第371話:『恋学』繋がり
そして翌日。午前中は子供たちの鍛練をして、午後からロナウディア王国の王宮に向かう。
『
「アリウスなら王宮に潜入するなんて簡単だよね。だったら同じことだよ」
エリクはそんなことを言うけど、俺を信用してくれているってことだな。
まあ、王家の居住区域から離れた場所に転移ポイントを設定したから、問題ないだろう。
「「みんな、いらっしゃい!」」
「「「「「「ルミナスお姉さん(おねえさん)、レオンお兄さん(おにいさん)、お邪魔します!」」」」」」
10歳のルミナスと8歳のレオンは、うちの子供たちから見たら立派なお姉さんとお兄さんだ。お互いに何度かあったことがあるので、すっかり顔見知りだ。
「みんな、少し見ないうちに大きくなったわね」
「本当だね。僕たちが言うのも何だけど」
ルミナスとレオンが大人びたことを言う。エリクとカサンドラの子供だからというのもあるだろうけど、この2人は実際に年齢よりも大人びている。
「アリウスさん。みんなのことは私とレオンに任せてください」
「さあ、みんな。僕たちと遊ぼうよ」
「「「「「「はい(うん)!」」」」」」
「ありがとう、ルミナス、レオン。じゃあ、よろしく頼むよ」
俺たちはエリクと合流する。今日はカサンドラも一緒だ。
「最近、カサンドラさんは良く出掛けるみたいだけど。また何か画策している訳じゃないよな?」
「アリウス、何を言っている? 私は諸外国の者たちと親交を深めているだけだ」
カサンドラは何食わぬ顔で言うけど。情報収集を怠ったら、足元を掬われそうだな。
エリクの案内で、異世界転移者の
七瀬を護るって意味もあるけど。七瀬が持つ『異世界転移者特典』という、ふざけた名前のスキルは未知数だから、発動してしまった場合のことも考えている。
護衛がドアをノックして、七瀬に俺たちが来たことを告げると。直ぐにドアが開いて、七瀬が出て来る。
「みなさん、入って……」
言い掛けた七瀬が固まる。こんなに人数がいるとは思わなかったんだろう。
「大勢で押し掛けて悪いけど。みんなでエリクのところに遊びに来たついでに、七瀬にも紹介しようと思ったんだよ」
昨日も来たミリア以外のみんなが、七瀬と互いに自己紹介する。
「皆さん、凄い美人ですね……アリウスさんには、本当に奥さんが5人もいるんだ……」
「なあ、七瀬。俺のことは呼び捨てで、敬語もなしにしてくれ。堅苦しいのは嫌いなんだよ」
「は……うん。そう言って貰えると嬉しいかな。私も敬語が苦手だから」
みんながジト目で見ているけど。俺に他意がないことくらい、みんなは解っているだろう。
これから異世界転移者について話をするけど。この人数に囲まれると、七瀬が緊張するだろう。俺とミリア、エリクの3人だけが残って、他のみんなはカサンドラと女子会だ。話題が怖そうだけど。
七瀬は敬語が苦手らしいから、全員敬語も敬称もなしにする。
「まだ実感が湧かないと思うけど。昨日も言ったように、七瀬さんは異世界に転移したんだ。今日は転移者について、僕たちが知っていることを全部話すよ」
エリクが異世界転移者について説明する。
この1年間で、この世界に七瀬のような転移者が、少なくとも100人以上出現していること。
転移者の力が覚醒すれば、レベルとステータスが跳ね上がること。
力に覚醒した転移者が、この世界の人間とトラブルを起こすことが少なくないとこ。
転移者を戦力として取り込もうとする国が幾つもあって、囲い込んで隠蔽していること。
エリクも俺と同じ考えで。隠し事をして後でバレるよりも、最初に全部伝えた方が良いと思って、包み隠さず伝える。
「昨日も話したように、異世界転移をさせた者の情報が全くなくてね。転移させた目的も、七瀬さんたちが元の世界に戻れるかも正直解らないんだ。
僕たちは七瀬さんの生活を保証するし、元の世界に戻れるように協力するから。七瀬さんも僕たちに協力してくれないかな?」
七瀬の反応はというと、エリクを見つめて顔を赤くしている。ミリアが思わずジト目で見る。
「し、仕方ないでしょう! アリウスさんといい、エリクさんといい、物凄いイケメンなんだから! こんなイケメン、私は見たこともないわよ!」
七瀬の言い分も解る。別に自慢するつもりはないけど、俺とエリクは『
「それと、今思い出したんだけど。ミリアに、エリクに、アリウスって……もしかして、ここって『恋学』の世界なの?」
「七瀬さんも『恋学』を知っているんだ! ねえ、遊んだこともあるの?」
ミリアが嬉しそうにグイグイ行く。前世のミリアは思いきり『恋学』にハマっていたからな。
「結構前のゲームだから、私は軽く遊んだくらいだけど。キャラクターの印象が残っていたから、思い出したのよ」
七瀬がいた元の世界の時間は、俺とミリアが死んでから5年ほど経っているらしい。
俺がアリウスに転生してから28年経つから、計算が合わないけど。2つの世界で時間の流れが違っていても不思議じゃない。
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