読者諸兄姉は、『碧(あお)』と呼ばれるウヰスキーを御存知だろうか。
アイルランド・スコットランド・カナダ・アメリカ・日本のウヰスキーをブレンドしたウヰスキーで、複雑で多彩な味わいが特徴である。
本作はこの『碧(あお)』を思わせる逸品だ。
あらすじは小説概要を見て貰うとして、まず特筆すべきは設定である。
作中の1999年に起こった消却事変で世界がどのように変化したのかが詳細に描かれている。
ポストアポカリプスを舞台にした作品を多く呑んで(読んで)来られた諸兄姉も、きっと満足出来る筈だ。
ストーリー展開に合わせて開示されて行く構成も上手く、読者が置いてけぼりにならない様に工夫されている。
描写は濃い目ながら非常に流暢で、特に気にせず呑み干せる筈だ。
切ないシーンは涙が流れる程であるし、バトルシーンの派手さと緻密さが同居した描写には、思わず『お見事!』と唸ってしまう。
重要な場面での決め台詞も格好良く、中二病をこじらせた諸兄姉も安心だ。
本作は学園が舞台となるシーンも多い。
青春ラブコメ要素も大いにあるので、『男の浪漫盛り合わせ(闇鍋仕様)』とのタグにビビる必要はないぞ。
いや、むしろ浸って欲しいくらいだ。
勿論ライトな要素だけではない。
政治構造や裏社会に深く切り込んだ背景は、作者の芳醇な知識がふんだんに注ぎ込まれているのが解るだろう。
このダークさが、本作の味わいを一段と引き立てている事は言うまでもない。
さて、長々と本作を紹介してきたが、とにかく最初の二話を呑んで見る事をお勧めする。
先人もこう言っていたではないか、『案ずるより読むがやすし』と……。
あー、酒に例えてレビュー投稿すんのもしんどくなって来たなー。
ここは一つ助っ人にでも頼んでみるか……。
『とうおるるるるるるるる、とうおるるるるるるるる……(どっかに電話している)』
『ガチャ……俺様の名はモブ モブ夫、通称コング、メカの天才だ。
大統領でもぶん殴ってみせらぁ!
でも、レビュー投稿だけは勘弁な』
なんといっても戦闘描写が圧倒的に凄い!
血湧き肉躍るとは正にこのことです。息吐かせぬ脅威的な筆力に、無用な雑念などは綺麗サッパリ消え去ります。
テロリスト集団JUDASに対抗しつつ、武神・長嶋武雄が理事長兼校長を務める鐘渡教練校の生徒たち(これまた個性的で面白い!)、ある目的のためにJUDASを追う飛崎たち、そしてアズライト(猫! 可愛い!)とアズレイン(犬! 可愛い!)が、過去に囚われながらも未来に向かって成長していこうとする物語です。
戦闘描写以外も魅せてくるのが、この作品の隙のないところ。
会話の台詞回しも巧く、少々難解な凝った世界設定も分かりやすく嚙み砕いてくれる親切設計。大丈夫です。完璧に理解できなくても(ごめんなさい!)、魅力的なキャラクターたちがぐいぐいと引っ張っていってくれます。
男の浪漫と美学が詰まったサイバーパンクなSF(ちょっとファンタジー)!
創り込まれた世界観と異能バトルに興奮すること間違いなしです!