第292話:オルテガの誘い

宣伝してスミマセン。書籍版『恋愛魔法学院』がマイクロマガジン社から発売されました。amazonさんとか、楽天さんとか、セブンさんとか。ネットでも買えますので、よろしくお願いします! 情報についてはX(旧Twitter)に色々と公開しています。https://twitter.com/TOYOZO_OKAMURA

――――――――――――――――――――


 この日。俺とグレイとセレナは、現SSS級冒険者序列1位で、冒険者ギルド本部長のオルテガ・グランツをに呼び出された。


「『魔王の代理人』アリウス・ジルベルトに、SSS級冒険者のグレイ・シュタットと、セレナ・シュタット……」


 俺たちが冒険者ギルド本部に入ると、職員たちが注目する。俺も一応、SSS級冒険者なんだけどな。


「俺たちはオルテガに呼ばれたんだよ」


「は、はい。本部長からうかがっています!」


 若い女子の職員が慌てて対応して、俺たちをオルテガの部屋に案内する。


「わざわざ来て貰って、悪かったな。本来なら、こっちから出向くべきなんだが」


 オルテガの机には大量の書類が積み上げられて、オルテガは書類と格闘している。まあ、何が原因なのかは解っているけど。


「『転移魔法テレポート』を使えば訳ねえからな。構わねえよ」


「そうね。オルテガが忙しいことは解っているから。ねえ、アリウス」


「ああ。オルテガさん。とりあえず、グランブレイド帝国に現われた太古の竜エンシェントドラゴン」は片づけたし。今のところは、他にスタンピード級の魔物の暴走は、起きていないんだろう?」


 このところ、世界中でスタンピードが起きたり。2,000レベルを超える魔物が突然出現する事件が頻発している。そのせいでオルテガは毎回、各地に冒険者を大量に派遣したり、派生して発生する事件や、事後処理に対処したりで忙しい。


 まあ、誰が仕掛人なのか、想像はついているけど。この世界を創った『神たち』に、俺たちの方から接触することはできないからな。


「グランブレイド帝国の件は、本当に助かったぞ。他の事件のときも、おまえたちが動いてくれなかったら、もっと被害が大きくなっていたからな。グレイ、セレナ、アリウス。改めて、礼を言わせてくれ」


 オルテガは書類にサインする手を止めて、立ちか上がると。深々と頭を下げる。


 グランブレイド帝国に現れた太古の竜の件は、エリクから『伝言メッセージ』で直ぐに連絡があったから。被害が出る前に、太古の竜を仕留めることができた。

 他の事件のときは、俺たちが知ったのは被害が出た後だった。連絡を受けて直ぐに対処したから、被害の拡大を防ぐことはできたけど。


「いや、オルテガさんが頭を下げることじゃないよ。キッチリ報酬は貰ったし。俺たちは魔物の被害を放置するつもりなんてないからな」


「そうだぜ、オルテガ。外聞が悪くなるとか、下らねえ理由で自分たちだけで対処しようとした馬鹿な国王のせいで、対処が遅れたことはあったが。オルテガは、やれることは全部やっているだろう」


「挙句の果てに、後始末まで冒険者ギルドに依頼するとか。呆れてモノが言えないわね。だけどオルテガは、そういうことも含めて全部対処しているわ。私たちは魔物を倒すだけだけど。オルテガは政治的な調整まで含めて、色々と大変なことは解っているわよ」


 下らないプライドのせいで、魔物への対処が遅れるのは論外だけど。

 2つの国の国境付近でスタンピードが発生したときは、どっちの国を優先するとか、被害の責任は誰が持つとか。そんなことにも冒険者ギルド本部長のオルテガは巻き込まれた。


「そう言ってくれるのは嬉しいが。だったら、おまえたちも冒険者ギルド本部の役員になってくれないか? おまえたちなら資格は十分だからな」


 『魔王の代理人』で『自由の国フリーランド』国王の俺が、冒険者ギルド本部の役員になるのは無理があるけど。グレイとセレナなら現SSS級冒険者序列3位と4位で、実力的には全く問題ないし。人望もあるからな。

 2人が冒険者ギルド本部の役員になって、文句を言う奴なんていないだろう。俺の師匠だということを、問題視する奴はいるかも知れないけどな。


「オルテガ。俺はそういうガラじゃねえって、何度も言っているだろう。それに今は世界迷宮ワールドダンジョンの攻略で忙しいんだよ」


「そうね。オルテガには悪いけど、私も組織に入るつもりはないわよ。私たちが魔物を倒して、オルテガが冒険者ギルドを纏める。適材適所ってところじゃない」


 グレイとセレナなら冒険者ギルドの役員も十分こなせるだろう。だけど2人は組織を動かすよりも、自分で動く方が性に合っているからな。


「オルテガさん。俺のことは冒険者ギルト本部の役員に誘っている訳じゃないよな? まあ、誘われたとしても断るけど。俺は『魔王の代理人』で『自由の国』の国王だからな。俺を役員にしたら、『冒険者ギルドを支配する者たち』が黙っていないだろう」


「いや、そんなことはないぞ。アリウスが役員になってくれるなら、文句を言う奴は俺が全部黙らせるし。『冒険者ギルドを支配する者たち』も、どういう訳か・・・・・・アリウスが役員になることを了承済みだからな」


 オルテガが眉を顰めて俺を見る。オルテガは俺が『冒険者ギルドを支配する者たち』に釘を刺したことを知っているだろうからな。


 『東方教会』がフレッドの勇者の力を利用しようと、『狂犬』デュラン・ザウウェルにアーチェリー商会の強制捜査を依頼したとき。『冒険者ギルドを支配する者たち』はオルテガに依頼を請けるように強制した。だから俺は直接奴らに会って文句を言ったんだけど。


 突然、『冒険者ギルドを支配する者たち』が依頼を断れと言って来たから。オルテガにはフレッドのことを、ある程度は話していたし。誰が何をしたのか、オルテガも大よそのところを察したんだろう。


「まあ、誰が何と言っても。俺は冒険者ギルト本部の役員になるつもりはないからな。オルテガさん、諦めてくれよ」


 オルテガだって、好きで冒険者ギルド本部長をやっている訳じゃないことは解っている。だけど他に任せられるような奴がいないからな。


「なあ、オルテガ。俺たちが断ることは、おまえだって初めから解っていただろう。こんな話をするために、俺たちを呼んだ訳じゃねえよな?」


「ああ、勿論だ。おまえたちに礼を言いたかったのは本当だが、本題は別にある。今度SSS級の上に、EXエクストラ級という冒険者等級を新設したんだが。おまえたち3人にEX級冒険者になって貰いたいんだ」


 これまで冒険者の等級は1番下がFで、1番上がSSSの9段階だった。


「理由は2つある。1つは、おまえたちが強過ぎてSSS級の枠に収まらないことだ。SSS級冒険者が皆、おまえたちと同じくらい強いと勘違いされたら、色々と支障が出る。

 もう1つは、実力のある奴をSSS級冒険者に昇格させるためだ。おまえたちがSSS級冒険者のままだと、SSS級冒険者になれる奴は、実質的には世界に7人しかいないことになるからな」


 別に自慢するつもりはないけど。俺とグレイとセレナと他のSSS級冒険者だと、文字通りにレベルの桁・・・・・が違うからな。他のSSS級冒険者が俺たちと同じことができると勘違いされたら、確かに問題だろう。


 それに世界に10人しかいないSSS級冒険者になるためには、相応の実績を上げた上で。欠員がいる場合を除けば、現役のSSS級冒険者に勝って、序列を奪う必要がある。

 だけど俺やグレイやセレナに勝てる可能性がある奴なんて、魔王アラニスや、この世界の神や魔神くらいだからな。


 オルテガに勝てる奴だって、そうはいないだろうけど。実力的にはSSS級冒険者になれる奴が、俺たちのせいでSSS級になれないのは事実だ。

 単純にSSS級冒険者になれる人数を増やす手もあるけど。安易に人数を増やすと、SSS級冒険者の質の低下に繋がる可能性があるし。他のSSS級冒険者が俺たちと同じ実力だと勘違いされる件は、解決しないからな。


――――――――――――――――――――

ここまで読んでくれて、ありとうございます。

少しでも気に入って貰えたり、続きが気になる方は、

下から【★★★】で評価とか【フォロー】して貰えると嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る