生み出していたが」


影法師は自分の幻影を囮として生み出す妖術。

本体の透明化効果までおまけでついてくる。

今回は爆煙でカエデから俺が見えない間に影法師を発動したというのが今回のトリックだ。


因みに幻影は本体が使うスキルを利用することが出来るが8割の性能しか発揮できない。

後は透明化中に攻撃してしまうと透明化は消えてしまう。


九尾の狐様の影法師は複数体自分の幻影を作り出して、某忍者漫画の影分身見たいな使い方をしているらしい。

俺が使う影法師とは最早別物だな。


「九尾の狐様のスキルの効果ってことか、流石神獣様のスキルだな。すっかり騙されてしまった」


「再生の炎も相当厄介ですけどね。死なないって控えめに言ってもずるいですよね」


「所詮死なないだけだ。それこそ条件さえ整えば死者の復活すら可能な妖術使いに狡いなど言われたくない」


不死鳥様にガチトーンでそう言われてしまった。

死者の復活が出来る妖術なんて俺は知らないんだけど?

九尾の狐様専用の妖術なんじゃないかな?


「そんなことより、カエデさんかなり魔力を消費したでしょう?中級の物なので全回復は出来ないかもしれないですけど 、良かったら使ってください」


中級の魔力回復ポーションを渡す。


「それと、元々はこの里に1晩泊まるために来たんだけど。出来ればイリスさんたちと違う場所が良いですけど…」


イリスさん達と仲がいいわけじゃないしね。


現実問題、この里に入る時に俺の事を生贄にしたわけだし。

相手がカエデさんだったから良かったけど。

プルームの周辺に用事が無かったら、絶対一緒に行動なんかしないのに。


まさか九尾の狐様の試練を受けるための祠がプルームを囲む山にあるなんて……

さっきチラッとマップを見たらサテツ達の時みたいにピンが1本立っていてピンをタッチしたら九尾の祠って出て来ちゃったからな。

その後に九尾の狐様が念話で場所の詳細を教えてくれた結果。プルームを囲む山が目的地だと判明したわけだ。


イリスさんは皇女に俺の事を紹介することもできるって言っていた。

イリスさんに完全に敵対されてしまうと、プルームに入国すら出来ない可能性もある。

用が有るのはプルームでは無くて、プルームを囲む山だから、最悪プルームに入国出来なくても良いんだけどね。

地形的に攻められにくい国だろうし、拠点にするには良さそうってのも有るんだよな。


だから、仲間では無いけど。一時的な協力関係って感じでこのままプルームに向かうつもり。

あちら側も俺が龍種か亜龍種どちらかをテイム出来れば、大幅な時間短縮になるだろうから。完全に敵対してくることは無いだろう。

多分…。


「大して大きくない里なんだから宿なんてないよ。だから中央の広場で野宿するか、里の者の家に泊まらせて貰うかだね。と言っても中央の広場で野宿はオススメしない」


「どうしてです?」


「中央の広場で男が寝てたら、里中の女に夜這いを仕掛けられるよ?まぁ、家に泊まらせて貰うのも似たようなものだけど。

私の家ならそんな心配はする必要なくなるよ。里の住人で私が不死鳥様の加護を貰っていることを知らない者は居ないから。家に突撃してくるような奴はいない。勿論、私も襲いかかるつもりは無いし。九尾の狐様のお気に入りに手をだすつもりは無いから」


戦闘狂なところは有るけど話はしっかり聞いてくれるし。悪い人じゃないっぽいよな。

少なくともイリスさんよりは好印象を持っている。

不死鳥様もいるし、嘘ついたりはしないだろう。


「したらお願いしても良いですか?」


「じゃあ早速家に行こう。それにしてもなんでプルームに行くの?ヒロキ君が嫌じゃないなら私の家に居候したって良いんだよ?」


普通そう考えるよね。俺だって九尾の狐様の祠がプルームの近くに無かったら多分行くことは無かったし。


「九尾の狐の祠がプルームの近くにあったはずだからな。プルームと言うよりそっちに用事があるんだろう」


やっぱり神獣同士 、お互いの祠の場所も何となく知っているんだな。


「なるほどね〜。じゃあ、九尾の狐様の祠に行ったあとはどうするの?」


「特に考えて無いから、その時の気分でって感じかな」


SPを貯めてスキルを取得 、強化しながらこの世界の色んなところの足を運ぶのも楽しそうだ。


「ここが私の家。まぁ、全員で入るとちょっと狭くなっちゃうけど」


カエデさんの家は茅葺き屋根の日本家屋そっくりな家だった。


「お礼も兼ねて晩御飯を作らせてください」


囲炉裏を見たら無性にほうとうを食べたくなってしまった。

ほうとうはこの世界に無いだろうし、自分で作るしかない。


MP交換で必要な材料を交換してほうとう作りを開始した。



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読んでいただきありがとうございます。








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