第389話:暗躍
※三人称視点※
「『RPGの神』、久しぶりだね」
『RPGの神』の前に突然現われたのは、黒髪に黒い瞳の少年。見た目の年齢は12、13歳というところ。だが『神たちの領域』に現れたのだから、只の少年の筈はない。
「貴様……何故、ここに来た? アリウス・ジルベルトに見つかれば、
『神たち』の中で『RPGの神』だけが少年と繋がりがあり、彼がどういう存在で何をしているか知っている。少年の方ら一方的に接触して来たのだが。
「アリウスって、君が敗北した人間のことだよね。たかが人間に過ぎない相手に、君は惨敗したらしいけど」
少年は『RPGの神』を
「ちょっと過大評価が過ぎるんじゃないかな? たとえ『ダンジョンの神』の力を継承したとしても、所詮は元人間だからね。僕がアリウスに見つかる筈がないし。万が一、アリウスが僕を見つけたとしても……そのときはどうなるか、君なら解っているよね?」
少年はどこまでも冷徹な笑みを浮かべる。そこにあるのは驕りではなく、絶対的な自信だ。『RPGの神』は少年をマジマジと見て冷や汗をかく。
「……それで、貴様は何をしに来たのだ? 私を嘲笑うことが目的ではなかろう?」
「それも目的の1つだけど、本命はこっちだよ。君はもっと勤勉に動くべきだね。僕が
『RPGの神』は東方教会の信者を使って、転移者たちに強力な武器を渡している。転移者の力を増強するためで、勇者という駒を使えなくなった『RPGの神』のせめてもの抵抗だ。
「それもアリウスが目を光らせていて、私の使徒たちが効率的に動けぬからだ。アリウスは諜報機関や各国の組織に通じているから、先回りしてこちらの動きを潰してくる」
人を使って東方教会の動きを妨害しているのはアリサとエリクだが、『RPGの神』はそれもアリウスの力だと考えている。
「君は言い訳ばかりだね。そんなことだと、君を切り捨てることも考えないと」
「ま、待ってくれ! アリウスに一泡吹かせるには、貴様の力が必要なのだ!」
「そんなに慌てなくても、只の冗談だよ。『RPGの神』、君の力は僕も認めているからね」
心にも無いことを言って、少年は狡猾な笑みを浮かべる。
「僕には君にもう1つ、力を借りたいことがあるんだよ。実はね――」
少年の説明を聞くと、『RPGの神』はニヤリと笑う。
「それくらいは造作もないことだ。だが勝算はあるのか?」
「僕の計画に抜かりはないよ。じゃあ、せいぜい君も頑張ってね。僕は君に期待しているから」
『神たちの領域』を出ると、少年は深い闇の中で舌打ちする。そこは少年だけが存在する領域だ。
「少しは使えると思ったのに、本当に役に立たないな。所詮、負け犬は負け犬ってことか。
少年こそが、異世界転移者を大量に発生させている黒幕であり。少年の使徒たちは、この世界ができた頃から暗躍して来た。
これまで少年は多少の悪戯心を持つだけで、世界を観測する立場を貫いて来た。『神たち』ですら、少年の観測対象だった。
だがアリウス・ジルべルトというイレギュラーな存在が『ダンジョンの神』の力を継承したことで、この世界が想定外の状況に陥った。
これは少年が望む状況ではなく。だから観測者の立場から外れて、自ら動くことにしたのだ。
※ ※ ※ ※
「『異世界召喚の力』を与えるか。なるほど……『RPGの神』のこれまでのやり方を考えれば、あり得ないことじゃないね」
俺は魔族の国ガーディアルの魔都にクリステラに来ている。異世界転移を引き起こしている黒幕の情報をお魔王アラニスと共有するためだ。
異世界転移者が多数出現するようになってから、アラニスとも情報共有している。アラニスが知る限りは、『魔族の領域』に異界転移者は出現していないらしいが。
「アラニスなら世界中の魔力が感知できるだろう。それらしい異質な魔力を感知したことはないか?」
アラニスが持つチート能力は、この世界の魔力を感知することができる。ピンポイントで解るほど正確なモノじゃなくて、だいたいこの辺りにいるというアバウトな精度らしいけど。
「残念だが、私の能力も万能じゃない。それなりに大きな魔力の持ち主なら区別がつくが、有象無象の中から一度も会ったことがない相手を探し出すことは無理だね。魔力の性質の違いを見極めることは、アリウスの方が上手いんじゃないか」
まあ、そうだろう。俺もそこまで期待した訳じゃない。一度会ったことのある相手なら、俺は魔力の性質で見分けることができるけど。そもそも『異世界召喚の力』がどんな魔力の性質か解らないからな。
「あとは異世界召喚をやりそうな奴に、心辺りはないか? 俺の知り合いで情報収集に長けた奴に訊いてみたけど、全然情報がなくて。相当用心深い奴か、組織具ぐるみで隠蔽している可能性を探っているんだけど」
「そうだね……アリウスの期待に応えられるか解らないが、心当たりがなくはないよ」
「アラニス、本当か? どんな情報でも良いから教えてくれ」
「アリウスは『
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