第21話 本当の王子様
翌日、葵と司は相良邸を訪れていた。
和泉の見舞いに来ていたのだ。
「和泉さん。お加減はどうですか?」
用意してきた花と手土産を渡しながら葵が聞いた。
「はい。もう、大分良いです。」
「今回は申し訳ありませんでした。和泉さんを危険な目にあわせてしまって・・。」
「謝らないで下さい。俺が桜葉さんの指示を無視して一人で飛び込んだんです。結局、俺は何も出来ませんでした。」
「そんなことないわ。雪乃さんの後を追って私達に知らせてくれた。雪乃さんの為に危険を承知で飛び込んでいった。和泉さんのお陰で雪乃さんは無事だったのよ?」
「世良さん・・。そうでしょうか?あの時、桜葉さん達が来なければどうなっていたか・・。」
「それでも、雪乃さんの為に立ち向かっていった事には変わりないわ。その気持ちはきっと彼女にも届いてる。」
「そうだと良いんですが・・。」
「聡明な雪乃さんの事だものちゃんと解ってると思うわよ?」
「・・・はい。」
和泉は笑顔で頷いた。
葵と司が相良邸を後にしようとした時、雪乃に呼び止められた。
「司さんっ!葵さんっ!」
息を切らしながら走ってきた。
「雪乃さん。」
「お父様から全て聞きました。深雪さんのした事も、司さんと葵さんが私を守る為にしてくれた事も!」
「そう・・ですか。結局は雪乃さんを騙す形になってしまって本当にごめんなさい。それに、危険な目に合わせてしまった。本当に申し訳ありません。」
葵が雪乃に頭を下げた。
「そんなっ!葵さん、謝らないで下さい。貴女方が助けてくれたのは事実ですから。本当にありがとうございました。」
「・・・。こちらこそありがとう雪乃さん。それじゃ、私達はこれで。」
雪乃は、葵と司の背中を見送った。
「っ・・。司さんっ!!」
雪乃は司の元に走り寄った。
「あのっ!私、司さんに伝えたい事があるんです!」
雪乃は司を見上げて言った。
「じゃあ、私は先に車に行ってるわね?」
「ああ。」
司は雪乃に向き直る。
「あのっ!私・・・。司さんの事が好きでしたっ!!」
雪乃の告白に目を瞬かせたが、
「ふふっ。ありがとう、雪乃さん。でも、過去形・・なんだね?」
「・・はい。司さんは私に恋の嬉しさも苦しさも教えてくれました。そして、私の本当の気持ちも気付かせてくれました。本当にありがとうございました。」
「本当の気持ち?」
「はい。司さんは私の理想の王子様です。でも・・私の本当の王子様は別の人でした。それに気付かせてくれたんですっ!」
雪乃は晴れやかな笑顔で言った。
「それは、和泉さんの事?」
「っ・・・。はい。和泉の事です!」
「そっか。和泉さんにもう気持ちは伝えたの?」
「それは・・まだです。」
頬を赤くして答えた。
「でも、ゆっくりで良いんです。私もまだ自分の本当の気持ちに気が付いたばかりなので。」
司は目を細めて雪乃を見つめた。
「雪乃さんの幸せを祈ってるよ。」
「ありがとうございます。」
「・・・。じゃあ、元気で!」
「はい。司さんも。」
雪乃は今度こそ司を見送った。
司は葵の待つ車に乗り込んだ。
「待った?」
「大丈夫だよ。」
「じゃ、帰ろうか?」
「・・・。うん。そうだね。」
二人は相良邸を後にした。
雪乃と和泉の幸せを願って。
社長令嬢の初恋 〜貴方は私の王子様〜 朔良 @sakura1559
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