第160話:その後
アラニスが戦うところを見たことで。やっぱり、俺はアラニスと同じ強さに辿り着つきたいと思った。
俺たちが下手なことをしなければ、アラニスが敵になるとは思わない。だけどアラニスは油断ならない奴だからな。アラニスと対等に戦える力が欲しい。
アラニスに勝ちたいとは思わないけど。誰かと対等の強さが欲しいと思ったのは、初めてのことだ。
※ ※ ※ ※
SSS級冒険者序列1位シン・リヒテンベルガーが、魔王に敗北したことは。世界中を震撼させた。
勇者も
それでも魔族を敵視する奴らはいるし。魔族国ガーディアルと同盟を結んだロナウディア王国とグランブレイド帝国に、敵対する勢力も活動を続けている。
だけど反魔王、反魔族の直接的な動きは、急激に衰えて行った。
魔王と敵対しても得じゃないと、冒険者ギルドを支配する奴らが気づいたからだろう。
「アリウス。これは老婆心からの忠告じゃが。戦うことが全てじゃない。魔石の取引に冒険者ギルドを絡ませてはどうじゃ? 魔族と取引することで利益を得れば、
シンの助言を受けて。俺は『魔王の代理人』として冒険者ギルドに魔石の取引を持ち掛けた。その後、冒険者ギルドは平常運転だし。バイロンを失った『奈落』が、刺客を送って来ることはなかったから。まあ、効果はあったんだろうな。
死んだことになったシンとガルドは、魔族の領域にしばらく残って、自分を鍛え直すらしい。
アラニスの側近になった訳じゃないけど。シンは義に厚い奴だし、ガルドは
エイジは意識を取り戻すと、直ぐに姿を消した。まあ。正直なところ、エイジが何を考えているのか、解らないけど。少なくとも今より強くなるまでは、アラニスに再び挑むことはないだろう。
俺はグレイとセレナと一緒に、
俺はダンジョン攻略の合間に、学院やカーネルの街の冒険者ギルドに行ったり。みんなの仕事ぶりを見せて貰ったり。双子の弟と妹のシリウスとアリシアを、遊びに連れて行ったりしながら。月日が過ぎて行った。
そしてシンたちとアラニスの戦いから、1年と9ヵ月が過ぎて――俺たちはロナウディア王国王立魔法学院を卒業した。
※ ※ ※ ※
俺は学院を卒業するまでに、10番目の最難関ダンジョンまでソロで攻略した。
最難関ダンジョンは10番目で打ち止めだったけど。
「アリウス兄さん、今度僕の部屋に遊びに来てね!」
「アリウスお兄ちゃん、私のお部屋にも。約束だよ!」
シリウスとアリシアは、この4月から飛び級で学院に通うことになった。
学院は全寮制だから。父親のダリウスと母親のレイアは、ちょっと寂しいそうだけど。
2人の成長を認めて、飛び級で入学を勧めたのはダリウスとレイアだからな。
俺が王国宰相を継ぐことは、とりあえずは今も保留だ。
俺はもう宰相になるつもりはないけど。強くなること以外に、
だけどダリウスが宰相を引退するのは、まだ先だから。とりあえず保留ということになっている。
「じゃあ。俺はダンジョンに行ってくるよ」
10番目の最難関ダンジョン『神々の狂乱』を攻略したことで。俺は『
『迷宮の支配者の指環』があれば、転移不可能な最難関ダンジョンのどの階層にも、直接行くことができる。
俺は学院を卒業してからも、鍛練のために毎日ダンジョンを攻略している。迷宮の支配者の指環』で直接攻略する階層に行けば、時間を圧倒的に短縮できるからな。
『最難関ダンジョンは、攻略できるかなど完全度外視で。
ソロで『神々の狂乱』を完全攻略した日。『ダンジョンの神』を名乗る奴の声が聞こえた。
『RPGの世界だから、勇者が主役で魔王がラスボスなど。俺の趣味ではないからな。
それよりも……これから面白くなりそうだな』
「なあ。それって、どういう意味だよ?」
俺の質問に答えないまま、『ダンジョンの神』を名乗る奴の声は聞こえなくなった。
「『ダンジョンの神』ね……勿論、いることは知っていたよ。他にも勇者と魔王を導く『RPGの神』や、世界を恋愛の色に染める『乙女ゲームの神』。様々な神たちが集まって、この世界を創ったんだからね」
『ダンジョンの神』の話をすると。アラニスはアッサリと答えた。
「勇者と魔王を導くのが同じ神なのか……て言うか、そんなことより。なんでアラニスは神に詳しいんだよ?」
「アリウスには言ってなかったかな? 私は『
なあ、アラニス。そんな話、俺は聞いてないからな。
※ ※ ※ ※
アリウス・ジルベルト 18歳
レベル:13,525(+6,627)
HP:143,388(+70,806)
MP:218,699(+107,668)
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