第356話:これからのこと
カサンドラとフランチェスカ皇国の貴族のことは、アリサに情報収集を依頼して。エリクにも『
エリクからは直ぐに返事が来た。
『僕もその情報は掴んでいるけど。まだ調査中だから詳しいことは言えないよ』
俺はエリクを疑うつもりはない。言っている通りの状況なんだろう。俺に直接関わることなら、エリクは不確定な情報でも伝えてくれるけど。今の段階で俺に伝える必要はないと判断したんだろう。
あとは回答待ちということで。今日、バーンとメイアは泊っていくから。3人で話をしながら、みんなが帰って来るのを待っていると。みんなが順番に帰って来る。
「バーン殿下、お久しぶりです。メイアさんも、いらっしゃい」
「ミリア、『殿下』は止めてくれ。アリウスと結婚して王妃になったんだから。ミリアの方が立場は上だぜ」
「もう慣れちゃったから、殿下って呼んだ方がしっくり来るんだけど。解ったわ。これからはバーンで呼ばせて貰うわね」
俺はみんなと一緒に夕飯の支度をする。
「アリウスが料理をするのか? そんな趣味があるとは知らなかったぜ」
「趣味って訳じゃないけど、最近になって料理をするようになったんだよ。今はみんなよりも、俺の方が時間があるし。みんなと一緒に料理を作るのは楽しいからな」
「アリウス陛下。私にも手伝わせてください」
「メイアはお客さんなんだから、ゆっくりしていてくれ。それにみんなもバーンのことを呼び捨てにすることになった訳だし。メイアも俺を呼び捨てにして構わないからな」
「国王陛下に対して、そんなことはできません……」
「メイアさん。アリウスは堅苦しいことが嫌いだから問題ないわよ。勿論、無理にとは言わないけど」
「いきなり呼び捨てにしろと言われても、難しいわよね?」
「呼び方なんて、どうでも良いってアリウス君は思っているよ。だから気にしないで、今日は楽しんでいってね」
みんながメイアをフォローする。
料理が出来上がって、俺たちはテーブルを囲む。俺がしたのは下ごしらえと、盛りつけくらいだ。相手がバーンでも、客に出すには俺の料理の腕はまだまだだからな。
「どの料理も美味いな」
「本当に美味しいです……心がこもった暖かい味がします」
「そんなに褒めても、お代わりくらいしか出ないわよ」
夕飯を食べながら、みんなで談笑する。俺とバーン、ミリアとソフィアとノエルは、学院で同じ学年で。良く一緒に行動していたし。
エリスは元婚約者のドミニクとの婚約を破棄するために。グランブレイド帝国に行ったときに、バーンと知り合いになって。ジェシカもそのとき一緒に来て。冒険者のジェシカとバーンは、結構話が合う。
メイアも、みんなの方から積極的に話し掛けるから。直ぐに打ち解けて、すっかり女子会のような雰囲気になった。
「いきなり、こんなことを訊くのは失礼かと思いますが……みなさん、お子さんの方は?」
「別に構わないわよ。一番最初に子供が生まれるのは私で。みんなのお腹の中にも、アリウスの赤ちゃんがいるわ」
エリスの言葉に、みんなが幸せそうな顔をする。
みんなにも、それぞれやることがあるし。一緒に話し合って、これまでは魔法で子供ができないようにしていたけど。
『RPGの神』の件が片づいて。みんなの仕事も順調に進んで、落ち着いて来たことだし。魔法を使うのを止めたら、直ぐに子供ができた。まだ、そこまで実感はないけど。俺は父親になる。
ちなみに最初にエリスが妊娠したときに。俺が『ダンジョン神』の力を手に入れたことで、不老になったことは伝えた。不老になったのは、あくまでも『ダンジョン神』の力のせいだから。生まれてくる子供には影響はない。
「そういう質問をするってことは、もしかしてメイアさんも?」
「ええ……私の中にバーン殿下の子供が……」
メイアが恥ずかしそうに言う。
「そうか。バーン、メイア、おめでとう」
「アリウスとみんなもな。もしかしたら、俺たちの子供が一緒に学院に通うことになるかも知れないぜ」
確かにそうなったら、楽しいだろうな。
子供が生まれたら、ジェシカは『白銀の翼』を抜けることになるけど。アランたち『白銀の翼』の他のメンバーは、4人で冒険者を続けるつもりらしい。
ミリアとノエルも、子供が生まれたら今の仕事を辞めて。ジェシカを含めて、3人には子育てをしながら『
エリスとソフィアは子育てしながら。公爵としての仕事や、商会の仕事を続ける。部下が育っているから、大抵の仕事は直接指示をしなくても進む。だから問題ないそうだ。
夕飯の後。俺とバーンは二人でゆっくりと酒を飲む。
「これで俺たちも父親か。エリクとジークは、もう子供がいるし。学院で一緒だった仲で他には……そう言えば、マルスがいたな」
マルスはまだ独身で。父親と同じように枢機卿の地位を狙っているみたいだけど。教会勢力は世襲制じゃないから。派閥争いで苦労しているらしい。
マルスも『
「生まれてくる子供のためにも、戦争は起こしたくないからな。カサンドラ姉貴の件は、どうにか阻止しないと」
グランブレイド帝国とフランチェスカ皇国は、地理的に離れているし。大国同士の戦争になれば、カサンドラのルブナス公国単独で戦うことにはならないだろう。
そうなればグランブレイド帝国と同盟を結んでいて。二つの大国の間にあるロナウディア王国が巻き込まれる可能性もある。
「状況次第だけど。大きな戦争になりそうなら、たとえ相手がカサンドラさんでも。俺は手段を選ばないで止めるつもりだよ」
俺は自分が強くなることが目的で、
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