第19話 雪乃と和泉
「わかった。和泉さんは大丈夫なのね?」
電話を切った葵は目の前の相良邸を見上げ、屋敷の中に入っていった。
使用人に部屋に通されると、少し遅れて柊一朗と清香が部屋に入ってきた。
「貴女が、世良さんですね?お会い出来て良かった。」
人の良さそうな笑顔を浮かべて柊一朗が言った。
「こんな時間に申し訳ありません。ご報告しなくてはならない事がありましてお伺いしました。」
「報告?」
「はい。雪乃さんのストーカーの件は狂言でした。」
「狂言?それで、犯人は?」
「真中製薬のお嬢さんでした。」
「えっ?深雪さんがっ?」
清香は驚きを隠せなかった。
「はい。真中深雪は取り巻きの男達にあの手紙を雪乃さんの鞄の中に入れるよう指示していたそうです。」
「どうして、そんな事を?」
「・・・。真中深雪の家庭環境は良くありませんでした。そんな中、雪乃さんの仲睦まじい環境に敵意を向けたようです。」
「まぁ・・。」
「後、お二人に謝らなければならない事があります。雪乃さんと和泉さんに怖い思いをさせてしまいました。和泉さんに至っては怪我までさせてしまって・・。全て私の責任です。申し訳ありませんでした。」
葵は、二人に頭を下げた。
「・・・。頭を上げてください。和泉は無事なんですよね?」
「はい。命に別状はありませんが打撲が酷くて暫く入院が必要な状態です。」
「・・・。この件に関してはあなた方にお任せしました。和泉にも暇を出しましょう。」
「ありがとう・・ございます。それと、これはご相談なのですが真中深雪の処遇はどう致しますか?雪乃さんが被害届を出さなければ彼女が罰せられる事はありません。」
「それについては、雪乃と相談させてください。それでも、大丈夫ですか?後日ご連絡致します。」
「わかりました。それで構いません。」
その後、柊一朗夫妻と雑談をして葵は相良邸を後にした。
********
数日後。
和泉も無事に退院が出来た。
柊一朗の計らいもあり、もう少し休みを貰っていた。
和泉はすることもなく、庭に出ていた。
「和泉っ!もう、外に出て大丈夫なの?」
雪乃が飛んできた。
「雪乃お嬢様。もう、大丈夫です。ご心配お掛けして申し訳ありません。」
「何を言ってるの?和泉は私を守る為に怪我したのよ?心配するのは当たり前じゃない?」
「お嬢様を守るのは当たり前です。俺にとってお嬢様は大切な人なんですからっ!」
和泉の言葉に雪乃は頬を赤くした。
「それって・・?」
「あっ、いや。深い意味は・・。」
和泉も慌てて訂正したが、雪乃が手を握ってきた。
「あの時の和泉かっこよかった。でも、あんな無理はもうしないでね?心臓に悪いわ。」
「雪乃お嬢様の為なら何でもします。でも・・。」
和泉は雪乃の頬に手を伸ばした。
「もう、無茶はしません。約束します。」
「うん・・。」
雪乃は飛びっきりの笑顔を和泉に向けた。
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