第44-2話:勇者パーティー

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 次の日。『太古の神々の砦』を攻略していると、ジェシカから『伝言メッセージ』が来た。


『最初に言っておくけど、緊急事態って訳じゃないから。冒険者ギルドにクリスとは別の勇者パーティーの人が来て、アリウスと話がしたいって言っているわ。別に喧嘩腰じゃないし、普通に話がしたいみたいだけど』


 向こうから接触して来ることは、想定していたからな。

 俺は『今から行く』とジェシカに返信すると。『太古の神々の砦』を攻略を切り上げて、カーネルの街に向かった。


 冒険者ギルドに着くと、ジェシカとマルシアが入口の前で待ち構えていた。


「アリウス、早かったわね。ちょっと面倒そうな人たちだけど、とりあえず話が通じないことはないみたい」


「あたしは気に入らないけどね。特にあのグラスランナーの女とか……」


 マルシアがめずらしく機嫌が悪い。だけど今、グラスランナーって言ったよな?


「まあ、とりあえず話を聞いてみるよ。みんなには俺のせいで、何度も迷惑を掛けて悪いな」


「何よ、迷惑だなんて。アリウスの役に立てるなら嬉しいわよ」


「ジェシカ、惚気るのは後にしなよ。アリウス君の前だとジェシカは、ホントにポンコツだよね」


「マ、マルシア、何を言ってるのよ! 私は惚気てなんか……」


 ジェシカの顔が真っ赤だ。


「なに、今さら否定するの? ジェシカはポンコツな上にヘタレだよね」


 マルシアがニマニマする。


「いや、おまえら何をじゃれてるんだよ。俺は行くからな」


「「あ、アリウス(君)、ちょっと待って!」」


 2人が声を合わせて呼び止める。


「冗談抜きで、油断のならない人たちだから、気をつけていね」


「そうそう。あいつらに比べたら、クリスが只の馬鹿……いや、クリスは凶暴な馬鹿だったけど。あいつらは馬鹿じゃないだけ、質が悪いと思うよ」


 ジェシカとマルシアが、これだけ警戒するのか。まあ、相手は勇者パーティーだからな。

 俺は何が起きても対処できるように準備して、冒険者ギルドの扉を潜る。


 だけど冒険者ギルドの中の雰囲気は、俺が予想していたものと違った。

 そこら中のテーブルの上に、たくさんの料理の皿と酒のボトルが並んでいる。

 冒険者たちは上機嫌で酒盛りをしていた。


「クスノキさん、悪いな。俺たちまで奢って貰っちまって!」


「気にせんでええで。どうせあぶく銭や。それとうちのことは、気楽にアリサと呼んでくれへん? 堅苦しいのは嫌いなんや」


 マンガやアニメのキャラが喋るようなエセ関西弁って奴か。喋っているのは一番奥のテーブルにいる女だ。


 年齢は20代半ばくらい。白い髪と金色の瞳で小動物のような顔立ち。

 身体も小柄で身長は150cmくらい。格好は派手だ。真っ赤な爬虫類系の革のローブと纏って、大きな宝石が幾つも付いた首飾りを付けている。


 冒険者ギルドに入るなり、エセ関西弁の女子と目が合う。エセ関西弁女子は面白がるように笑った。


「あんたが史上最年少SSS級冒険者のアリウスはんやな。直ぐに解ったわ。やっぱりSSS級は漂う雰囲気が違うな」


 エセ関西弁女子の言葉に、一緒のテーブルにいる4人が一斉に俺を見る。警戒心半分、興味半分ってところか。


 黒髪で眼鏡の目つきが鋭い男。

 金色の髪の女子は、耳が長いからエルフだろう。

 ずんぐりした筋肉の塊のような体型で、赤い髪と髭の男はドワーフか。

 オレンジ色のポニーテールで、10代前半に見える小柄な女子は、マルシアが言っていたグラスランナーだな。


 俺は世界中のダンジョンを巡っていたから、人間以外の種族を見ることもめずらしくなかった。

 だけど何と言うか、如何にもRPGのパーティーというメンバーだな。エセ関西弁と眼鏡だけ、ちょっと違和感があるけど。


 冒険者ギルドに入る前から、『索敵サーチ』に反応した魔力の大きさで。大よそのことは解っていたけど。

 『鑑定アプレイズ』すると、こいつら全員が、クリスよりも明らかにレベルが高い。


「ああ、俺がアリウスだけど。おまえたちは俺に話があるんだよな?」


 周りの冒険者たちは相変わらず、酒を飲んで盛り上がっている。

 ジェシカの仲間たちとゲイルたちは、酒を飲みながらも、さりげなく警戒しているけど。

 ジェシカとマルシアは、俺の後から冒険者ギルドに入って来て。勇者パーティーの様子を窺っている。


「アリウスはん、お初にお目に掛かるわ。うちは勇者アベル様の番頭……ちゃうか。勇者パーティーのサブリーダー、アリサ・クスノキや。

 まずはクリスのアホが、迷惑を掛けたことをお詫びするわ。あの暴力馬鹿は、ホンマにどうしようもないわ。何ならうちが牢獄に行って、クリスの首を切り落としくるさかい。それで手打ちにしてくれへんか?」


 アリサはいきなり捲し立てて、物騒なことを言う。どこまで本気で言っているのか、解らない奴だな。


「いや、クリスのことは殺さなくて良いよ。殺すつもりなら、自分で殺しているからな。

 それにクリスが勇者パーティーのメンバーだからって、おまえたちが責任を取る必要はないだろう。

 クリスと一緒にいたイシュトバル王国の兵士に聞いたけど。おまえたちが命令した訳じゃなくて、クリスが勝手に暴走したんだよな?」


「いやあ、アリウスはんが話が解る人で助かるわ。さすがはSSS級冒険者、太っ腹やな。

 まあ、そうは言っても、うちのパーティーのメンバーがやらかした訳やからな。今日はお詫びに、うちが奢らせて貰うわ。アリウスはん、まずは駆けつけ1杯やで」


 アリサは俺と自分のグラスにピンク色の発泡酒を注ぐ。この冒険者ギルドで、一番高い酒だ。


「アリウスはん。ほな、これで手打ちということでええか?」


「ああ。俺は構わないよ」


「そんじゃ、うちとアリウスはんの出会いに乾杯やで!」


 アリサが注いだ酒を一気に飲み干す。別に断る理由はないからな。

 万が一、毒や薬を盛られたとしても、俺のステータスなら問題ない。


「アリウスはん、良い飲みっぷりやな。うちは酒の強い男が好きやで。ささ、どんどん行こうか!」


 アリサに勧められるままに、続けざまに酒を飲む。これもステータスのせいだろう。俺は幾ら酒を飲んでも酔わないんだよ。

 アリサも次々とグラスを空けるけど、全然酔う素振りはない。


「なあ、アリウスはん。さっきからうちは、勝手にアリウスはんと呼ばして貰うとるけど。初対面やさかい、家名で呼んだ方がええか?」


 アリサはニヤリと笑う。


「ジル……おっと! アリウスはんを家名で呼ぶのは、ご法度やったな。最近、忘れっぽくてあかんな。アリウスはん、堪忍やで!」


 ようやく仕掛けて来たか。


 俺はロナウディア王国宰相の息子だとバレると、色々と面倒だから。只のアリウスとして冒険者に登録している。

 アリサはそれをネタに、俺に揺さぶりを掛けるつもりなのか? だけどさ――


 俺にとっては、今さらだからな。


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