第336話:乱入

書籍版2巻 10月30日発売! https://gcnovels.jp/book/1743

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「ここにアリウスって奴がいるだろう? そいつがどんな奴か、面を拝みに来たぜ」


 傷だらけの男はそう言うと。俺とヨハンのテーブルに、真っ直ぐ向かって来た。


「俺がアリウスだけど。おまえは誰だよ?」


 こいつが巨大クランのリーダーってことは、容易に想像がつくけど。


「俺はダリル・スティングレー。『殲滅の牙城』ってクランのリーダーをやっている。おまえは変異種の地龍アースドラゴンを単独で討伐したそうだな?」


 この情報はハンターズギルドの職員も知っているから。他の奴が知っていても、おかしくないけど。


「おまえは相当な実力の魔術士・・・らしいが……近接戦闘ができねえ魔術士が、イキがっているのはどういうことだ? ハッキリ言って、目障りだぜ!」


 どうやら、俺が魔術士タイプだって間違った情報が伝わっているみたいだけど。


「だったら、何だよ?」


 こいつの背後にいる大量の狩人ハンターも、正直どうでも良い。


「そんなの決まってんだろう……おまえを潰してやるぜ!」


 ダリルが剣を抜いて、躍り掛かって来る。だけど――遅過ぎるんだよ。


 ダリルが反応できない速度で、拳を振り抜く。ダリルは派手に吹き飛ぶと。ギルドの天井に頭から突き刺さる。


「ア、アリウス。君って……今、何をしてのか解っているのか?」


 ケイナが顔を引きつらせているけど。


「おお! アリウス、てめえ……マジで強えんだな!」


 シンディーは喜んでいる。


「俺は……おまえたちとは関係ねえからな」


 ギジェットが他人のフリをするけど。今さらだろう?


「てめえ……よくも、ダリルさんを!」


 ダリルの後から入って来た狩人たちが、一斉に襲い掛かって来る。


「それで。これで全部か?」


 俺は全員の意識を一瞬で狩り取る。こいつらじゃ、俺の相手にならないからな。


「アリウス。おまえ……『殲滅の牙城』が3大クランの1つだってことは、解っているんだろうな?」


 ギジェットが心配そうに言うけど。


「これが3大クランの1つなのか?」


 正直に言えば、完全に拍子抜けだ。まあ、俺の相手になるような奴が、仕掛けて来るとは思っていなかったけど。


 ダリルって奴は確かに1,000レベルを超えているけど。それだけの話で。『殲滅の牙城』の他の連中と良い。全然、歯ごたえがない。


「まあ、そういう・・・・ことか……アリウス。てめえにとっては、3大クランの連中も大したことねえってことだな」


 シンディーが呆れたように言うと。


「なあ、オルド。ギルダークをボトルで。飲まねえと、やってられねえよ」


 シンディーは蒸留酒をグラスに注いで、一気に煽る。


「まあ、そういう話は正直、どうでも良いけど。こいつらが来た理由に、ブリリアントは絡んでいると思うか?」


 こいつらがロワイヤのハンターズギルドに来た理由が、俺の噂を偶然聞いたからからだとは思わない。こいつらに俺のことを吹き込んだ奴がいるだろう。


「まあ。腹黒なブリリアントが、ダリルたちに吹き込んだに決まっているぜ!」


 シンディーは決めつけているけど。証拠はないみたいだな。結局のところ、こいつらの口を割らせるしかないか。


 俺は意識を狩り取った狩人たちを、引き摺って来ると。『完全回復パーフェクトヒール』を発動して回復させる。


「アリウス。おまえは……魔術士じゃないのか?」


「魔法は普通に使うけど。自分が魔術士だなんて、名乗った憶えはないよ。なあ、ダリル。おまえに俺の噂を教えた奴は誰だよ?」


「そんなことを……俺が吐くと思うか?」


 意識を取り戻したダリルが、俺を睨みつける。

 だけど隠すってことは、ダリルは噂を聞いただけじゃなくて。そいつが俺を潰すように、仕向けたってことだろう。


「アリウス君、凄い状況になっているね。だけど、そんな性急に迫っても、ダメじゃないかな? こういう奴には、もっと執拗にやらないと」


 そう言ったのはマルシアで。


「ごめん、アリウス。『白銀の翼』のみんなが、来たいって言うから」


「アリウスさん。たまに俺たちと飲んでくれよ」


 突然現れた6人の冒険者に、狩人ハンターたちが騒めく。


 『転移魔法テレポート』でやって来たのは、ジェシカたちSS級冒険者パーティー『白銀の翼』のメンバーたちだ。


 ジェシカとミリアが、この前ロワイヤの街に来たときに。また来たいって言って『転移魔法テレポート』を発動できる魔道具に転移ポイントを登録していたけど。

 まさか『白銀の翼』の全員を連れて来るとは思っていなかった。


「アラン、わざわざ来てくれたんだな。勿論、おまえたちと飲むけど。その前に、片づけたいことがあるんだ」


「このダリルって人は強そうですが……他の人は大したことがありませんね」


 この発言をしたのは、身長150cmほどの小柄な女子。シャイン・オルタリア。ジェイクの代わりに『白銀の翼』のタンクになった奴だ。


 ジェイクは上を目指していないから『白銀の翼』の他のメンバーと、以前から確執があって。結局、パーティーを抜けることになった。

 代わりのタンクとして、『白銀の翼』に加わったのがシャインだ。


 シャインはこの身長で、2m超のタワーシールドを使いこなす。避けも受けも両方できる万能型タンクだ。

 状況に応じて、避けと受けを使いこなして。敵の攻撃を完璧に引き受けるから。ジェイクよりも、明らかにパーティーの役に立っている。


 話をダリルに戻すと。


「ダリル。おまえが喋らないなら、それでも構わないよ。また仕掛けて来たら、返り討ちにするだけの話だからな。おまえに噂を教えた奴にも、伝えておけよ。俺はいつでも相手になるって」


 俺はダリルを放置して。ジェシカたち『白銀の翼』のメンバーのところに行く。


 せっかく来たんだから。こいつらにも、ギルモア大陸を楽しんで貰わないと。


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