第231話:派手な挙式
翌日。みんなのことを俺の父親のダリウスと、母親のレイアに話して。グレイとセレナ、シリウスとアリシア、あとはエリクとバーンにも『
アランたちにはジェシカが伝えるってことで。ゲイルたちにはカーネルの街に行って話をするつもりだ。
俺たちはみんなで話し合って。エリス以外の4人とも、正式に結婚することにした。だから4人の両親に挨拶しに行くことになった。
俺は堅苦しいことは好きじゃないけど。これからみんなと一緒に人生を歩むんだから。こういうことはキッチリしておく必要があるからな。
結婚式は各国から来賓を招いて、派手にやることにした。みんなとの結婚について、誰にも文句を言わせないとアピールするためだ。
ロナウディア王国のアルベルト国王と、グランブレイド帝国のヴォルフ皇帝も結婚式に出席してくれるから。2つの大国にもお墨付きを貰うことになる。
みんなは俺の誕生日に結婚式を挙げたいって言ったけど。さすがにスケジュール的に無理だから。誕生日は普通にみんなと俺の両親、シリウスとアリシアに祝って貰った。
そして俺たちが結婚式を挙げるのは、ロナウディア王国と魔族の領域の間に新たに建国した『
街はまだ建設中だけど。城塞は家具や内装まで結婚式に間に合わせた。結婚式全般を取り仕切ってくれたのはエリスだ。
ブリスデン聖王国やフランチェスカ皇国など、勇者アベルの侵攻に加担した国からも来賓を招いた。アベルの国イシュトバル王国や、東方教会の本部があるアリスト公国にも招待状を送ったけど。さすがに出席する奴はいなかった。
「この私が結婚式に出席するなど……まあ、アリウスの狙いは解っているけどね」
魔王アラニスと配下の魔族たちも招待したら、意外なほどアッサリ承諾してくれた。
魔王アラニスが結婚式に出席することは、本人の承諾を貰って、事前に各国に伝えてある。
結婚式を政治的に利用するのはどうかと思ったけど。人間と魔族が友好関係を築いているという最高のアピールになるからな。
魔族を敵だと決めつけている奴らが、何か仕掛けようと企んでいたみたいだけど。街の警備はアリサに任せているから、そんな奴らが入り込む隙なんてない。
まあ、俺も『
出席者の中には魔王アラニスと魔族の配下に、グレイとセレナに俺の両親と、
結婚式が始まって。青いタキシードの俺の左右に、ウエディングドレスを着たソフィア、ミリア、ノエル、ジェシカがが並ぶ。
左右の腕で2人ずつエスコートする様は、全然普通じゃないけど。これが俺たちの形だからな。
俺たちの結婚をアピールするために、
ロナウディア王国の格式に則った式を挙げて。アルベルト国王にヴォルフ皇帝、そして2つの国の未来を担うエリクとバーンに立ち会って貰う。
会場に集まった各国の王公貴族たち。そいつらが遠巻きに恐る恐る見ているのは、少し離れた場所に並ぶ魔王アラニスと魔族の配下たちだ。
結婚式が無事に終わって、パーティーが始まった。
主役の俺たちの5人は、来客たちに挨拶をして回る。
「ジェシカ、おめでとう。良かったな」
「みんな……ありがとう……」
ウエディングドレス姿のジェシカに、アランたち『白銀の翼』の面々が声を掛ける。
エリスとの結婚式のときも、ゲイルやアランたち冒険者仲間に声を掛けたけど。王侯貴族が集まる式に出るのは場違いだと辞退されて。カーネルの街の冒険者ギルドで、二次会を開いて貰った。
だけど今回は同じ冒険者のジェシカの結婚式だからと、アランたちだけじゃなくて。ゲイルや他の冒険者仲間たちも出席してくれた。
「あたし的にはジェシカをアリウス君に取られた気分だけど。ジェシカ、アリウス君に文句があるときは、あたしに言ってよ。カーネルの街の冒険者全員に言い触らすからね!」
マルシアがニマニマする。
「アリウスとジェシカが初めて会ってから、もう10年以上経つんだよな。アリウス、ジェシカを散々待たせやがって。ジェシカを泣かせるような真似だけはするなよ」
「ああ、ゲイル。約束するよ」
さすがに結婚式の場じゃないけど。母親のレイアからは『たくさん奥さんがいるんだから。早く孫の顔が見たいわ』なんて言われている。
まあ、その辺のことは、これからゆっくり考えれば良いだろう。
※ ※ ※ ※
結婚式の前後も俺は平常モードで。毎日
『自由の国』国王という肩書が新らしく追加されて、その分やることが増えた。
すでに街には魔族の移住者が、少しずつ住み始めていて。かつて勇者アベルとイシュトバル王国軍に侵攻された魔族の氏族ビザルディアからも、20人ほどの魔族が移住することが決まっている。
「俺は人間どもを信用した訳じゃない。アリウス、貴様の甘言に乗ってやるから、俺を失望させるな」
ビザルディアの氏族長アルモスは、憮然とした顔で言った。まずはアルモスの期待に応えないとな。
ちなみに『自由の国』の街の名前も『フリーランド』にした。後で変えるかも知れないけど。今は都市国家みたいなものだし。いくつも名前があると面倒だからな。
人間も移住を始めた。とりあえず商人が中心だ。魔族との取引で利益が出ることが解った商人たちが、新たな取引の場と商材を求めて移住して来た。
あとは商人たちを相手にする宿屋や食堂で働く者たちだな。
食料その他の必要な物資は、当面はロナウディア王国から輸入して。魔族の領域の各氏族とも、取引することになっている。
「アリサ。結婚式のときに仕掛けて来た奴らは『東方教会』の連中だったんだよな?」
「アリウスはん、そうやで。実行犯は情報を吐かせてから、全員始末したけど。裏で糸を引いた連中にも、カウンターを放っておいたわ。誰に喧嘩を売ったのか、キッチリ解らせてやる必要があるからな」
誰にどんな仕返しをしたのか、アリサから報告を受ける。その内容は、やっぱりアリサは敵に回したくないって感じのモノだった。
「アリサ。解っていると思うけど、余りやり過ぎるなよ」
「アリウスはん、解っとるがな。だけどこれくらいは当然やで」
アリサはニヤリと笑った。
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