第188話:情報共有


 この世界の魔神や神よりも強くなるために、俺は『世界迷宮ワールドダンジョン』を攻略することにした。


 またダンジョン中心の生活になるけど。今の俺には『迷宮の支配者ダンジョンマスターの指環』があるから。攻略済みの階層なら直接行き来することができる。


 『世界迷宮』を攻略中でも、ダンジョンに何日も籠る必要はないからな。魔神や神の動きを探りながら、攻略を進めるつもりだ。


 俺たちは魔神エリザベートの城に戻ると。魔王アラニスに『世界迷宮』と『ダンジョンの神』から聞いたことを全部そのまま伝えた。

 『ダンジョンの神』は魔王アラニスを『RPGの神』の駒だと言ったけど。アラニスが『RPGの神』の言いなりになるとは思わないからな。


「なるほど。なかなか面白い状況になっているみたいだね。アリウスはこのことをエリザベート陛下に話すつもりなのか?」


「ああ、そのつもりだよ。エリザベート陛下と腹の探り合いをするつもりはないからな。もし陛下が俺の敵になるなら、正面から叩き潰しに来るだろう?」


「確かにその通りだね。じゃあ、早速エリザベート陛下に話しに行こうか」


 魔神エリザベートはドームのような巨大な広間で、ハイネルフォード以下、魔将と呼ばれる幹部たちと一緒にいた。

 他の奴に聞かれて困る話でもないし。その場でエリザベートにも全部正直に伝える。


「アリウス。おまえが言う『RPGの神』とは、おそらく私に『魔界神』と名乗った者のことだろう。

 姿も見せずに、偉そうに言うだけの不遜な奴だったが。アリウスを殺すために、魔神や神を操るだと……面白いではないか!」


 エリザベートは嗜虐的な笑みを浮かべる。


「私が魔界に招いた客人のアリウスを害するだと? 私に喧嘩を売っているのか?

 『RPGの神』とやらが舐めた真似をするなら、この魔神エリザベート・イルシャダークが受けて立つぞ」


 エリザベートは俺の味方をしてくれるようだけど。


「エリザベート陛下が、そう言ってくれるのはありがたいし。陛下が言いたいことも理解しているつもりだけど。俺は売られた喧嘩は買う主義なんだよ。たとえ相手が魔神や神だとしてもね」


 『RPGの神』がそそのかした魔神や神に狙われたら、今の俺では勝てないことは解っている。

 だけどこれは俺の問題だからな。勝てないとしても、自分でどうにかするつもりだ。


「そうか、アリウス。おまえはそういう・・・・奴なのだな……益々気に入ったぞ」


 エリザベートが面白がるように笑う。

 この世界の魔神や神に挑むなんて、無謀な奴だと言われると思ったけど。

 エリザベートは俺を馬鹿にするつもりはないみたいだな。


「だが他の魔神や神が私に喧嘩を売る・・・・・・・なら、私がどうしようと勝手であろう? それでもおまえが自分で喧嘩を買いたいなら、私が叩き潰す前に仕掛けるのだな」


 ここは意地を張るところじゃないし。俺がエリザベートの立場なら、同じことをすると思うからな。借りを作ることになるけど、仕方ないか。


「解ったよ、エリザベート陛下。陛下の好意に甘えさせて貰うよ」


「アリウス、おまえは魔神や神よりも強くなるのだろう? おまえがどこまで強くなるか、楽しみにしているぞ」


 エリザベートがどこまで本気で言っているのか解らないけど。俺が本当に魔神や神より強くなれば、エリザベートに借りを返すこともできるだろう。


「エリザベート陛下。アリウスは面白い奴だだろう?」


「ああ、確かにな。私が魔神の力を見せてやったというのに、まだ魔神や神に挑むと言うのだからな。だが只の無謀な馬鹿ではないことは、アリウスと剣を合わせた私には解るぞ」


 魔王アラニスとエリザベートがニヤリと笑いながら、俺の話をしている。

 エリザベートが認めてくれたことは、素直に嬉しいけど。そういう話は、俺がいないところでしてくれよ。


「アリウス、解っていると思うが。俺とセレナはおまえに付き合うぜ」


「ええ。『世界迷宮』の攻略に、魔神や神を相手にするとか。こんな面白そうなことを、アリウス1人にさせないわよ」


 勿論、グレイとセレナが俺のことを思って、言ってくれていることは解っている。


「ああ、解っているって。グレイ、セレナ。ありがとう」


「アリウス、おまえに礼を言われるようなことじゃねえけどな」


 これから当面の間は、エリザベート以外の魔神と神の出方を窺いながら。『世界迷宮』の攻略を進めることになるけど。

 今の状況を地上にいるみんなにも伝えておく必要がある。


 俺が魔界にいれば、魔神や神が俺に手出しできるから。『RPGの神』が暴走する可能性は低いと思う。だけど可能性はゼロじゃない。

 もし最悪の事態・・・・・が起きたときに何も知らないと、対処の仕方を誤るだろう。魔神や神が攻めて来るなんて、誰も思わないからな。


 だけど今の状況を話したら、俺が魔神や神に狙われる可能性があることを、みんなに伝えることになる。

 みんなに心配させたくないけど。嘘をつく訳にもいかないからな。


※ ※ ※ ※


アリウス・ジルベルト 18歳

レベル:14,119

HP:149,715

MP:228,339

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る