第63-2話:バーンのやり方
「アリウス卿。バーン殿下のことを、くれぐれもよろしくお願いします!」
バーンの護衛、ガトウとジャンが再び頭を下げる。俺たちは2人に見送られて、学院のダンジョンに向かった。
「じゃあ、バーン、ミリア。早速、行くか」
学院の職員に頼んで、ダンジョンの扉を開けて貰う。学院のダンジョンの入口には、万が一にも魔物が出て来ないように、魔道具の扉が使われている。
「そんなに時間がある訳じゃないから、5階層に直行するけど。2人とも問題ないよな?」
「アリウスにしては意外だな。基本的なことを身につけるために、1階層から攻略を始めるって言うと思ったぜ」
「いや、本当はその方が良いんだけど。バーンとミリアなら最低限のことは解っていると判断したんだよ」
剣技大会に出た頃のバーンが相手なら、基本から始めろと言っただろう。だけど今のバーンは自分に足りないところを理解して、真剣に鍛錬をしているから。そこまで心配する必要はないだろう。
学院のダンジョンに入ると、転移ポイントでショートカットして5階層に直行する。
5階層に出現する魔物は18~20レベルと、それなりに高いけど。今のバーンとミリアの実力なら問題ないだろう。
「とりあえず、俺は手出ししないから。バーンとミリアだけで戦ってみろよ」
「ああ、解ったぜ。ミリア、俺は前衛しかできないが、問題ないか?」
「ええ、バーン殿下。私も自分の身は守れますから。バーン殿下がメインのアタッカーで、私はアタッカー兼ヒーラーをやらせて貰います」
ミリアは故郷でダンジョンを攻略していたと言っていたけど、結構手馴れているな。
「じゃあ、ミリア。数が多いときは、俺が引き付けるからな」
「はい。バーン殿下、よろしくお願いします」
最初に出現した魔物は
「ミリア、2体は俺が相手をするが。残りの2体は任せても大丈夫か?」
「はい。問題ありません」
以前のバーンなら、何も考えずに特攻しそうなところだけど。ミリアとの連携をキチンと考えている。
「ほら、おまえらの相手は俺がするぜ!」
バーンは1体の炎の巨人を盾で牽制しながら、もう1体に剣を叩き込む。ステータス頼りで剣を振り回すんじゃなくて、体勢を崩すために足を狙う。自分よりも大きい相手と戦うときの基本だ。
バーンの剣が片足を切り落として、炎の巨人が倒れるけど。止めを刺す前にもう一体がバーンに迫る。
バーンは2体目の攻撃を冷静に盾で受け止めながら、1体目の巨人に止めを刺した。
「『
ミリアの方はもっと危なげない。光属性第2階層魔法『輝きの矢』を炎の巨人の顔を狙って放つと、もう1体の身体を盾にしながら細身の剣を叩き込む。
動きが速いし、位置取りも上手いから。2体同時に相手にすることはなく。炎の巨人を1体ずつ確実に仕留めた。
「この調子なら俺が参戦する必要はないな。5階層はバーンとミリアだけで問題ないな」
その後もゴーレムにキメラ、ドラゴンといった魔物が出現したけど。バーンとミリアは上手く連携して仕留めて行く。
さすがに無傷と言う訳じゃないけど、バーンも躱すことを覚えたから。大きなダメージを負うことはなく、ミリアが『
「バーン、ミリア、お疲れさま。バーンは動きにまだ雑なところがあるけど。基本はできているから、大怪我はしないだろう」
「ああ。俺も自分の戦い方を見つめ直して、真面目に鍛錬しているからな。アリウスにそう言って貰えると嬉しいぜ」
努力の成果が出たことで、バーンは嬉しそうだ。
「ミリアは本当に強くなったな。敵のこともバーンのことも良く見ているし、攻撃に無駄がないな」
「アリウス、そこまで褒められると照れるわよ……でも、ありがとう。私なりに真面目に考えながら鍛錬した甲斐があるわ」
ミリアが、はにかむように笑う。
「次の階層からは状況に応じて、数を調整するために俺も参戦するけど。そろそろ良い時間だから、昼飯を食べに一旦地上に戻るか」
地上に戻ると、バーンの護衛のジャンとガトウがダンジョンの入口の前で待っていた。
「ああ、腹が減ったな。アリウスとミリアも昼飯を食べに街に戻るだろう?」
学院のダンジョンは王都の郊外にあるから、街まで10分ほどで帰ることができる。
「いや、ミリアが弁当を作り過ぎたみたいで。俺はミリアの弁当を貰うことにしたんだけよ。ミリア、バーンたちが食べる分まであるのか?」
「えーと……そこまで沢山はないけど。軽くお昼を食べるくらいなら……」
バーンは俺とミリアの顔を交互に見る。
「ミリア、せっかくだけど悪いな。俺はこいつらと飯を食べに行く約束をしているんだ。アリウス、1時間くらいで戻るからな」
バーンは俺の肩を叩いてニヤリと笑うと、ジャンとガトウを連れて街の方に歩いていく。
「まあ、約束があるなら仕方ないよな。ミリア、俺たちだけで食べるか」
「うん。そうよね、仕方ないわよ」
何故かミリアが嬉しそうな気がするんだけど。
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