第355話:バーン来訪
「アリウス。おまえと会うのも久しぶりだな。
今日、『
隣にいるセミロングの髪の女子はメイア・レニング。バーンの元侍女で、今は奥さんだ。
大国であるグランブレイド帝国の皇子のバーンには、政略結婚の話が山ほど来たらしいし。政略結婚した方が、バーンは政治的に有利に立てたけど。バーンは子供の頃から自分に仕えている2歳年上の侍女メイアを選んだ。
バーンは元々、皇帝になりたいなんて野心はなかったし。金や地位で相手を選ぶような奴じゃないけど。今はメイアと結婚した上で、グランブレイド帝国のために皇帝になることを目指している。
バーンの父親で現皇帝のヴォルフや、皇后のデルフィン。そしてバーンの姉でエリクの妻、ルブナス大公カサンドラも、成長したバーンのことを認めているから。バーンはメイアと結婚すると同時に、皇太子になった。
貴族でもないメイアと結婚することを反対する帝国貴族も多かったみたいだけど。ヴォルフ皇帝とデルフィン皇后にカサンドラ、そしてバーン自身が黙らせた。
侍女と結婚したからと言って、結婚式も地味にした訳じゃなくて。むしろ、大国グランブレイド帝国の皇子に相応しく。滅茶苦茶派手な結婚式だった。勿論、俺とみんな、エリクやジークたちも出席した。
今、みんなはそれぞれの仕事で出掛けていて。夕方に合流することになっている。俺の私室で会っているから。ここにいるのは俺と、バーンとメイアの3人だけだ。
「ところで、バーン。今日は何の相談だよ?」
バーンから相談したいことがあると『
「カサンドラ姉貴のことで、アリウスはエリクから何か聞いていないか?」
「特に何も聞いてないけど。カサンドラさん絡みってことは、戦争の話か?」
ルブナス大公であるカサンドラは、これまでに何度か周辺の国と戦争して。その度に相手の国を併合して来た。
戦争を仕掛けて来たのは、
「だけどカサンドラさんが、戦争を仕掛けるなら。エリクが俺に黙っている筈がないからな」
俺とエリクは一部のプライベートな事以外は、決して隠し事をしない仲だ。俺が『ダンジョンの神』の力を手に入れたことや、新しいダンジョンを創ったことも、エリクは全部話している。エリクもロナウディア王国の政治的なことや、カサンドラの動きについて。俺に必要なことは、全部教えてくれる。
「エリクがアリウスに言わないのは、まだ確信が持てないからだろう。カサンドラ姉貴のことだから、エリクにも隠して動いているってことだな」
だけど疑問が残る。エリクが掴んでいない情報を、どうしてバーンが知っているのか?
バーンは策略家じゃないし。政治的手腕も、まだ勉強中ってところだ。正直に言って、エリクやカサンドラに対抗できるレベルじゃない。
「俺だって確信を持っている訳じゃない。情報を掴んだのも
別の国の貴族同士に繋がりがあるのは、別にめずらしいことじゃない。だけどカサンドラクラスの大物が関係を持つなら。普通に考えれば相手は皇族か、公爵クラスの大貴族だろう。
只の表敬訪問という可能性もなくはない。だけどカサンドラはメリットがないことはしない性格だからな。しかもフランチェスカ皇国は、先代勇者のアベルが魔族の領域に侵攻しようとしたとき。勇者同盟軍の中心になった大国の1つだ。
「それが事実なら。カサンドラさんはフランチェスカ皇国と、戦争を起こそうと企てているかも知れないってことか」
あくまで可能性だけど。カサンドラなら、やりかねないとは思う。
「アリウス陛下。カサンドラ閣下を見たという私の知り合いは信頼のおける者です」
メイアが真剣な顔で口添えする。まあ、メイアが優秀なことは
俺は世界中から情報を集めている。各国の情勢や政治に関することや、王公貴族の情報も当然含めて。
知り合いについても、その関係者を含めて対象だ。情報を集めることは、相手のことを良く知ることにもなるし。俺にはアリサという、情報収集に関してエリクに匹敵する能力を持つ協力者がいるからな。
メイアはバーンが学院に通っているとき。バーンの世話をするために、ロナウディア王国に来ていた。護衛じゃないから、バーンと一緒に行動することは、あまりなかったけど。その時点でメイアについても、俺は調べていた。
そしてメイアがバーンと結婚するときに。俺は改めて詳しく調べた。バーンが学院に通っていた時点で。メイアがグランブレイド帝国の諜報部門と、繋がりがあることを知っていからだ。
皇族の周りに諜報部門の人間がいることは、めずらしいことじゃない。問題はメイアの目的だ。メイアがバーンを利用しようとしているなら。俺はバーンに、そのことを伝えるつもりだった。
だけど今、メイアはバーンと結婚している。つまりメイアが諜報活動に関わっていたのは、あくまでもバーンのためだ。
バーン本人
つまりメイアが知り合いと言っているのは、諜報部門の人間で。カサンドラを見たという情報も、間違いじゃないだろう。
そしてグランブレイド帝国の諜報部門の人間が、情報を掴んだってことは。ヴォルフ皇帝も知っているってことだ――これは二重の意味で怪しいな。
カサンドラにしては、あまりにも簡単に尻尾を捕まれている。つまり俺が考えていることは、カサンドラに何か考えがあって。わざと情報を掴ませた可能性だ。
「メイアは、もう一つの可能性も考えているのか?」
「はい。私
「???」
バーンは状況が解っていないみたいだけど。これは俺としても、調べてみる必要がありそうだな。
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