第387話:黒幕の影
その日の夜。俺は
キシリアとエルザはみんなと女子会だ。子供たちも一緒だけど、子供たちが眠ったら色々話したいことがあるらしい。
2人とみんなの共通の話題と言ったら、どうせ俺のことだから。ちょっと複雑な気分だけど、別に構わないか。
王女2人が転移者の冬也を連れて外泊することになって。『
「アリウス先輩……先輩なら解っていると思いますが。実は俺、異世界に来たの、これで2度目なんです」
冬也は高校2年生のときに別の異世界に転移して、勇者として魔王を倒した。そして元の世界に戻っても、その世界で手に入れた力を失わなかったそうだ。
いや、ここまで冬也が暴露するとは思っていなかったけど。
「俺は『
冬也の力に興味がない訳じゃない。だけどそれ以上に別の異世界のことが気になる。
冬也は別の異世界に転移したとき、異世界の聖女に召喚魔法で召喚されたそうだ。たけど聖女が何かの目的で操られていたり、中の奴から聖女の力を与えられた可能性もある。
そう考える根拠は、俺は『
この世界は様々な『神たち』が集まって創ったって話だ。だけど俺は『ダンジョンの神』の力を継承したから解る。『神たち』はゼロからこの世界を創造した訳じゃない。少なくとも『ダンジョンの神』の力で、世界そのものを創造することはできない。
『神たち』はこの世界の法則に基づいて、世界に影響を与えてゲームを楽しんでいるだけだ。『乙女ゲームの神』がロナウディア王国に『|恋学(コイガク)』の世界を創るとか。『RPGの神』が勇者と魔王の力を与えるとか。『ダンジョンの神』がダンジョンを創るとか。
『神』の力は強大だから『神たちのルール』を無視すれば、世界を壊すことはできるけど。つまり『神たち』は神ポジションのプレイヤーで、この世界そのものは別の誰かが創ったか、既に存在していたかのどちらかだ。
そして『神たち』の言葉を信じれば『神』には異世界転生や異世界転移させる力ない。俺やミリアを転生させたのも、冬也たちを異世界転移させたのも別の奴だ。
そいつがこの世界を創造したのかは解らないけど。2つの世界の魔法やスキルの基本的には同じモノなら、同じ奴が創ったか。少なくとも2つの世界は同じ法則に基づいて存在している可能性が高いって考えて良いだろう。
「なあ、冬也。最初に異世界転移した世界のことを、もっと詳しく教えてくれないか。おまえがこの世界に転移したヒントが見つかるかも知れないからな」
「別に構いませんが……自分が活躍した話をするのは自慢話みたいで、ちょっと恥ずかしいんですが……」
冬也は勇者として特別な力を与えられた訳じゃなくて、異世界転移したときに覚醒した魔力で自分を鍛えて、別の異世界の魔王を倒したそうだ。そして世界を救った報酬して、約束通りに元の世界に戻った。
冬也の話を聞く限りは、別の異世界で『神たち』のような存在に会ったことはないみたいだ。つまり別の異世界には、普通に『異世界召喚』の魔法が存在するってことか? だったら俺たちが知らないだけで、同じ法則で魔法が動いてるこの世界でも『異世界召喚』の魔法を発動することは可能なのか?
「そう言えば、俺を召喚した聖女が『神』に『異世界召喚』の魔法を与えられたって言っていました。俺を元の世界に戻したのも、俺が魔王を倒したときに『神』から『異世界送還』の魔法を与えられたそうです」
それって『RPGの神』が勇者に特別な力を与えるのと同じパターンだな。
この世界にも『異世界召喚』の力を与えられた奴がいて、そいつが大量の異世界転移者を出現させているなら。そいつと接触すれば『異世界召喚』の力を与えた黒幕の正体に近づけるかも知れない。
そしてもう1つ。冬也のように過去に異世界転移を経験した奴を、この世界に転移させることができるなら――俺が、そんなことを考えていると。
「あっ! アリウスが、こんなところで飲んでいるし!}
異世界転移者の
「優里亜さん! アリウスさんにも、プライベートな時間がありますから。勝手に話に割り込んだら悪いですよ」
「アリウスは王様だから、そんなの関係ないっしょ! ねえ、アリウス! あーしは疲れたから、何か奢って!」
「だから、いきなり奢ってと言うとか! まったく、あり得ないですよね?」
「マコっち、そんな細かいことは良いじゃん! アリウスは気にしないから!」
「フフフ……ホント、マコっちと優里亜は仲が良いわよね!」
「だから
冬也が3人を見て唖然としている。
「アリウス先輩……こいつらって、どう見ても……」
「ああ、冬也と同じ異世界転移者だ。誠、おまえたちにも冬也のことを紹介するよ」
冬也と3人がお互いに名乗って挨拶する。冬也は優里亜の勢いに圧倒されているみたいだけど。
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