第246話:みんな

今回も書籍版に関するお知せが下にあります。


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 冒険者パーティー『クスノキ商会』のメンバーの実力は解った。


 今回以上の敵が襲って来てもゴーレムがあるから、『自由の国」フリーランド』の街の守りに関しては、とりあえず問題ないだろう。

 SSS級冒険者クラスが相手でも、アリサがいれば最悪でも時間稼ぎはできるからな。


「アリウスはんが戻るまで、持たせれば良いだけの話やろ? それくらいなら、どうとでもするわ」


 アリサもSSS級冒険者だけど、単純な力じゃなくて、抜けめのなさで抜きん出ているからな。


 だけど欲を言えば、もう少し戦力を整えたいところだな。

 魔族と人間が共存する街を守るために、数で戦力を揃えることは避けたい。2つの種族の争いの火種になりかねないからだ。


 だから信用できて腕の立つ奴を、少数精鋭でスカウトしたい。勿論、自由に生きる冒険者仲間に頼んで、束縛するつもりはないけど。


「確かに戦力は、もう少し欲しいところやな。アリウスはん、うちに任せて貰えれば、活きが良いのを見繕うで」


 アリサの人脈を使って、人材を探して貰うことにした。勿論、優秀な人材をスカウトできれば、相応の報酬を払う約束をしたけど。

 できれば魔族からも、スカウトしたいところだ。だけど氏族から引き抜くと、それも争いの原因になるからな。単独行動している魔族を探してみるか。


※ ※ ※ ※


 夕方になると、みんながそれぞれの仕事を終えて、『転移魔法テレポート』で『自由の国』の城塞に帰って来る。


 今回の魔物の襲撃については、みんなには事前に知らせていて。結果も魔物を殲滅した時点で『伝言メッセージ』で連絡した。

 その後にウルバラーダの氏族長デスカザを殺したことも、みんなには伝えてある。みんなに隠しごとをするつもりはないからな。


 みんなは帰って来た順に、夕食の支度を始めて。全員揃ってから、一緒に夕食を食べる。みんなで喋りながら料理を作る様子は楽しそうだ。


 6人で囲むテーブルには俺好みの肉料理の他に、さまざまな料理が並ぶ。

 俺は毎日3食全部肉でも全然問題ないけど、俺の好みをみんなに押しつけるつもりはない。


 それでもみんなは、俺が好きな料理を作りたいと言うから。肉料理に加えて、他の料理も作ってくれることになった。

 みんなは料理がどんどん上手になっているし。俺は完全に胃袋を掴まれているよな。


「魔物の襲撃の件で『自由の国』の守りに関しては、とりあえず問題ないことが解ったけど。欲を言えばもう少し戦力が欲しいから、アリサに探して貰うことにしたよ」


 夕食を食べながら、みんなにアリサとしたことを伝える。


「アリサさんに任せておけば、問題ないと思うけど。アリウス、必要なら私の商会の護衛を回しても構わないわよ」


 エリスの商会は魔族との取引の中心を担っているから。護衛としてA級以上の冒険者や同クラスの傭兵をそれなりの数雇っている。


「いや、エリスの戦力は、魔族との取引の方に集中させてくれよ。街の守りに関しては、できればもう少し人材が欲しいだけで。どうしても必要って訳じゃないからな」


 見せしめとしてウルバラーダの氏族長デスカザを殺したことで、少しは抑止力になったと思うけど。人間と魔族の取引を面白くないと思っている魔族は、たくさんいるからな。隊商を護衛する方を優先した方が良い。


「アランやゲイルに声を掛ければ、来てくれるとは思うけど。アリウスはそういうこと・・・・・・をしたくないのよね」


 ジェシカは同じ冒険者だから、自由に生きる冒険者たちを街に縛りつけたくないという、俺の気持ちを理解してくれる。


「アリウス、ごめんなさい。ビクトリノ公爵家には、まだ人材の余裕がないんです」


「だから困っている訳じゃないし。ソフィアが謝ることじゃないよ。」


 申し訳なさそうな顔をするソフィアの頭を撫でる。


 ソフィアはエリクの後押しもあって、ビクトリノ公爵になったけど。ビクトリノ家はロナウディア王国で一番古い公爵家というだけで、勢力は衰退していたから。ソフィアが公爵になってから人材を集めて、立て直しているところだ。


「ロナウディア王国の諜報部から、引き抜く訳にもいかないわよね」


「アリウス君、魔法省の人に声を掛けるのもダメだよね?」


「ああ。俺はエリクと喧嘩をするつもりはないからな」


 ミリアとノエルも、問題になることは当然解っていて。一応訊いたって感じだけど。

 こんな風に、俺たちは何でもないようなことでも、お互いに思っていることを伝えるようにしている。みんなで一緒に暮らしているんだし、コミュニケーションは大切だからな。


「ねえ、アリウス。話は変わるけど。ソフィアの頭だけ撫でるのはズルいわよ」


「そうよ、アリウス。私だって撫でて欲しいんだから!」


 ミリアとジェシカが文句を言う。ホント、結婚してから、みんなも遠慮がなくなったと言うか、ストレートに気持ちを伝えてくれるようになったな。

 勿論、表現の仕方はそれぞれ違うだけど。


「アリウス、私は撫でてくれるよりも……ねえ、解るわよね?」


 エリスが悪戯っぽく笑う。


「エリス、抜け駆けはズルいわよ!」


「そうですよ、エリス。でしたらアリウス、私も……」


 みんなも年齢や身分とか関係なしに、お互いを完全に呼び捨てにするようになった。それでも相手を気遣うことは忘れていない。


 みんなの仲が良いことが、俺は一番だと思うよ。

 これからも、俺がみんなを守るからな。


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ミリアのデザインを公開していませんでしたので、X(旧Twitter)に公開しました。

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