第318話:それぞれの事情と説明
数日後の土曜日の昼過ぎ。
俺たちは『
「あの……私は700年前に滅んだ魔導王国エストラーデの第二王女で。エストラーデを滅ぼした『災厄の魔女』でもあるリーシャ・エストラーデと申します。
今日はお招き頂き、ありがとうございます。ですが……転生者で、太古の国を滅ぼした王女のヴァンパイアなんて、設定が盛り過ぎですよね?」
リーシャは捲し立てながら、申し訳なさそうにする。
「ううん、そんなことないわよ! 私はミリア。貴方と同じ転生者で、私も前世の記憶がないの。だからリーシャの気持ちは解るわ!」
ミリアがリーシャの手を握って、真っ直ぐに見つめる。
「え、えっと……」
「ミリア。さすがに、いきなり過ぎるわよ。もっと自分のことも話さないと」
戸惑っているリーシャに、エリスがフォローする。
「そうよ、ミリア。同じ転生者でも、ミリアとリーシャさんでは状況が違うから」
ソフィアが優しい笑みを浮かべて。
「ミリアはリーシャさんのことを想って言っているんだよね」
ノエルがフォローする。
「つまり、私たちはリーシャさんを歓迎しているってことよ」
そしてジェシカはリーシャを安心させるように笑みを浮かべる。
「ミリアさん……そして、みなさん。ありがとうございます……」
みんなの気持ちが伝わったのか、リーシャが笑みを返す。
それからみんなとリーシャは、それぞれ自己紹介して。俺たちは一緒に昼飯を食べた。
「凄く美味しい……これって、みなさんが作ったんですか?」
「ええ、そうよ。大好きなアリウスに美味しいって言って貰えるように。みんな、料理は日頃から頑張っているから」
エリスの言葉に、リーシャの顔が真っ赤になる。
「あの……みなさんは全員アリウスの奥さんだって聞いていますが……本当なんですよね?」
みんなが笑顔で肯定する。
「まあ、前世の常識じゃ、あり得ない話けど。俺なりに真剣に考えた結果だからな」
これは大事なことだから。俺は胸を張って宣言する。
「俺にとって、みんなは何よりも大切で。どんなことがあっても守りたい。だからみんなと結婚したんだ。俺たちは間違ってない。これだけは誰が何と言おうと、絶対に譲らないからな」
みんなが幸せそうな顔をする。それだけで十分だ。
「いいえ。私はちょっと驚いただけで……みなさんが幸せなら。否定するつもりなんて、ありませんよ!」
リーシャの笑顔に嘘はない。みんなも、そう思ったみたいで。
「リーシャさんがそう言ってくれて、本当に嬉しいわ」
「リーシャ。ありがとう」
「ええ。そうですよ。私からもお礼を言います」
「リーシャさんとは、友だちになれそうだね」
「そうね……他に心配なことはあるけど」
ジェシカが俺をジト目で見る。何を言いたいのかは解るけど。ジェシカも本気で心配している訳じゃないだろう。
みんなとリーシャは、途中からタメ口で話すようになって。その日のうちに、すっかり友だちになったみたいだ。
「アリウスはん。お楽しみのところ、悪いけど。ちょっと、ええか?」
俺たちが昼飯を食べ終えて、みんなで寛いでいると。めずらしく、アリサがやって来る。
「あの、アリサさん……もしかして、私のことですか?」
リーシャが心配そうな顔をする。リーシャが『
「まあ、そういうことやけど。リーシャが気にすることはないで。リーシャは色々と特殊な存在やから。せっかくやから、この機会にアリウスの奥さんたちにも説明しておこうと思っただけや。リーシャが構へんなら、うちから全部説明するわ」
リーシャの同意を得て、アリサはみんなの前に進み出ると。リーシャの事情を包み隠さずに説明する。
まあ、アリサが言うほど、そこまで大変なことじゃないけど。リーシャがヴァンバイアだってこと以上に。注意しておくべき点が幾つかある。
まずはリーシャのレベルだ。リーシャは『災厄の魔女』として封印された状態のリーシャ・エストラーデとして転生したから。レベルは1,000を余裕で超えている。
そして遺跡から回収したゴーレムたちは、今でもリーシャの支配下にある。つまりリーシャの戦力は、アリサに匹敵するってことだ。
単純な戦力で言えば、俺とシンとアリサたちを除けば。『
「私は別に……この力を悪用しようとか……」
「いや、それは解っとるで。けど誰かに悪用される可能性はあるし。リーシャが『
アリサが言うことは良く解るけど。リーシャが自分の現状を把握して、ちょっと落ち込んでいるから。
「なあ、リーシャ。別の見方をすれば、おまえは『
別にリーシャを戦力として期待して、連れて来た訳じゃない。だけどリーシャがみんなのことを守ってくれるなら、素直に嬉しいからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます