第55-2話:目的
魔術士タイプと暗殺者タイプを一掃すると。俺は残ったレベルが高い奴らを仕留めに行く。
音速を超えるまで加速して、空中を飛び回りながら。『
魔法剣士タイプの長髪の男は『紅蓮剣』ラグナ・バースト。灼熱の焔を纏わせた剣を正面に構える。
「おまえがアリウスだな。相手に――」
禿頭の巨漢の戦士は『粉砕王』ガロウ・スティングレー。魔力を放つ柱のように太い槍を振り回して。
「俺を殺しに来るとは、良い度胸――」
仮面の女剣士は『女王蜂』ハーマン・ストレイル。『
「甘いわね。速さで、私に構う筈が――」
まあ、全員有名な『
高レベル『
みんなの命が懸かっているから、手を抜くつもりはないけど。
「てめえ、いきなり現われやがって!」
「この数を相手に勝てると思っているのか!」
高レベルな奴を倒しても、周りの襲撃者たちが集まって来る。だけど全部無視だ。レベルが高い奴を仕留めれば、後はどうにでもなるからな。
「アリウス・ジルべルト。貴方が幾ら強いとしても……高レベルな魔物の集団に襲われたら、どうでしょうか?」
魔力が大きい奴を全部仕留めると。念のために、それなりに魔力が強う奴らを
『
一通り『鑑定』を終えると。俺は『
今の俺なら、襲撃者たちを全部仕留めることもできるけど。これはエリクの戦いだからな。
戦いに私情を挟むなんて、甘いと思う。だけど、そもそも俺の目的は襲撃者を倒すことじゃなくて、みんなを守ることだろう。。
まだ伏兵がいる可能性もあるから、俺はみんなの傍にいるつもりだ。
王家の別荘に戻ると、エリクが広間で俺を待っていた。
「アリウス、早かったね。襲撃者の様子を聞かせてくれるかな」
他のみんなも襲撃に備えて、護衛と一緒に集まっている。
エリクの傍を固めているのは、侍女兼護衛のベラとイーシャだけだ。他の護衛たちと諜報部の連中、あとは別荘の護衛兼任の侍女と使用人たちも、別荘の防衛のために配置についているようだな。
「襲撃者たちがいるのは、別荘から2kmくらいの地点。数は500人くらいだ。俺が攻撃して混乱させたら、ここに来るまでに、まだ時間が掛かるよ」
俺は『索敵』で、襲撃者たちの位置をリアルタイムで把握している。俺が攻撃したことによる混乱は、まだ収まっていない。
「敵のレベルは、どんな感じなのかな? 特に強い敵のレベルと人数が解ると、嬉しいんだけど」
「面倒そうな奴らは、粗方片づけたよ。だから残っているのは、せいぜい100レベル台が10人くらいってところだ。まだ別動隊がいる可能性はあるけど、今のところ近くに他の動きはないな」
予想外の答えだったのか。エリクの侍女兼護衛のベラとイーシャが、訝しげな顔をする。だけど本当のことだからな。
「粗方片づけたって……アリウス、いったい何をしたのよ? まさか、無茶なことをしたんじゃないでしょうね?」
ミリアが俺を睨む。まあ、俺のことを心配しているのは解るからな。
「ミリア、無茶はしていないよ。とりあえず、俺の役目は果たしたから。何か不測の事態が起こらなければ、俺はここにいるつもりだ」
「アリウス、ありがとう。君のおかげて戦いが楽になったよ」
エリクがいつもの爽やかな笑みを浮かべる。エリクにとっては、俺がやったことも想定の範囲ってことだろう。
「エリク。ヨルダン公爵を倒すのは、おまえの仕事だからな。俺は邪魔するつもりはないよ」
「そうだね……アリウス、あとは僕に任せてくれるかな」
エリクにヨルダン公爵に対する色々な思惑があることは理解できる。
ソフィア、ジーク、マルスも。それぞれ自分がすべきことや、したいことに気づいて。頑張っていることは解る。
「アリウス、お疲れさま。貴方も少しは休んでね」
ソフィアが優しい笑みを浮かて、紅茶のカップを差し出す。
ソフィアはエリクの婚約者として、今回の件で役に立とうと頑張っている。ソフィアにもできることはあるからな。それを証明したいんだろう。
「そうよ。もう面倒な奴らは倒したんでしょう? エリク殿下も任せろって言ってくれてるんだから、アリウスは休みなさいよ」
ミリアも転生者として自分に何ができるか、真剣に考えているな。
「ああ。ミリアもソフィアも、ありがとう。それに心配させて悪かったな」
「そんなこと……お礼を言われるようなことじゃないわ」
「そうよ、アリウス。お礼を言うくらいなら心配させないでよね」
2人の顔が何故か赤い。素直にお礼を言われると、照れ臭いからな。
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