サークル勧誘編—思わぬ邂逅2
「君は……」
ルノスはそこまで口にすると、お互いが犬猿の仲である寮に所属している事を思い出した。
ここで取るべき判断は「関わらないこと」それに尽きる。
そしてそんな考えはフクシアの方も同じらしく、お互いに視線を逸らした。
先までスティンの朝の弱さについて指摘していたローズリアもルノスの考えに同意するように黙り込んでいる。唯一状況をうまく飲み込めていないのはスティンのみだった。
否——ルノスやローズリア、そしてフクシアはそう勘違いしていた。
だから珍しく、次に発言した女子生徒の方を彼女は睨むように見つめたのだ。
「にゃにゃ!?
「ち、違うからっ!?」
少年が顔を真っ赤に叫んだ。
ルノスの記憶が正しければ「あの時」というのは呪文学が終わり、ピエール・ピカソとフクシアの対話が落ち着いたさらに後。去り際に狐色の少女が今のような事を言っていた気がする。
フクシアの視線から逃れるようにルノスの背へと隠れる今のスティンの態度を顧みるに100%嘘っぱちの発言でも無さそうだ。
何はともあれ、このまま会話の一つもしないで別れるのはそれはそれで周りの生徒の噂になるかもしれない。残念ながら狐色の少女の一言があって、彼らは同級生や先輩から注目を浴びていたのだ。
適当に挨拶くらいは問題でもないだろう。
「おはよう、
「……ええ、私も。
「その可能性を否定するだけの根拠はないが……きっと違うだろうな」
この場の5人で面識があるのは候補生の二人のみ。お互いの性格からしても会話が長引くような感じではないし、このまま自然な雰囲気で別れるのが最善だ。
「さて、コチラはそろそろ行くよ。こんな場所で立ち話も迷惑だし」
「そうね。有意義な時間を過ごせたわ。またどこかで————」
「にゃ? 一緒に行かないのかにゃ?」
「…………」
「…………」
自然な流れを作り出した二人の努力は何だったのか。せめて声量が小さければ無視もできたが……いかんせん彼女の声音は透き通る。
どうしたものか。
フクシアに至っては分かりやすく頭を抱えている。まあそれはルノスも同様であったが。
一度吐いた唾が口に戻らないように言葉もまた戻らないのは道理。ならばもう、取り繕う必要もないだろう。はっきりと言った方が
「ネオル、よく聞きなさい。本来は
「そんなのゴミ箱にポイすればいいのににゃ」
実際、かの皇女は噂など気にする
まるで子供に言い聞かせる親のような
だから、ルノスは安心しきってしまった。まだ残された僅かな可能性を無いものとして頭から控除したのだ。
「僕は皆んなで行動したいですっ!」
「……は?」
まさか聞き間違えか? と背後を振り返るルノス。そこでは笑顔いっぱいの純粋な少年と隣であんぐりとしたローズリアが佇むのみで——己の耳が腐ったわけではないと理解させられた。
これ幸いと次に行動したのはネオルだ。
「にゃ〜、
「だ、だからスケべじゃないって!」
それだけは避けなければならない。この二人を野放しにすればきっと災いとなって自分達に降り注ぐことになる。
はァ、と頼りなく息を吐いたのはまともな感性を持つ3人だけだった。
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