激動のサークル勧誘期間
プロローグ〜今はまだ、遠く懐かしい、愛おしい記憶〜
作者から皆様へ
最近、本文付きのレビューを貰いモチベーションが上がったので投稿します(チョロい)。
その他にもフォローして下さった方々。応援して下さった方々。コメントをして下さった方々。星のみのレビューをして下さった方々。そして、日々この作品に目を通して下さっている読者様方。
全てが私の励みになっています。
長くなりましたがこの場を借りて感謝の言葉を。
本当にありがとうございます!
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生活するには不十分な暗さの広大な部屋。灯りのひとつさえも無く空から差してくる月の光だけが部屋の最奥に居座る2名を照らしていた。
身の丈に合っていない巨大な王座に座るのは年若く見える男性——そしてその男性にしなだれかかる女性だった。
「今日は良い月だ。こんな事を思うのもお前と出会った日以来、か?」
同じ王座に座る二人の距離は近い。女性の方はしなだれかかっているのだから、当然抱き合っているようにも見えるだろう。
「…………」
否——寂しそうに、悲しそうに男の胸元に頭部を寄せている彼女を確認すれば、抱擁なんかよりもずっと深い意味がありそうだった。
「どうした? お前らしくもない。今宵は俺に甘えたいか?」
「ええ……そうね。貴方と過ごすのもこれで最後なのだから……私は……」
冷静に返したつもりなのか。女は寒さに震えるような声を抑制していた。傍に居る男にはわかる。それ故か子供を落ち着かせる親の如く、月のような白銀の髪を撫でた。
柄にもなく女はそれを無抵抗に受け入れていた。
「俺は、誰が何と言おうがお前と出会えて良かったと思うよ。結婚できて……幸せだ。なあ、お前はそう思わないか? ルナ」
「……私も、幸せよ。貴方と結婚できて。こんな裏切りの魔女なんかには勿体無いくらい」
紛れもない本心。誰も彼女の事を信じない。きっと、この光景を第三者が見れば全員が色仕掛けとでも吐き捨てるだろう。
けれど男はルナを信じている。彼女の言葉に嘘はなく、これから死にゆく己との決別を本気で躊躇しているのだと。
「やめろよ、
「ごめんなさい……私……」
「いいんだ。冷静沈着なお前がこうなるって事は、それだけ俺のことを大事に思っている証拠。嬉しいよ」
オッドアイの瞳がルナを見つめている。上目遣いでルナも見返すと、男は愛おしそうに女の頬を撫でた。
————ああ、この時間ももう終わるのか。
と、静かに沈む気持ちを悟らせぬようにルナは男の胸に顔を埋めた。
それから暫くして、笛のような綺麗な声音を頼りなく吐き出した。
「ねえ、私の魔王様。貴方が真に偉大で強大で勇敢な大魔法使いであるのなら、ボロボロな女の戯言をひとつ訊いてくれないかしら?」
魔王は続きを施すようにルナと目を合わせた。
「私や貴方が死んだとしても、私はまた貴方と結婚したい。何度生まれ変わってもそれだけは変わらないわ。だから……『さよなら』は言わない」
——100年後でも1000年後でも構わない。どうか再び私たちが結ばれるように。
ルナはただ、そんなありもしない魔法をかけて欲しかった。
◆
バサリッ!
鳥たちが羽ばたくような勢いで少女は勢いよく起床した。
不愉快なことに服にはびっしりと汗が染み込んでいる。オマケに荒く乱れた息は激しく身体を動かした後みたいだった。
「にゃにゃ!? 珍しく寝坊したと思ったらおにゃー凄い汗にゃ!? 如何わしい夢でも見たのかにゃ!?」
相変わらず騒がしいルームメイトだ。こんな無愛想な人間を相手に何故そうも騒げるのか。そんな疑問を解消する暇もなく自身の頬をフクシアは撫でた。
「久しぶりに見たわね」
かつての
そう割り切れれば楽なものだが……やはり形容し難い気持ちになるのは仕方がない。
親密な関係にある男女の逢瀬を覗き込む趣味などフクシアには皆無だ。
それとも……。
「いつか、もっと別の気持ちを感じる日が来るのかしら?」
今はまだ、遠く懐かしい、愛おしい記憶。
それが昨日の事のように思い出せるようになる日は、来るのだろうか?
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