3-6話
ミリアとソフィアと別れた後、俺は教室に向かう。
「ねえ、アリウス様よ!」
「嘘! ずっと休まれて、病気でもされていたんですか?」
「私たち、心配していたんです!」
二週間ぶりの教室に入ると、クラスメイトの女子たちに囲まれる。
「ちょっと用があったんだよ。心配させて悪かったな」
「アリウス様の心配をするのは当然ですわ!」
女子たちの黄色い声を浴びていると、クラスメイトの男子が声を掛けて来る。
「何もなかったなら良かった。アリウス、授業のノートを見せようか?」
「おい、言葉遣いに気をつけろ。相手は侯爵家の令息だぞ!」
「あ、失礼しました! アリウス卿、よろしければ、こちらのノートをご覧ください!」
武術大会の後、男子たちの反応が明らかに変わった。これも一年生ながら優勝した優勝した影響だろう。エリクの取り巻きのラグナスは、面白くなさそうな顔をしているけど。
ノートを見せて貰う必要はないから断って、俺は自分の席に着く。
「アッシュとレインも久しぶりだな。俺がいない間に何かあったか?」
「アリウスの噂話をよく聞くようになったけど、僕たちは相変わらずだ」
「そうそう。平民の僕たちが空気なのはいつものことだよ」
アッシュとレインは学院に二割しかいない平民の生徒で、席が近いこともあってよく話すようになった。二人の態度は武術大会に出る前と変わらない。
始業開始を告げるベルが鳴ると教師が入って来る。久しぶりに見る俺を睨んでいるけど
教師が問題と解答用紙を順番に配る。今日から一学期の期末テストが始まるからだ。
学院の授業は成績重視だから、授業をサボっても試験の成績さえ良ければ単位が取れる。だけど試験を受けないと、さすがに単位を貰えないからな。今週だけはサボる訳に行かない。
ちなみに学院に中間テストはないから、授業をサボっている俺は一発勝負だ。アベルのところに行く日を一ヶ月後にしたのも、期末試験のときはダンジョンの攻略に集中できないから。それ以上引き伸ばす意味がないので、一ケ月後の六月末にした。
試験開始から一○分で見直しまで終えると、情報屋とアリサから来た『
そんな感じで今日の試験が終わる。試験は午前中だけで、午後は教師が採点するために使うらしい。そう言えば、前世の高校も同じだったな。
俺が帰ろうとすると、豪快な音を立てて教室の扉が開く。
「よう、親友。おまえもさすがに試験はサボらないんだな!」
バーンはズカズカと教室の中に入って来ると、暑苦しく俺と肩を組もうとする。当然、躱すけど。バーンも俺の反応にすっかり慣れて、これくらいじゃ文句を言わない。暑苦しいのは相変わらずだけど。
「アリウス、学食に昼飯を食いに行こうぜ!」
試験期間中も学食はやっているらしい。学院の生徒なら誰でも無料で食べることができるし、どうせ昼飯を食べるからな。
「たまには
「
俺がいない二週間の間に、バーンとエリクはお互いを呼び捨てにするようになったようだな。バーンは武術大会で実力を示したエリクを素直に認めて、エリクも場分を見つめ直して成長したバーンを認めたってところか。
教室を出てバーンと二人で学食に向かう。
「おい、アリウス卿とバーン殿下だぜ!」
「アリウス卿、最近見掛けませんでしたが。どうかされたんですか?」
廊下を歩いていると、行き交う生徒たちが声を掛けて来る。これも武術大会で優勝した影響で、嫉妬の視線や敵意を向けて来る男子の数が激減して、代わりに良く声を掛けられるようになった。女子たちの黄色い声は相変わらずだけど。
「アリウス様、バーン殿下。お昼をご一緒しませんか!」
学食でランチのプレートを受け取る列に並んでいる間も、男女問わず生徒たちが次々と声を掛けて来る。俺は適当に受け流すけど、バーンは相変わらず対応が上手い。
「悪いが、アリウスが先約だからな。今度、アリウスがいないときにメシを食おうぜ」
バーン、おまえの対応が上手いのは認めるけど。その言い方って、浮気の約束をしているみたいだな。
「アリウス、バーン殿下。こっちの席が空いているわよ!」
五人分のランチプレートを受け取ると、ミリアに呼ばれる。ミリアの向かいの席に座っているのはノエルだ。ノエルとも久しぶりに会うから、ここは素直に従っておくか。
「ノエル、久しぶりだな」
「ア、アリウス君……ソフィアとミリアから聞いたけど、アリウス君が学院をサボっていたのって、
ノエルの言葉にミリアが片目を瞑る。ノエルも心配していたみたいだから、安心させるために先に説明してくれたようだな。ノエルを余計に心配させるような言い方をしないで。
「ああ。ノエル、心配させて悪かったな。最近は忙しくて学院に来ることができなかったけど、試験はちゃんと受けるからな」
「そうよ、アリウス。みんなが心配しないように試験の日だけじゃなくて、朝だけでも構わないから、もっと頻繁に顔を出しなさいよ」
ミリアは俺が
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