第316話:遺跡調査
その日の夜。夕飯を食べながら、エリスたちみんなにリーシャのことを説明する。
一応、みんなにも『
「あくまでも同じ転生者のよしみってだけで。俺に他意はないからな」
「アリウス、そんなことは解っているわよ。リーシャって人も前世の記憶を失くして、突然この世界に転生して。心細いと思うから、連れて来たのは正解よ」
リーシャと同じように前世の記憶を失くして転生したミリアが、真っ先に賛成する。他のみんなも同意してくれた。
「アリウス君が女の子に優しいのは、ちょっと困るけど。人を助けるのはアリウス君の良いところだから」
「だけど冒険に行く度に、別の女性を連れて来たらどうかとは思うわ」
「アリウスのことだから、そうなることも否定できないんじゃない?」
「あら。そのときは私たちが見極めれば良いのよ」
みんなが悪戯っぽく笑いながら、俺を取り囲む。勿論、冗談だってことは解っているけど。
今度近いうちに、リーシャを食事に招待しようという話になって。その後は遺跡のことについて、みんなに話をした。
※ ※ ※ ※
翌日。俺は『
クメール王国の連中は、まだ『蜃気楼の巨人』を調べている。
「アルさん。遺跡のことは何か解りましたか?」
ヨハンが小声で囁く。
「ああ。とりあえず、調査は済んだし。今回の依頼は、そんなに時間が掛からないうちに終わることになると思うよ」
このとき。他の冒険者たちが騒ぎ出した。
「見ろ。もう1体の『蜃気楼の巨人』だ!」
突然、砂漠地帯に現れた新たな『蜃気楼の巨人』に、冒険者たちが戦闘態勢を取る。
だけど『蜃気楼の巨人』は踵を返して、俺たちから離れて行く。
「これは……どういうことだ?」
S級冒険者パーティー『黒鷲団』のリーダー、ケリー・キャスパーが訝しそうな顔をする。
「破壊した『蜃気楼の巨人』の調査は後回しだ。今度こそ『蜃気楼の巨人』を追って、遺跡の場所を見つけるのだ!
冒険者たちは私の指示があるまで、不用意に『蜃気楼の巨人』に近づくな!」
クメール王国の指揮官の指示で。浮遊船は『蜃気楼の巨人』と一定の距離を保ちながら後を追う。
『蜃気楼の巨人』の巨体を、見失うこともなく。俺たちは砂漠地帯にある岩山に辿り着く。
岩山の一部が崩れてできた大きな空洞。『蜃気楼の巨人』はその中に入って行く。
「あそこに遺跡が……よし。冒険者たちは『蜃気楼の巨人』を追って、空洞の中に入れ!」
指揮官の指示に、冒険者たちが動き出す。
俺もヨハンと一緒に空洞の中に足を踏み入れた。
「『蜃気楼の巨人』の巨人は……どこに消えた?」
冒険者たちが空洞の中に入ると。何故か『蜃気楼の巨人』の姿がない。
しばらく進むと、床と壁と天井が金属に変わる。明らかに人工的な建造物の中を、さらに進んで行く。
それが幾つか続いて、一番奥まで辿り着くと。そこには何もない空間が広がる。
種明かしをすれば。俺はリーシャに相談して。ゴーレムたちと棺を、事前に『
ここにあるモノは全部、リーシャの所有物だからな。
俺たちをここに案内した『蜃気楼の巨人』も、リーシャの指示で動いていて。遺跡の空洞に入った直後、俺が傀儡と入れ替わって。『
さすがに遺跡自体は、運んでも置く場所がないし。何もないとクメール王国の調査が長引きそうだから。リーシャと相談して、そのまま残すことにした。
「『蜃気楼の巨人』が消えたのは謎だけど。遺跡は見つかった訳だし。『蜃気楼の巨人』は破壊した奴を調べれば良いだろう?」
遺跡は滅亡した魔導王国エストラーデを調べるための、研究対象として十分価値があるし。
ゴーレムたちがいる状態で、こいつらが遺跡に踏み込んでいたら。確実に全滅していたからな。俺がしたことに、文句を言われる筋合いじゃないだろう。
結局、クメール王国は新たな浮遊船で調査団を派遣して。破壊した『蜃気楼の巨人』と遺跡を時間を掛けて調べることになった。
俺たち冒険者は二手に分かれて。クメール王国の調査団が到着するまで、破壊した『蜃気楼の巨人』と遺跡を見張る。
調査団が到着したら、今回の依頼は終了ということになった。
俺とヨハンは遺跡を見張ることになった。S級冒険者パーティー『黒鷲団』も俺たちと一緒にいる。
と言っても。俺は別にやることがあるから、昼間も
「なあ、アル。少しだけで良いから、話をさせて貰えないか?」
明日には調査団が到着するというタイミングで。『黒鷲団』のリーダーのケリーが、俺たちのところにやって来た。
こいつが俺のことをまだ探っていることは、ヨハンから聞いていたし。
「おい、てめえ。こっちが下手に出ていれば……力づくで喋らせても良いんだぜ!」
ケリーだけじゃなくて。サブリーダーのケインが、痺れを切らしていることは見え見えだった。
だからケリーたちが仕掛けて来たら、『
『アリウス陛下。『黒鷲団』の連中が動きました』
ヨハンから『
「ホント。おまえらは、しつこいよな」
別に相手をしてやる必要はないけど。
冒険者アルとして、こいつらとまた同じ依頼を請けたときに。下手に絡んで来ないように、釘を刺しておくか。
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