第2話 恋患い
「今日の見合いに行かなかったそうだな?」
家に帰って来た雪乃は両親に呼び出されていた。
「はぁ・・・・・。」
「どうして逃げたりしたんだ?お相手の家柄も申し分ないんだぞ?」
「はぁ・・・。」
「雪乃?聞いてるのか?」
「・・・。」
「雪乃さん?」
母親の清香が心配そうに雪乃に近付く。
雪乃は心ここに有らずと言うような感じでぼぉっとしていた。
「雪乃?」
「ああ、お父様。何か言いました?」
「・・・。とにかく、今日のお相手には私の方から良く言っておく。いいね?」
「お父様。私、お見合いはしません。では。」
そう言い残すとさっさと部屋を出ていってしまう。
「清香!雪乃は一体どうしたんだ?」
「ふふっ。雪乃の好きにさせてあげましょうよ?」
「何を言ってるんだ?ストーカーから守る為に見合いをさせたんだ。結婚してしまえばストーカーだって諦めるだろう。私だってまだ雪乃を嫁には出したくないさ。」
「柊一朗さんやっぱり無理なさってたんですね?雪乃もまだ21ですからね。恋愛の1つや2つしたいんじゃないかしら?」
「恋愛なんて!私の認めた人間じゃないと許さんぞ?」
「ふふっ。」
雪乃は自分の部屋に帰って来ても上の空だった。
(あの方のお名前聞くのを忘れてしまったわ。またあのホテルに行けば会えるかしら?)
「雪乃?入るわよ?」
ドアをノックしながら清香が入ってきた。
「お母様・・・。」
「雪乃?どうしたの?何か悩み事?」
「・・・。私、王子様に会ったの。」
「王子様?」
「はい。おとぎ話から出てきた様な素敵な男性で。その方の事を考えると何故かとても胸が苦しくなるの。私、どうしてしまったのかしら?」
「雪乃はその方に恋をしたのね?」
「恋?私があの方に?」
清香は優しい笑顔を浮かべながら雪乃の手を取った。
「そうよ。きっとその方に一目惚れしたのね?」
「一目惚れ?・・・でも、お母様。私その方の名前すら解らないの・・。」
「あら、そうなの?でも、その人が運命の人ならまたきっと会えるわ。」
「運命の人・・・。お母様の運命の人はお父様だったの?」
「私?そうねぇ、柊一朗さんとは幼い頃からずっと一緒で。いずれ、結婚すると思っていたわ。運命の人になるのかしらねぇ?」
雪乃は母の言葉を聞きながら、両親が普段から仲睦まじいのを思い出していた。
(あの方が、私の運命の人なのかしら・・・。)
********
司は高倉和泉と別れた後マンションに帰って来た。
「ただいま。」
「お帰り。」
葵が笑顔で迎えてくれる。
こんなやり取りが無性に嬉しい。
葵から司の気持ちに対して答えがあったわけではない。
でも、司にとって葵と一緒に居れる事が何よりも嬉しかった。
ソファーに座ると葵が訪ねてきた。
「どうだった?依頼は。」
「ああ。これ。」
高倉和泉から預かったストーカーからの手紙を手渡す。
葵は手紙に目を通す。
「典型的なストーカーっぽいね。・・・。」
「それなんだけど、鞄の中に入れられてるみたいだ。」
「鞄の中に?・・・雪乃さんは大学生なんだよね?通学はどうしてるの?」
「音羽大学の三回生だ。通学は普通に公共交通機関を使ってるらしい。」
「そう・・・。雪乃さんはストーカーの事知らないのよね?」
「ああ。たまたま、使用人の高倉和泉さんが雪乃さんのバッグをひっくり返してしまって手紙を見付けたらしい。それから、こっそりと鞄を調べてるみたいだ。だから本人は知らない。」
「成程ね。まぁ、こんな手紙見ないに越したことはないけどね・・。」
葵は手紙を一瞥する。
「確かに、こんな手紙見たら普通に学生生活なんか送れないよ。」
「ふぅーん・・・。ねぇ、司って頭良いよね?」
「・・・。頭が良いかわからないけど?」
「でも、大卒でしょ?」
「まぁ、一応。」
「どこの大学?」
「帝都大学だけど?」
「学部は?」
「法学部。」
「それがどうかした?」
「うん・・。もう一回大学生やってみる気ない?」
「はっ??」
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