入学編—純白の皇女1
格闘魔法訓練、魔法史学が終われば、次は昼休憩だ。ルノス達は魔法史学に遅刻したため、あまり長く座っていなかったがスティンはそこそこ満足そうにしていた。
「今日は何食べようかなー」
ピークが消え去った時には不満げにしていたが、それが今では食べ物のことしか考えていない。
まあ、こっちとしては引きずられるよりずっとマシだが……。心の入れ替えが早いのが彼の強みの一つなのかもしれない。
と、ルノスが考えているとスティンが話しかけてきた。
「ルノス君は何食べるの?」
「……悪いけどオレは用事があるんだ」
「えっ!?」
別にこれは嘘では無い。本当に用事があるのだ。
「ルノスさんはウルテイオにお知り合いが居ますの?」
「いや、そういう訳ではないんだが……」
少し口を噤むルノスに、彼女は何かを察したように頷いた。
「分かりましたわ。まあ事情は誰にでもありますし、
「で、でも……」
「はいはい話は後でお聞きしますわ」
まるで大人に手を引かれる迷子だ。
しかし、今は助かった。
(ローズリアには助けられてばかりだな。礼を考えないと)
二人の後ろ姿を見つめながら、ルノスはそう思った。
◆
ルノスは言いたがって無かったが、彼の言う「用事」は大したものではない。ただ、興味を持ったスティンやローズリアについて来られるのを恐れていただけだ。
彼が向かう先は図書館。
ウルテイオにしかない、とある本を探している。もっとも、そのとある本は既に処分された可能性も高い。
(まずは図書館発見っと……)
5分ほどで図書館を発見できた。これは運が良い。まるで運命に誘き寄せられてるみたいだった。
「…………」
図書館の中に入ると——誰もいなかった。不思議なことじゃない。今頃食堂は生徒で一杯のはずなのだから。
こんな昼時まで本を読み漁っているような、勉強狂いはそれこそ魔法貴族としか思えない。
(ま、そんな貴族サマも今は羽を伸ばしてるだろうがな)
それ故に、図書館には誰も居ない——と思われた。
「————ッ!」
ポツリと、一人だけ。姿勢良く席に座る少女がいる。
穢れなき純白の長髪が光っているような錯覚を見せた。白い肌に青空のような澄み切った瞳が、あまりにも美しい。
これは認めざる負えない。女にうつつを抜かすアホではないが、そんなルノスですら一瞬見惚れさせた。
「……」
不躾な視線に気付いたのか、純白の少女はこちらを向いた。
それに合わせてパッ! と別の方向に視線をずらすルノス。しかしだからと言って突っ立っているのも不自然だ。多くの本が収納されている棚の影に隠れた。
(さすがに失礼だったな。オレとしたことが情けない)
とにかく、あの少女のことは忘れるべきだ。頭にチラつくだけで集中が途切れる。
幸いにもルノスが探している本は、背表紙さえ見えれば分かる類のやつだ。問題があるとすれば、図書館を管理している
(地道に探すしかないか……今日だけじゃ無理そうだな)
図書館は広く、当然本数も数えきれない。天井を見上げればそこにもビッチリ詰められているし、一ヶ月とかでは時間足らずと予測できた。
はぁ、と憂鬱にため息を吐いたその時——
「——私を凝望していたのは貴方かしら?」
「は?」
まるで背中に魔法剣を添えられた気がした。それくらいの衝撃が彼女の声にはあったのだ。
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