第54-2(2)話:俺のやり方


 2日目の午前零時近く。『索敵サーチ』に反応した魔力は、大きいのが20以上で。全部で500以上だ。


 俺の『索敵』の効果範囲は半径5kmを超える。魔力の反応は効果範囲ギリギリだから、まだ距離があるけど。真っ直ぐに別荘へと向かって来る。


「エリク、襲撃だ」


 エリクの部屋に行って状況を伝える。あとはエリクが護衛たちと諜報部の連中に指示を出すから、こっちの方は・・・・・・、敵の動きを随時伝えるだけで問題ないだろう。


「アリウス、ヨルダン公爵が攻めて来たって……」


 ミリアとソフィアが部屋から出て来る。ミリアは剣技大会で使った装備を身につけて、ソフィアは動きやすい服に着替えている。


「間違いないよ。みんなは別荘の中で待機していてくれ」


「アリウス。解っていると思うけど、無理はしないでね」


「そうよ、アリウス。絶対にダメだからね!」


 ソフィアとミリアが心配そうな顔をする。


「ああ。別荘の中に侵入させるつもりはないけど、ソフィとミリアも気をつけろよ」


 エリクの指示で、諜報部の連中が別荘周辺に展開する。勿論、俺も襲撃されるまで待っているつもりはない。


「エリク、別荘の守りは任せるからな」


 襲撃者たちが2kmに迫った時点で、俺は行動を開始する。ここまで待った理由は、陽動の可能性を考えたからだ。

 俺を中心に『索敵』の効果範囲も動くから。別荘からあまり離れたところで迎撃すると、別動隊がいた場合に発見が遅れることになる。


 俺は『認識阻害アンチパーセプション』と『透明化インビジブル』を発動すると。魔力の反応が1番大きい奴の頭上に『短距離転移ディメンジョンムーブ』で移動する。


 『鑑定アプレイズ』して、そいつのレベルとステータス、使える魔法とスキルを確認すると。次に魔力の反応が大きい奴のところに、再び『短距離転移ディメンジョンムーブ』を発動して移動する。


 そして3番に魔力が大きい奴のところに転移したときに、攻撃を開始する。まずはそいつを倒す必要があると思ったからだ。


 禿頭で白髭の灰色のローブを纏う老人。明らかに魔術士タイプだけど、こいつは複合属性第10界層魔法『流星雨メテオレイン』に習熟している。

 この世界に『魔法レベル』という概念はないけど。魔力操作の精度を上げて習熟することで、威力も効果範囲も段違いになる。


 『流星雨』は習得しただけだと『火焔球ファイヤーボール』を複数同時に出現させる程度の威力だけど。こいつの『流星雨』は戦略兵器というレベルで、直撃すれば王家の別荘くらい吹き飛ぱせる。


「おまえの『流星雨』は結構な威力だけど、警戒レベルは低いな」


 俺は『認識阻害』と『透明化』を解除して、灰色ローブに声を掛ける。姿を隠したまま不意打ちしないのは、その方が周りの注目が集まるからだ。


「貴様、何者だ?」


 どうやら襲撃者全員が、俺のことを知っている訳じゃないみたいだな。


「『暗黒の焔ダークフレイム』!」


 灰色ローブが魔法を放つと。直径1m程の黒い焔が、同時に20発近く出現する。この距離だと自分も巻き込まれるから、『流星雨』は使えないけど。他の魔法の威力も高いようだな。


 高速回転しながら迫る黒い焔を、俺は加速しながら全部躱すと。灰色ローブとの距離を一気に詰めて、首を斬り落とす。


「『冥王』ハーノイン・ザハスを、一撃で殺しただと……」


 そう言えば、この灰色ローブも結構有名な『掃除屋』だったな。『冥王』とか、完全に名前負けしているけど。

 俺は『拡声ラウドボイス』を発動して、大声で宣言する。


「俺はおまえたちの攻撃対象ターゲットの1人、王国宰相の息子アリウス・ジルベルト。『冥王』ハーノイン・ザハスを殺したのは俺だ」


 これで俺がここにいることと、灰色ローブを倒したことが、襲撃者たちに伝わる筈だ。


周りにいる襲撃者たちは、見た目から『掃除屋スイーパー』や傭兵崩れってところか。


 灰色ローブが一撃で殺されたからか、襲撃者たちは騒めいているけど。こいつらも素人じゃないから。躊躇ちゅうちょしないで、直ぐに襲い掛かって来た。


「悪いけど、おまえたちは後回しだ」


 俺は再び『認識阻害アンチパーセプション』と『透明化インビジブル』を発動する。だけど不意打ちするためじゃない。

 こいつらに邪魔されずに、魔力の大きい奴全員を『鑑定アプレイズ』して、危険度が高い奴を探すためだ。


 俺は高速で空中を飛び回って、襲撃者たちを次々と『鑑定』する。

 魔力が大きい奴全員の『鑑定』が終わると。一番危険度の高い奴のところに『短距離転移ディメンジョンムーブ』で移動する。


 森の中を高速で駆け抜ける、癖のある金髪の30歳前後の女。結構な美人だけど、それよりも胸元が大胆に開いたボンテージな黒い革鎧が目立つ。

 『嗜虐の女王』ヒステリア・ブルー。こいつも有名な『掃除屋』で、スキル構成は斥候というより完全に暗殺者だ。『認識阻害』と『短距離転移』も使えるから、別荘に侵入されると面倒だな。


 俺が『認識阻害』と『透明化』を解除すると、ヒステリアは直ぐ俺に気づく。


「あんたは……アリウス・ジルベルトだね!」


 即座に攻撃して来たのはさすがだけど、動きが遅過ぎるんだよ。

 俺はヒステリアが反応できない速度に加速して、一撃で仕留める。


 その後も俺は魔術士タイプと暗殺者タイプを、優先的に仕留めて行く。

 みんなを守るために、範囲攻撃魔法を使える奴と、姿を隠せる奴を先に潰しておきたいからだ。


 ちなみに暗殺者タイプの奴は、シルクハットと口髭の紳士って感じの男に、前髪が長い目立たない感じの男。

 魔術士タイプの奴は、三角帽子を被った如何にも魔術士という感じの女子に、身長が高いけど異様に痩せた男。あとは三白眼で皮肉な笑みを浮かべる男だった。


 なんか外見的に、自己主張が強い奴ばかりだったな。俺は攻撃を全て躱して、全員一撃で仕留めたけど。


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