第388話:異世界召喚の力


「ふーん……トーヤは2回目の異世界転移なんだ? あーしには、良く解らないけど」


 佐藤誠さとうまこと小鳥遊優里亜たかなしゆりあ水原七瀬みずはらななせが加わって、一気に騒がしくなる。

 3人は『自由迷宮フリーダンジョン』から帰って来たところらしい。


他の客たちがこっちをも見ているけど、気にしているのは誠くらいで。藤崎冬也ふじさきとうやは優里亜の勢いに完全に押されている感じだ。


「良く解らないって……アリウス先輩、こいつらの相手をするのって疲れませんか?」


「もしかしてトーヤは、あーしたちをディスってる? ところでトーヤは何でアリウスを先輩って呼んでんの?」


 優里亜の言葉に、誠と七瀬が冬也に注目する。俺の個人情報だからか、冬也は応えるのを躊躇ためらっているけど。


「前世の俺――おまえたちの世界で俺が卒業した大学と、冬也が通っている大学が同じなんだよ」


「そうなんですね。お2人の大学って、どこなんですか?」


「○○大だけど」


 冬也がボソリと言う。


「え! ○○大って……凄いじゃないですか!」


 優里亜と七瀬も驚いている。まあ、それなりに有名な大学だからな。


「へー……トーヤって頭良いんだ! アリウスはそんな感じだけど」


「なあ、おまえさ……さっきから聞いていれば、俺のことを馬鹿にしているのか? 俺の方がどう見ても年上だろう。少しは言葉の使い方を気をつけろ」


 冬也は彼を先輩と呼ぶくらいだから、上下関係を気にするんだな。だけど相手が優里亜だと、そんな感覚が通用する筈もなく。


「言葉の使い方って? 別に馬鹿になんてしてないし、トーヤは細かいんだね。あーしは他の喋り方なんて知らないから、別に構わないっしょ!」


「優里亜さん! それは自分で言うことじゃないでしょう!」


 誠が見かねて2人の間に入ろうとする。


「マコっちも細かいよね? ふーん……あーしじゃなくて、トーヤの味方をするんだ?」


 優里亜が悪戯っぽく笑う。


「いや、僕はそういうつもりじゃ……今回、悪いのは優里亜さんだから」


 これじゃ、埒が明かないな。


「冬也、優里亜は悪気がある訳じゃないからな。結構良い奴だから、大目に見てやってくれよ。優里亜も、おまえの喋り方を気にする奴はいるからな。止めろとは言わないけど、相手次第じゃトラブルになるから、反応を見ながら喋れよ」


「えー……人の反応を見ながら喋るって面倒じゃない?」


「仲間内なら、その必要はないかも知れないけど。この世界には、おまえたちがいた世界より固い奴や手が早い奴が多いから、余計なトラブルに巻き込まれるぞ」


 俺が言うなって話だけど。俺だって相手や状況次第で、態度や言葉遣いを変える。


「そこは大丈夫っしょ。あーしがトラブルに巻き込まれたら、マコっちが助けてくれるから!」


 優里亜がニヤリと笑って、誠の腕に抱きつく。


「ちょ、ちょっと、優里亜さん! 僕に丸投げしないでくださいよ!」


 優里亜にとっては普通のスキンシップでも、誠には刺激が強過ぎるのか顔が赤い。まあ、優里亜も解った上でやっているみたいだけど。


 誠と優里亜のやり取りに、冬也は馬鹿らしくなったのか顔を背ける。


「冬也さん。優里亜も誠もホント、根は悪くないんで。許してあげてください!」


 七瀬が両手を合わせて、お願いのポーズをする。


「……俺も大人げなかったよ。年下が相手なんだから、俺の方が大人にならないとな」


 美少女の七瀬にお願いされて、冬也も満更じゃないみたいだな。


※ ※ ※ ※


「勇者のように『神』のような存在から、誰がが『異世界召喚の力』を与えられた可能性な……うちも考えなかった訳やないけど」


 その日のうちに、俺は冬也から聞いた話の概要をエリクとアリサに『|伝言(メッセージ)』で伝えて。翌日、アリサと詳しい話をすることにした。


「これだけ大量の異世界転移者が出現してるんやし。異世界召喚ができる奴がおったら、噂になっとる筈やけど。そういう話は一切聞かへんからな」


「異世界転移させている黒幕が『神たちのルール』に基づいて行動しているなら、十分考えられる話なんだ」


 ルールによって『神たち』は、この世界に直接干渉ではない。勇者のスキルも『与えられる』という点では、この世界のスキルの常識と異なるけど。勇者のスキル自体が、この世界のスキルや魔王の法則から外れている訳じゃない。


 例えば『勇者の心ブレイブハート』は狂戦士バーサーカーさせることで、ステータスを大幅に向上させるスキルだけど。狂戦士バーサーカーさせたり、ステータスを向上させるスキルや魔法は他にも存在する。


 それに対して異世界転生や異世界言転移は、この世界に存在しないモノを呼び出すことになる。

 この世界にも召喚魔法は存在して悪魔や天使、精霊などを召喚することもできるけど。魔界と天界、精霊界もこの世界の一部だ。


 『神たち』は『神たちのルール』云々の前に、異世界転生させる力も異世界転移させる力ないって話だけど。


「まあ、アリウスはんが正体すら掴めん『神』みたいな存在が、異世界転移させているならお手上げやから。『異世界召喚の力』を与えられた奴を探す方が、まだ可能性があるか。解ったわ。少しやり方を変えて、探ってみるで」


 その後、エリクにも直接会って話をしたけど。反応はアリサと同じようなモノで。

 『異世界召喚の力』を与えられた奴が存在したしても、相当用心深いか。組織ぐるみで隠蔽しているってところだろう。


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