第46-2(11)話:エリクの思惑
書籍版『恋愛魔法学院』PVをYouTubeで公開中です!
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世界観バッチリに、カッコ良く仕上げて貰いました。アリウスが喋るところを、是非見てください!
その他、書籍版の情報についてはX(旧Twitter)に色々と公開しています。https://twitter.com/TOYOZO_OKAMURA
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襲撃事件のおかげて、剣術大会は表彰式を行わずに終了。まあ、俺は表彰なんてどうでも良いけど。
本来は決勝戦の後にキース・ヨルダンと、準決勝でエリクに負けたサーシャの兄、レイモンド・ブランカードの3位決定戦が行われる筈だったけど。それも延期で、後日行われることになった。だけど何故かキースが辞退して、戦わずしてレイモンドの3位が決定したらしい。
剣術大会の後、生徒は直ぐに解散して。俺とエリクは、エリクのサロンで話をすることにした。今回の件で、エリクには色々言いたいことがあるからな。
部屋にいるのは俺たちの他に、エリクの侍女兼護衛のベラとイーシャだ、
2人も100レベルを余裕で超える手練れだけど。学院の関係者じゃないから、試合場に入ることができずに、エリクを守ることができなかった。
事件のことを聞いたベラとイーシャは、土下座する勢いでエリクに謝っていたけど。そもそもエリクがヨルダン公爵を煽って、仕掛けさせたことだからな。エリクは2人に落ち度はないと、いつもの爽やかな笑みで応えていた。
襲撃犯は諜報部に引き渡して、今は取り調べをしているところだ。
諜報部の連中は尋問するんじゃなくて。『
「今回の件で遠距離からの攻撃に備えて、王都の警備体制を見直す必要があるな」
「そうだね。こんな真似ができる人間が、そこまで沢山いるとは思わないけど。少なくともアリウスなら、同じ事ができるだろう?」
今回の襲撃犯は500レベルを超えていて、使った魔銃も結構なレアアイテムだ。だから3km先の標的に、殺傷力が高くて正確な攻撃を加えることができた。
俺が捕まえたとき、襲撃犯は魔銃を『
確かに俺もやろうと思えば、同じことができる。今回は3kmの距離から攻撃して来たけど、上手く魔法を組み合わせれば、もっと長距離から攻撃することも可能だ。正確に命中させるには、それなりに訓練する必要があるけど。
「まあ、今回みたいなレベルの襲撃者じゃなくても、あの魔銃があれば遠距離から攻撃できることは解ったからな。とりあえず要人を警護するときは、常に防御魔法を展開するとか。周りの遮蔽物を利用するとか、対策はその辺だろうな。常に襲撃に備えてもキリがないし。狙われるとしたら、エリクのような王族や大貴族くらいだろう」
狙われることが解れば、対策を打つことはできる。だからこそ、疑問が残る。何故このタイミングで、仕掛けて来たかってことだ。
3kmの距離から攻撃できるなら、普段学院で生活を送っているときでもエリクを狙える訳だから。わざわざ剣術大会のタイミングを選んだメリットは、エリクの居場所が確実に解るってことくらいだろう。その代わりにエリクも襲撃されることを警戒していたけどな。
それよりもエリクが1人でいるときを狙った方が、エリクの行動パターンを調べる手間は掛かるけど。殺せる確率は高かっただろう。
だけど手の内を晒してしまった今は、エリクなら確実に対策を打つ。同じようにもう一度仕掛けても、エリクを殺すことはできないだろう。
「なあ、エリク。おまえはヨルダン公爵の手の内が全部解っていて、今日襲撃するよう仕向けたんだよな。俺にキースを徹底的に叩きのめすように言ったのも、そのためだろう?」
「アリウスは僕を買い被り過ぎだよ。僕だってヨルダン公爵が何をするか、全部解っている訳じゃない。例えば今日の襲撃のことだって、あの距離から攻撃するなんて想像もしていなかったからね。だけど資金と人材は有限だし。ヨルダン公爵の性格と状況はある程度把握しているから、早めにカードを切らせたんだよ」
ヨルダン公爵が襲撃を仕掛けるように仕向けたこと自体は否定しない。エリクは俺に嘘は言わないからな。
「たぶん今回も襲撃犯から、ヨルダン公爵の名前は出ないだろうね。もう少し時間は掛かると思うけど、僕は確実に彼を仕留めるよ。できればアリウスにも、これからも僕に協力してくれると嬉しいな」
今回の件で俺はキースを叩きのめした上に、襲撃犯を捕まえた。だからヨルダン公爵の恨みを相当買っただろう。
俺自身が狙われるのは全然構わないけど。キースには俺とミリアが仲がバレているからな。
ヨルダン公爵が平民のミリアを狙う意味はないけど。エリクに踊らされたヨルダン公爵は、今回襲撃を仕掛けたように、そこまで思慮深く行動している訳じゃない。
だから何をして来るか解らないと、思っておいた方が良い。これも全部エリクの計算のうちだろうな。
「エリク。俺は構わないけど、みんなまで巻き込むなよ。少なくともバーンやミリアは、ロナウディア王国の国王派と反国王派の争いに無関係だろう」
「バーンそこまで無関係じゃないけどね。反国王派の貴族は、グランブレイド帝国の貴族とも繋がっているから」
2つの大国の貴族が利害関係で繋がっていることは、俺も知っているけど。エリクは俺が知らない情報を掴んでいるんだろう。
「アリウスが言いたいことも解るよ。だけど一度巻き込んでしまったからね。みんなにも結末を見届ける権利があると思うんだ。だから、みんなの安全は僕が保証するという前提で、これからはみんなに事情を全部説明して。一緒に行動するかどうかは、自分で決めて貰うつもりだよ」
エリクは計略好きで、利用できるモノは利用するけど。自分の利益のために、人を陥れるような奴じゃないからな。
みんなをエサに使うのも、絶対に守れる自信があるからで。今回だって、もし俺が手出ししなくても、少なくとも襲撃者を捕らえること以外は上手くやった筈だ。
エリクを何処まで信頼しているかと訊かれたら、俺はエリクの性格や能力も含めて、
エリクは決して自信過剰な奴じゃなくて。自分にできることと、できないことが良く解っている。だから対等な協力者として、俺を巻き込もうとしているんだよ。
「エリク。おまえが何を考えているか、良く解ったけど。みんなは俺やおまえとは違うからな。みんなの意思を尊重するって約束は守れよ」
「アリウス、勿論だよ。だけどジークには王家の人間としての務めがあるし。君はソフィアやミリアさんのことを、僕とは逆の意味で買い被っていると思うけど。2人は君が思っている以上に有能だし、自分の意志を強く持っているからね」
「それも含めて、みんなが自分で決めることだろう」
俺はソフィアとミリアが弱いとは思わないけど。できれば王家や貴族の争いに巻き込みたくはない。
「アリウスの言う通りだね。バーンについては政治的なことが色々と絡むし、本人は自覚がないと思うけど。結局のところ、バーンが決めることだからね」
バーンについて、エリクが何を知っているか解らないけど。俺に言わないってことは、エリクも決めかねているってところか。
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