第14話 越えられない一線

雪乃に見送られて司はパーティー会場を後にした。


(今日のパーティーに俺を行かせた理由って・・?)


行き交う人々を縫うように歩いた。

足は自然と葵の元に向かっていた。





「ただいま。」


リビングのドアを開ける。


「・・・。おかえり。どうだった?パーティーは。」


「まぁ、あんなもんだろ?・・あのパーティーに父も来てた。」


「・・・そう?話は出来た?」


「ああ。久々に会話らしい会話をしたよ。」


「良かったね?」


葵は優しく微笑んだ。


「・・・。そういえば、葵も誘われてたそうじゃないか?」


「私は・・ああいう場所は場違いだよ・・。」


目を伏せて言う葵の頬に手を伸ばし熱っぽい眼差しを向けた。


「そんな事ない。どうしてそんな風に言うんだ?」


「・・・・。私はっ!」


「私は?」


「っ・・。司酔ってるでしょ?水でも飲む?」


キッチンに行こうとした葵を後ろから抱き締めた。

司のいつもよりちょっと高い体温が葵を包んだ。


「・・・。」


司は葵の首筋に口づけた。


「んっ・・。」


葵の身体がピクリと反応する。


「っ・・・。」


司は葵を抱き抱えると葵の部屋のベッドに寝かせた。


「つか・・さ?」


司はネクタイを緩めると葵の頬に手を伸ばす。


「俺は葵が好きだ。葵の気持ちを聞かせて欲しい。俺の事・・きらい・・か?」


真剣な目で見つめられる。


「・・・。」


咄嗟に目を逸らそうとしたが司の手はそれを許さなかった。

いつになく強引な司の態度に戸惑った。

視線が絡み合う。


「・・すき・・だよ。」


消えてしまいそうなな声だった。

それでも葵の気持ちが聞けて嬉しかった。


「んっ・・。」


たまらず、葵に口づけた。

何度も何度も。


「はっ・・つかさ・・。」


葵が司のシャツをギュと握った。


「あおい。」


葵の唇を親指でなぞる。

酔っているせいか、いつも以上に色気がある。

少し茶色い瞳は葵を捕らえて離さない。


「つかさっ・・。」


葵は小さく呟く。

葵の深い瑠璃色の瞳に惹き込まれる。

もう一度深い口づけを交わす。


「んっ・・はぁ・・・。」


段々と葵の瞳が潤んでくる。

司は葵の首筋に優しく口づける。


「はっ・・んっ・・。」


「葵。好きだ。」


耳元で艶っぽく囁くと、葵の身体がビクッとする。

シャツのボタンをソッと外すと、胸元に降りていく。

司は赤い印を胸元に付ける。


「っ~~~。だめっ・・。」


司の胸を押し返そうとするが手首を司に掴まれ押さえつけられる。


「駄目だ。止められない。」


葵の顔を覗き込み、口づける。

舌を絡ませ何度も。

葵の目尻に涙が浮かぶ。

それが、何の涙なのか司には解らなかった。


「っ・・。ごめん。いや・・だったか?」


「・・・。そうじゃないけど・・。」


「けど?」


「これ以上は・・だめ・だよ。」


「・・・。ごめん。ちょっと強引だったな?でも、こうしててもいいか?」


司は優しく抱きしめた。

逞しい胸に顔を埋める。


「うん。」


司の体温が心地よくて安心する。

目を閉じてトクトクと規則正しい鼓動を感じていると


「そういえば、藤堂さんに会ったよ。」


「藤堂さんに?・・何か言ってた?」


「葵の事心配してた・・。」


「そっか・・。ふふっ、藤堂さんは心配性だな。」


「でも、葵の事よく理解してるな。」


「・・そうだね。」


「俺も葵の事もっともっと知りたいし、支えになりたい。だから、話せるようになったらでいい葵の事聞かせて欲しい。もう、焦らないから。」


「・・・うん。」


もう一度視線が絡み合う、触れるだけの口づけを交わすとまた優しく抱きしめた。

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