第330話:『自由の国』の連中
「よう、アリウスさん。知らねえ奴らを連れているけど、新しい移住者か?」
ここがギルモア大陸とは別の大陸だと証明するために。
シンディーたち
「移住者って訳じゃないけど。こいつらは俺の客だよ」
一応、俺は『自由の国』の国王だけど。ここに住んでいる奴らは、みんな仲間だと思っている。
「あいつら……魔族か?」
シンディーが顔をしかめる。街中に普通に魔族がいることに違和感を感じているんだろう。
だけどシンディーは、いきなり攻撃したりしない。ギルモア大陸では、人間と魔族は居住権が離れているから。敵対している訳じゃないからな。
「アリウス……この者たちは魔物の素材で出来た装備を纏っているな。おまえたち、何者だ?」
次に声を掛けて来たのは、魔族の『
バトリオの登場に、シンディーに警戒が走る。バトリオは力を隠したりしないからな。
「バトリオ。こいつらは、ちょっと事情があって。俺が他の大陸から連れて来たんだ」
「他の大陸だと……まあ、アリウスのやることだからな。今さら驚くことはないが」
「バトリオも解っているやないか。ホンマ、アリウスはんは何をするか解らんからな。いきなり客を連れて来られて、うちはこき使われとるところや」
アリサが意地の悪い笑みを浮かべる。
それからも『クスノキ商会』のメンバーたちや。ヒュウガにセイヤ、シンも次々とやって来て。挨拶がてら、シンディーたち狩人を見定めて去って行く。
みんな、そこまで警戒している感じじゃないけど。俺が知らない奴らを大勢連れて歩いているから、興味半分で。残りの半分は一応相手の実力を、確かめておこうってところだろう。
アリサの指示もあるけど。『自由の国』に集まって来た連中は、みんな意識が高いからな。俺が何もしなくても。油断して敵に懐に入り込まれることはないだろう。
「アリウス、てめえ……何なんだ、ここは? 化物だからけじゃねえか」
シンディーが憮然としている。さっきからやって来る連中が、みんな明らかにシンディーたちよりもレベルが高いからだろう。
勿論、力を隠していない奴の方が少ないけど。シンディーが『
巨漢の狩人ギジェットも完全に警戒しているし。どんな状況でも面白がっていたケイナが冷や汗を掻いている。
「シンディー、貴方はそんなことを言っているけど。誰が一番強いのか。まだ解っていないみたいね」
ジェシカが呆れた顔をする。
「そうやな。うちらを化物とか……アリウスはんに比べたら、うちらなんて可愛いもんやで」
アリサが
「何なんだよ、てめえらは……あたしだって、アリウスが強いことぐらい気づいているぜ」
「いや、シンディー。アリウスの強さは、そういうレベルじゃないってことだろう」
ケイナが探るように俺を見る。俺の力を見定めようとするように。
「まあ。そんなことは、どうでも良いだろう。俺はおまえたちが疑うから、ここがギルモア大陸じゃないって解るように、この街に連れて来ただけだよ。さすがに、おまえたちも理解しただろう?」
「ああ。こんな場所がギルモア大陸にあるなんて、聞いたことがねえし。人間と魔族が同じ街に住んでいるとか、街にいる奴らの雰囲気とか。ここは、あたしらの知っている場所じゃねえな」
それを認めてしまえば、この人数を大陸間で転移させた俺の実力を認めることになるから。シンディーは認めたくないって感じだけど。認めるしかないみたいだし。
ヨハンもシンディーの態度を見て、満足したみたいだな。
「じゃあ、用が済んだことだし。他に何もないなら、ロワイヤの街に戻るか」
「おい、アリウス。てめえ……この人数をまた『
シンディーが言い終わる前に。俺たちはロワイヤの街のハンターズギルドに戻って来た。
「シンディーは何か言いたかったみたいだけど。アリウスなら、これくらいは余裕よ。私が自慢することじゃないけどね」
ジェシカがシンディーを煽る。
「私としては。シンディーがアリウスのことを、少しでも理解してくれたら満足よ。ねえ、シンディー。これから私たちとお喋りをしない?」
ミリアが笑顔でシンディーの懐にグイグイと入って行く。
「チッ……てめえは、変な奴だな」
シンディーは憮然とした顔で。グラスに酒を注いで、一気に飲み干す。だけどもう喧嘩を売ろうって態度じゃなかった。
「おい、おまえたち……突然姿を消したと思ったら、また現われやがって。いったい、何が起きたんだ?」
ハンターズギルドマスターのオルドが唖然としている。
「オルド、驚かせて悪かったな。まあ、大したことじゃないよ。おまえたちも付き合わせて悪かったな。今日は俺が奢るから、好きに飲み食いしてくれよ」
他の狩人たちも強制的に付き合わせることになったから。奢るくらいはしないと。
だけど狩人たちは、イマイチ盛り上がらないで。恐る恐るという感じで、俺の方を窺っているから。さすがにやり過ぎたみたいだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます