第370話:お出掛け
『異世界転生者に武器を与えて、何が悪い? 私はおまえたちにも勇者にも干渉していないのだ。文句を言われる筋合いではないわ!』
『RPGの神』に異世界転生者のことを訊いたら、これが答えだった。『RPGの神』も誰が異世界転移させたのかは知らないらしい。突然出現した
確かに『RPGの神』がやっていることは、俺との約束を反故にすることじゃないし。転移者に強力な武器を与えているだけなら、俺が文句を言う筋合いじゃないからな。
異世界転移をさせた奴の情報がない以上、そっちに関しては手の打ちようがないしな。異世界転移者を利用しようとする奴が、何か動きを見せたときに対処するしかないだろう。
※ ※ ※ ※
今日も俺たちは家族12人で、一緒に夕飯を食べている。
幼い子供がこれだいると、手が掛かりそうなものだけど。1歳になったばかりのエストも自分で食べているから、俺たちは見守るだけだ。
「アリウスとミリアが会った異世界転移者は、悪い人じゃないみたいね。私も転移者のことは聞いているけど、あまり良い話は聞かないわ」
俺とミリアが
転移者の良い話を聞かない理由は想像できる。いきなり転移して来て、この世界の金も持たずに、常識も知らない転移者がトラブルを起こす確率は低くないだろう。
しかも転移者は能力に覚醒すれば、レベルとステータスが跳ね上がる。力ずくで状況を打開しようとする奴はいる筈だ。
「最近は異世界転移者の戦力としての価値に気づいた国が、囲い込んで隠蔽するようになったからな。トラブルの話もあまり聞かなくなっただろう」
「囲い込んだ国は、転移者を利用としているってことよね? いきなり別の世界に来て<利用されるなんて。転移者の人たちが可哀そうだわ」
ソフィアが同情するように言う。俺とミリアが転生者だということを、みんなに話しているから。みんなも異世界転移者について、ある程度は理解している。
「私だって、いきなり知らない場所に転移させられて、戻れなくなったら。どうしようかって心細くなるよ」
「私とアリウスも転移者の気持ちは解るから。転移者の七瀬さんに協力しようと思っているわ。だけど他の国に転移した人たちついては、簡単に手出しできる問題じゃないわね」
細かい事情も知らない俺たちが、いきなり乗り込んで転移者を解放しろと言う訳にもいかないだろう。
「他の国の転移者については、もう少し情報を掴んでから俺が動いてみるよ。転移者を囲い込んでいる国の狙いも知りたいからな」
こういうときは俺が動くのが手っ取り早いからな。俺なら大抵の場所に潜入できるし。同じ世界から転生した俺なら転移者のことを、ある程度は理解できるだろう。
「勇者の次は転生者とか、他人の力を利用しようとする国が多過ぎるわ。そんなことで本当に何か解決できると思っているの?」
冒険者として上を目指していたジェシカは、転生者を囲い込む国が気に食わないようだな。
「とりあえず、俺は明日も七瀬の話を訊きに行くつもりだけど」
「アリウス。明日も、私は一緒について行くから」
ミリアは七瀬の俺に対する態度が気になるらしい。俺も七瀬を勘違いさせるつもりはないけど。
「おとうさんとミリアおかあさんは、あしたもおでかけ?」
エストが円らに瞳でじっと見つめる。他の子どもたちも見ているのは、俺が明日の鍛錬に付き合うのか心配だからだろう。
ちなみ子供たちは、みんなのことを『○○お母さん』と呼ぶ。『お母さん』だけじゃ誰のことか解らなくて、ややこしいし。子供たちは分け隔てなく自分の子供と同じように育てようと、みんなで話し合って決めた。
「心配しなくても、俺は明日もみんなと一緒に鍛錬するよ」
子供たちの顔がパッと明るくなる。俺がエリクに『|伝言(メッセージ)』を送ると、直ぐに返事が返って来る。
「それにロナウディア王国の王宮に行くんだから。みんなも良かったら、子供たちを連れて一緒に行かないか? エリクに承諾を貰ったし、エリクの子供のルミナスとレオンも、うちの子供たちに会いたいみたいだからさ」
お出掛けと聞いて、子供たちがはしゃぐ。東方教会の奴からを追い返したときに、転移したことで味を占めたんだろう。
ということで。明日は俺たち全員で、エリクのところに行くことになった。
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