第194話:魔神ニルヴァナ
2つの頭を持つ悪魔ユーグレントが帰った後。
俺たちは魔神ニルヴァナと、ニルヴァナが支配する魔界の国オルスレイについて、魔神エリザベートから詳しい話を聞いた。
魔神ニルヴァナ・ハンティエルドは、魔界を支配する4人の魔神の1人で。ユーグレントが英知を誇ると言っていたように、武力よりも策略家として知られているらしい。
魔神ニルヴァナを策略家として知らしめる最大の要因は、ニルヴァナの魔眼が持つ強力な精神支配能力だ。
ニルヴァナの魔眼は深層心理に働き掛けて支配するから、支配された者を見分けることは難しく。支配された本人も気づかないうちに、ニルヴァナのために情報収集や工作を行っている悪魔が、魔界中にいるらしい。
そんな魔神ニルヴァナが支配する魔界の国オルスレイの悪魔たちも、精神支配能力や諜報力に長けている者が多く。2つの頭を持つ悪魔ユーグレント――オルスレイの特級諜報官ユーグレント・サイコラスも、その筆頭の一人だそうだ。
「魔力感知に長けた者であれば、魔眼に支配された者を見分けることはできる。魔眼に支配された者はニルヴァナの魔力を帯びているからな。
我がイスペルダの魔将たちであれば、見分けるのは造作もないことだが。我々の目が届くところに、魔眼に支配された者がいるとは限らぬからな」
魔神エリザベートは忌々しそうに吐き捨てる。
「だが対策を打つことは、それほど難しいことではない。もし私の配下の者がニルヴァナの魔眼に支配されたら、そのような脆弱な精神の持ち主は私が切り伏せる――おまえたちも、異存はないな?」
「はい、エリザベート陛下。魔眼ごときに屈して陛下を裏切るなど、万死に値します!」
ハイネルフォードを筆頭とする魔将たちが、片ひざを突いて、深々と頭を下げる。こいつらは魔神エリザベートに殺されるなら、本望なんだろう。
だけどエリザベートが魔眼に支配された部下を、本当に殺すとは思わないけどな。
「魔神ニルヴァナとは、
「いや、魔神ニルヴァナの精神支配に耐えられるとしても。敵の懐に飛び込むような無謀な真似をするつもりはないからな。
そんなことよりも、エリザベート陛下。魔神ニルヴァナは宣戦布告したんだよな? 陛下がニルヴァナと戦うなら、必要なら俺たちも参戦するよ」
グレイとセレナが頷く。エリザベートは俺たちを魔界に招いてくれて、俺たちの力を認めてくれて。『RPGの神』の言葉を無視して、客人として迎えてくれた恩人だからな。
「ありがたい申し出だが、これは私の戦いだ。おまえたちが私の臣下になるなら話は別だが、客人に戦わせる訳にはいかぬ。魔神ニルヴァナに、他者の力を借りる口実を与えることにもなるからな」
「さっき、魔神ニルヴァナが天界の神と手を結んだとか言っていたけど。それが関係しているのか?」
「ああ。魔神ニルヴァナが、とある神と密約を結んだ情報は掴んでいる。もっとも、天界の神が魔界の争いに介入するには、大義名分が必要だ。魔界と天界はこの世界を滅ぼさぬために、相互不可侵条約を結んでいるからな」
魔界に4人の魔神がいるのと同じように、天界にも4人の神がいて。この世界の魔神と神の力は均衡しているらしい。だけど魔神や神の1人が力を軽く振るうだけで、地上の国が幾つも滅ぶレベルだからな。戦いに巻き込まれた者は、たまったものじゃないだろう。
「それでも魔神ニルヴァナが何を仕掛けて来るか解らぬからな。奴に口実を与えたくはないのだ。だから私がおまえたちの力を借りることはない」
魔神エリザベートはこんなことを言っているけど。悪魔たちが言う『人間風情』が参戦したところで、魔界と天界の不可侵条約を破る口実になるとは思わない。
つまりエリザベートは単純に、俺たちを戦いに巻き込みたくないんだろう。
「私が直接戦場に行くことなれば、おまえたちと手合わせすることはできなくなるが。そこは勘弁して貰うしかないな」
「いや、エリザベート陛下。気にしないでくれよ。それよりも、本当に面倒なことになったら。いつでも俺たちを呼び出して構わないからな」
ハイネルフォードたちには悪いけど。魔神同士が本気で戦ったら、ハイネルフォードたちじゃ役に立たないだろう。
俺とグレイとセレナでも役に立てるか怪しいけど。魔神以外に、戦力になる奴ががいるとしたら、あとは魔王アラニスくらいだろう。
「私はそんな状況を作るつもりはないが。万が一にも、そうなったら考えよう」
魔神エリザベートは自分が敗けることなんて微塵も考えていないようだな。だけど魔神ニルヴァナの魔眼も、エリザベートには効かないのか?
エリザベートは俺たちなら魔眼の支配に耐えられると言っていたけど。俺たちはニルヴァナの実力が解っている訳じゃないからな。
とりあえず、俺たちは
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アリウス・ジルベルト 18歳
レベル:15,529
HP:164,689
MP:251,184
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イラストレーターはParum先生です。
アリウスのデザインは近況ノートとTwitterに載せました。
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