番外編:勇者アベル
アベルと勇者パーティーの設定を色々と変更しています。
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アリサたち勇者パーティーのことはエリクに『
そして深夜になって俺が向かった先は、イシュトバル王国の王宮。
アリサが渡した王宮の図面に書かれていることが本当か確かめること。そして勇者に覚醒したアベルの力を探ることが目的だ。
アリサの情報が本当なら、潜入するには今が絶好のタイミングだろう。
後から兵士や魔道具の配置を変えて罠に嵌めるつもりでも、上手く行けばアベルの力を知ることができる。
情報が嘘だとしても、早めに解った方が手が打ちやすいからな。
まあ、アリサの情報がなくても、俺はイシュトバル王国の王宮に潜入するつもりだったけど。クリスの件と良い、アリサたちが来たことと良い。勇者アベルの方から俺に関わって来るなら、放置する訳にいかないからな。
以前に訪れたことがあるイシュトバル王国に一番近い場所まで『
王宮の上空に到着すると『索敵』で様子を窺う。俺の『索敵』は効果範囲が半径二km以上あるから、魔力の反応で王宮にいる全員の位置が解る。
王宮の平面図に書かれていたことは全部頭に入っている。警備兵の数と位置は、概ね平面図に書かれていた通りだ。
俺は『
平面図には警備用の魔道具や罠の位置も書かれていた。魔道具や魔法系の罠は『
とりあえず、俺が通った場所には、平面図と同じ位置に魔道具や罠が仕掛けられていた。
時間があれば、王宮中の魔道具と罠の位置を確認するところだけど。今は他に優先することがある。
俺は『索敵』に反応した一番魔力が大きい奴のところに向かう。
王宮の最上階。両開きの扉の前には、槍を持った二人の兵士。周囲の部屋にも兵士が待機していることは『索敵』で確認済みだ。
誰も俺の存在に誰も気づいていないことを確認すると『短距離転移』で部屋の中に入る。
豪華な寝室の中央に、天蓋付きのベッド。眠っているのは、緑色の髪の二十代半ばの男。こいつが勇者に覚醒したアベル王子か。
アベルは俺に全く気づいていない。『魔法感知』で、ベッドを囲むように床に罠が仕掛けられていることが解る。平面図に書かれていた通りだ。俺は『飛行』を発動しているから問題ないけど。
正直、拍子抜けするほど簡単に侵入することができた。アリサの情報は本当だったけど、何も知らなくても問題なかっただろう。
俺が暗殺者ならアベルは死んで――いや、さすがにそこまで無警戒じゃないか。スキルか魔法か解らないけど、魔力の障壁がアベルの周囲を覆っている。
まあ、俺の目的はアベルを仕留めることじゃないからな。俺は『
単純にアベルの方が俺よりレベルが高いってことか? 『索敵』に反応するアベルの魔力は、そこまで大きくないけど。魔力を隠している可能性はある。
あとは『
「おい、そこに誰かいるのか?」
不意に声がして、アベルが起き上がる。アベルの方がレベルが高いから、俺の『認識阻害』と『透明化』が通用しないってことか?
だけど今はそれを確かめる時間はない。侵入したことがバレたら、国際問題どころの話じゃないだろう。
俺は『短距離転移』を発動して王宮から脱出すると、『転移魔法』で学院の寮の部屋に戻る。
最初から『転移魔法』を使わなかったのは、『短距離転移』は一瞬で発動するけど、『転移魔法』は発動するまでにタイムラグがあるからだ。
だけどアベルに俺の『認識阻害』と『透明化』が通用しなかったとしても、俺の正体はバレていないだろう。
アベルの方がレベルが高い可能性を想定していたから、俺は『
『変化の指輪』は見た目を偽装するんじゃなくて、実際に姿を変えるマジックアイテムだ。俺のレベルとステータスを知っている奴に『鑑定』されたらバレるかも知れないけど。俺とアベルは初対面だからな。
それでもアベルを『鑑定』しても、何も解らなかったことは事実で。アベルの力は解らないままだから、次にアベル似合う前に対策を打つ必要がある。
二日後。俺はアリサに『
アベルに会うのは勇者パーティーに入ることを断ることが前提だから、アベルの反応を考えれば、できるたげ引っ張りたいし。対策を打つにも時間が必要だからな。
『それだけアベルを待たせるには、アリウスはんが勇者パーティーに入ると思わせる必要があるけど。引っ張った後に断ったら、アベルは怒り狂うで。それでもええんか?』
アリサからの『伝言』の返信に、俺は問題ないと応える。状況を考えれば、アベルと敵対することを避けるのは難しいからな。
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