番外編:夕食にドラゴン
書籍版二巻の作業量がヤバいです……ほとんど全部書き直しかな……
魔物を食べる系の話を書いてみましたが。なんかアリウスっぽくないと言うか、書いていて違和感を感じましたので、しばらく保留にしていましたが。気分転換に加筆して、番外編扱いで公開したいと思います。タイミング的にはヨルダン公爵絡みで王家の別荘に行った初日の夜です。
――――――――――――――――――――
1日目の夕食。みんなで別荘の食堂に集まってテーブルを囲む。
マルスはてっきり部屋に閉じこもっていると思ったけど。憮然とした顔で席に座っている。
「マルス卿の様子が、少し変わったみたいだね。まあ、何となく察しはつくけど」
エリクがいつもの爽やかな笑みを浮かべて、俺の方を見る。余計なことをしたとでも言いたいのか?
「いや、僕は文句を言うつもりはないよ。マルス卿のことは、ルイス枢機卿から
エリクは全部お見通しってところか。まあ、別に隠すようなことじゃないけど。
王家の別荘の料理人が作るから、料理は
どの料理も美味いし。エリクは俺とバーンが良く食べることを知っているから、俺たち皿だけ、他のみんなの倍以上の料理が盛られている。上品な料理は趣味じゃないけど、これなら文句はないな。
そしてメイン料理は――
「本日はアリウス卿が貴重な食材を提供してくださいましたので。早速、調理させて頂きました」
別荘の管理人ジェフリー・バレンティンが告げると、大皿に乗った巨大な肉塊が運ばれて来る。湯気が立ち込めるほど過熱しているのに、見た目はほとんど生の赤身で。使用人たちが切り分けると、文字通りに大量の肉汁が溢れる。
「なあ、親友……これって、もしかして……」
「はい。本日は貴重なドラゴンの肉を、ローストさせて頂きました」
みんなの反応は様々だ。エリクとソフィアは平然として、ミリアは完全に引いている。ジークとサーシャは素直に驚いていて、マルスは警戒心一杯だ。
だけど皿に盛られた肉を、ナイフで切って一口食べると――
「嘘! すごく柔らかくて……美味しい!」
ミリアが幸せそうな顔で、思わず呟く。噛む度に溢れ出す大量の肉汁。確かに美味いな。前世で一度だけ食べたことある高級和牛の霜降ステーキを、さらにジューシーにした感じで。本当に口の中で肉が溶ける感じだ。
「ドラゴンの肉って、もっと固いと思ったけど」
「それは部位によりますが。アリウス卿に提供して頂いたのは、見た目は普通の赤身ですが、ドラゴンがエネルギーを蓄える部位です! ドラゴンはエネルギーを脂肪の塊としてではなく、肉の中に細かく内包すのです! ですから見た目よりも遥かに肉質は柔らかく、噛むほどに肉汁が溢れる極上の味を楽しめるのです!」
ジェフリーが拳を握り締めて熱く語る。どうせ食べるなら美味い方が良いと、別荘の料理人に部位を選んで貰ったんだけど。王家の料理人はドラゴンの素材にも詳しいのか? こんな話、SSS級冒険者の俺も聞いたことがないんだけど。
「ドラゴンを食べる機会なんて、王家でも滅多にないけど。食材に関する知識も貴重だからね。ロナウディア王国の建国当時から蓄積しているよ」
エリクが当然のように答える。王族や貴族は美食を極めるらしいから、確かに既知ような知識なんだろう。まあ、ジルベルト家では素材にそこまでこだわらないで。普通の家庭料理を食べているけどな。
結局、俺とバーンはドラゴンの肉のローストを、それぞれ2kg以上食べて。他のみんなもドラゴンの肉の味に満足したみたいだな。
勿論、護衛や使用人たち、諜報部の連中の分も、ドラゴンの肉は用意してある。空いた時間に食べて貰うつもりだ。
まあ、そうは言っても。女子たちにとっては、食後のデザートの方が重要のようで。生クリームとチョコレートソース、フルーツたっぷりのアイスクレープを堪能している。
「なに、このクリームとアイスの濃厚さ? だけど全然しつこくないわ……」
「それにこのチョコレート……甘過ぎず、苦過ぎず……本当に絶妙ね。それにフルーツも……チョコとクリームの甘さを逆に引き立てる美味しさって……」
ミリアだけじゃなくて、ソフィアまで幸せそうな顔をしている。
「ジーク殿下、本当に凄く美味しいですわ。はい、ジーク殿下も……あーん!」
「おい、サーシャ。今はそんなこと……うん、美味いな!」
ジークとサーシャは、相変わらず2人だけで『
「皆様、ありがとうございます。これらの素材も、実はアリウス卿に提供して頂きました」
「「え……」」
ミリアとソフィアの驚きの声が重なる。まあ、そうだろうな。俺はグレイとセレナと一緒に世界中を巡っているときに、美味しいと思ったモノは余分に買って『
そんな風に女子たちがスイーツを堪能する傍らで。
「なあ、バーン。まだ食えるか?」
「何だよ、親友? まあ、食えないことはないぜ」
「だったら、次の料理は絶対食べた方が良いからな」
そう言ったタイミングで、部屋の扉が開いて。料理人が鉄板に乗った新たな料理を運んで来る。
これは俺の方からリクエストした料理で――巨大なアバラ骨に付いた肉塊。ドラゴンのティーボーンステーキだ。
「骨の周りの肉は美味いって言うからな」
「アリウス卿、その通りです!」
ジェフリーが自慢げに胸を張る。俺とバーンは巨大な骨から削いで貰った肉にかぶりつくと――
「さっきの肉もジューシーで美味かったけど。この肉は……味が濃いな。滅茶苦茶濃縮されている感じだ」
「ああ。これはこれで、凄く美味いぜ!」
骨ごと、かぶりつきたいところだけど。さすがにマナー違反だから、諦める。
途中でバーンがリタイアしたけど。俺はドラゴンのティーボーンステーキを完食する。
みんなが唖然としているけど。さっきの肉は2kgと、このために食欲を抑えたからな。
「アリウスって……本当に物凄く良く食べるわね。だけどそれだけ食べてくれると、作る甲斐がありそうね」
「そうね……確かにその通りだわ」
ミリアとソフィア的には、たくさん食べることは問題ないらしい。
「アリウスのおかげで、貴重な食材の料理も楽しめたことだし。
ヨルダン公爵の襲撃が、いつあるか解らないからな。休めるうちに休んでおいた方が良いだろう――まあ、俺は眠るつもりはないけど。
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