第273話:新たな移住者


スミマセン。書籍版『恋愛魔法学院』が入稿しまして。昨日は最終チェックをしていて、更新できませんでした。まだチェックが終わっていませんがw

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 ヒュウガと仲間たちが『自由の国フリーランド』に来てから1ヶ月が経った。

 魔神ニルヴァナに天界の神と話をして貰うように頼んだけど、まだ返事はない。魔神や神の時間の感覚は俺たちと違うから、時間が掛かるのは仕方ないけど。


「セイヤ、てめえ……」


 血だらけの鍛錬場に、ロギンの巨体が崩れ落ちる。ロギンは全身傷だらけだけど。魔力を収束させることで、セイヤの攻撃を3発まで耐えた。


「馬鹿も馬鹿なりに、少しは成長しているようですね」


 セイヤのサディスティックな指導は上手く行っているようで。ヒュウガの仲間たちは毎日死ぬような目に合いながら。必死に戦って来たことで、動きに無駄がなくなって。セイヤに瞬殺されないように、キチンと連係するようになった。


 セイヤにボロ負けするのは相変わらずだけど。それでもセイヤが手加減しているとは言え、一応戦いの形になって来た。


 ヒュウガの方は元々センスがあるからな。刀使いリョウに鍛えられて。『クスノキ商会』のメンバーと一緒に、何度か高難易度ハイクラスダンジョンに挑んだことで。まるで『クスノキ商会』の一員のように機能している。


 それと、もう1つ。この1ヶ月の間に『自由の国』に変化があった。


「人間と魔族が共存も、上手く行っておるようじゃな。アリウス、お主のやることは本当に面白いのう」


 元SSS級冒険者序列1位のシン・リヒテンベルガーが、魔界の修行から戻って。『自由の国』に移住して来たんだよ。


「『自由の国』に来てくれるのは、ありがたいけど。シンさんは何しに来たんだよ?」


「何、只の気まぐれじゃて。馬鹿も多いじゃろうから、手が余るようなら、儂が鍛えてやろうと思ったが。その必要はないようじゃの」


 シンはセイヤがヒュウガの仲間たちを鍛える様子を眺めて、ニヤリと笑う。


「貴方は……元SSS級冒険者序列1位のシンさんですね。お会いできて光栄ですよ」


 セイヤはシンを見て不敵に笑う。


「お主、心にもないことを……実力はまだまだのようじゃが、お主も面白いのう。儂と手合わせしてみるか?」


「ええ。是非、お願いしたいところですが。どうやら、先客がいるようですね」


 セイヤの視線の先には、アリサと『クスノキ商会』のメンバーとヒュウガが、こっちに向かって歩いて来る。


「シン先生・・も酷いな。うちの弟を褒めて貰えるのは、嬉しいけど。先生が来たら、うちの出番はないやないか」


 アリサがしたたかに笑う。アリサはシンと知り合いなのか? まあ、シンは冒険者ギルドの生き字引のような存在だからな。アリサと知り合いでも不思議じゃない。


「アリサ、儂を先生と呼ぶのは止めろと言った筈じゃ。アリサも弟と同じで、適当なことを言うのう。戦うしか能がない儂よりも、お主の方がアリウスの役に余程立つじゃろう。そんなことよりも、儂がお主たちを鍛えてやろうか?」


「シン先生・・、うちは遠慮させて貰うわ。うちのメンバーとヒュウガは、先生と戦ってみたいようやから、お願いするわ。ヒュウガは元SSS級冒険者のケビン・ファウラの弟子らしいで」


 ヒュウガの師匠のケビンは、俺がSSS級冒険者になったときに、ほとんど不戦勝のような形で買った相手だ。


「ほう、ケビンの奴が弟子を取ったか……良し。お主ら全員を順番に、相手にしてやろう」


 『クスノキ商会』のメンバーたちも、シンと面識があるようで。初対面なのはヒュウガだけだった。

 結局。アリサと、同じく魔術士タイプのエルフのドルイド、フォン以外は、シンと模擬戦をすることになった。


 まあ、元々遥かに格上な上に、魔界で鍛えたシンの相手になる筈もなくて。『クスノキ商会』のメンバーとヒュウガ、そして最後にセイヤがシンと戦って、アッサリ敗れたけど。

 シンはそれぞれに、どうすれば今よりも強くなるか教えていたから。戦った意味はあっただろう。まあ、クリスは悔しがるだけで、シンの言葉を真面に聞いていないから。進歩しないだろうけどな。


※ ※ ※ ※


 数日後。俺が向かったのは、ロナウディア王国とは大陸の反対側にあるオストレイ共和国の地方にある街。この街の領主であるロイガー・マクスロフ子爵に会うためだ。


「『魔王の代理人』アリウス・ジルベルトともあろう方が、どうして私のような者ところへ来られたのですか?」


 ロイガーは70代の白い髪と髭の老人で。杖を突きながら、穏やかな笑みを浮かべる。


「ロイガー、白々しいことを言うなよ。おまえが『冒険者ギルドを支配する者たち』の1人だってことは解っているからな」


 冒険者ギルドの創世期。冒険者ギルド・・・・・・というビジネス・・・・・・・に目をつけて、匿名で出資して世界規模の組織に育てたのが『冒険者ギルドを支配する者たち』だ。


 冒険者ギルドの主な仕事は、依頼者から請けた仕事を冒険者に斡旋することと、冒険者から魔物の素材やマジックアイテム、魔石を買い上げて市場に流すこと。

 冒険者ギルドは冒険者に何か保証する訳じゃないけど、依頼に対して決して安くない手数料を取るし。冒険者ギルドの買取価格は市場価格の半分だ。


 冒険者は冒険者ギルドを通さないで仕事を請けることも、アイテムや魔石を直接商人に売ることもできる。だけど手間や冒険者ギルドに睨まれることを考えたら、大抵の冒険者は冒険者ギルドを通して取引する。


 結果として、冒険者ギルドは冒険者に関する利権をほとんど独占している。貴重な素材やアイテム、魔石の取引で莫大な利益を得て。依頼を通じて各国の権力者と繋がりがあって、冒険者という戦力を持つ冒険者ギルドの権力は、ある意味で大国に匹敵すると言えるだろう。


 『冒険者ギルドを支配する者たち』は世襲制で、今でも匿名の出資者として冒険者ギルドを陰から支配している。匿名性が維持できるのは、彼らがあくまでも出資者であり、冒険者ギルドを実際に運営しているのは、冒険者ギルド本部の役員だからだ。


 だけど冒険者ギルド本部の役員を選出するのは、出資者である『冒険者ギルドを支配する者たち』で。いつでも首を挿げ替えることができる。つまり冒険者ギルドを実質的に支配しているのは『冒険者ギルドを支配する者たち』ってことだ。


 まあ、そんなことは今に始まったことじゃないし。先代勇者のアベルが勇者の力を失った後。シンたちを魔王アラニスの討伐に向かわせたこと以外は、実害はなかったからな。『冒険者ギルドを支配する者たち』の正体が解らないこともあって、これまでは放置していたけど。


「なあ、冒険者ギルド本部長のオルテガに、アーチェリー商会の強制捜査の指名依頼・・・・を請けるように強制したのと。しかも指名したのが『狂犬』デュラン・ザウウェルってのは、どういうことだよ?」


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ここまで読んでくれて、ありとうございます。

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書籍版『恋愛魔法学院』はマイクロマガジン社から12月28日発売予定。イラストレーターはParum先生です。情報についてはX(旧Twitter)に色々と公開しています。

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