サークル勧誘編—狐との逢瀬1
「そういえばおにゃーらの名前訊いてなかったにゃ」
あれから、結局5人で行動することになった。主に……というか、ネオルとスティンのせいで。
まあ別にルノスとしては心から嫌だったわけではない。ただ、悪い意味で注目の的となるのを嫌っただけだ。
「オレはルノスでもうひとりの小さい方がルームメイトのスティン。そして……」
「
「てことはおにゃーが噂になってるペクシー家の才女かにゃ?」
どうやら狐色の少女が興味を持ったのはローズリアの方のようだった。まあそれも無理からぬこと。特に魔法貴族のなかでもとびっきりの有名人がローズリア・ペクシーという少女なのだ。
当の本人は今まで何度も繰り返してきたやり取りに苦笑い気味だが気を悪くした風もなく答えた。
「一応断って置きますが
「なら尚更すごいにゃ。おにゃーはもっと自信を持つにゃ」
————なんで上から目線?
そう思ったのはルノスだけではないはず。あのローズリアですら困ったように笑っている。
そこで咄嗟に口を開いたのはスティンだった。
「えっと、ネオルさんは……ネオルさんで良いんですか?」
「おにゃーは何言ってるのかにゃ? ネオルはネオルにゃ」
どうやら狐色の少女の名前はネオルで正解だったようだ。今の今まで実際に彼女がそう名乗ったわけではないのでスティンは確認したのだろう。
「ごめんなさい。ネオルは少し頭が悪いの。許してあげてちょうだい」
「だれが頭のおかしいバカ猫にゃ!?」
「そこまでは言ってないでしょう……」
あははは、と乾いた声を小柄な少年はあげると視線をネオルから隣の少女へずらした。
話しかけづらそうな彼にフクシアは微笑む。
「もう知ってるでしょうけどフクシア・マギア・インペラートルよ。魔法皇族ではあるけれど……ルノス君と同じように『フクシア』と呼んでもらっていいわ」
「は、はひぃ! ワカリマシタ、フクシアサン」
片言のスティン。そういえばローズリアの時も緊張していた。恐らくだが女性が苦手なのだろう。今まで関わってきていないか、あるいは単に女性を苦手としているだけか。
まあ、とルノスは内心で呟く。あわあわしてる様子を見るに前者だろう。
「では
「ええ、それで構わないわ。私も貴女のことはローズリアと呼ばせてもらうわね」
「様」というのに反応すると思ったが、フクシアは慣れた感じだった。となると貴族の間では案外普通なのかもしれない。
……冷静に考えれば、それもそうだ。ルノスが「フクシア」と呼び捨てている少女は皇族の一員なのだし、ルナの生まれ変わりでもある。存外ルノスが魔王候補でなかったら火焙りを食らわされていた可能性も捨てられない。
「ところで私、貴女と昔に会っている気がするの」
「っはい! フクシア様のお誕生日会にペクシー家も招かれまして。覚えて下さったなんてありがとうございます、ですわ」
彼女らは初対面ではなかったのか。
魔法界に降臨した天満月の姫魔女と、ペクシー家の才女。確かに幼少期に挨拶くらいはさせられていても不思議じゃない。
「おーい、おにゃーら遅いにゃ!」
前方から声が届いた。活発な声の主はネオル。いつの間にか前を出ていたらしい。何より驚くべきはその片手でスティンの腕を握っていること。勝手ながら二人は反りが合わなそうだと予想していた身としては意外と思わざるを得ない。
「ネオルは見た目通り元気な子なの。たまに口が悪くなるけれど……基本的には良い子よ」
そう言いながらフクシアが見つめた先ではネオルと彼女に手を引かれたスティン、そして訓練場に群がる新入生を確認できた。
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