閑話:※女子たちの会話※

 今回、いつもと趣向が違いますが。どうでしょうか?


※ ※ ※ ※


※女子たちの会話※


A:「ねえ、みなさん。ジルベルト侯爵家のアリウス様が、魔王の代理人でSSS級冒険者のアリウスと同一人物だという噂ですけど。フランチェスカ皇国の貴族に嫁いだ従姉に聞いた話ですが、どうやら事実のようね」


 王立魔法学院に通う私たち4人は、アリウス様と同じ2年生。一応貴族だけど、アリウス様たちのようなロナウディア王国の中心にいるような大貴族ではない。


B:「やっぱり、噂は本当なのね。だけどアリウス様の噂と、フランチェスカにいる従姉に何の関係があるの?」


A:「あら、貴方は何も知らないのね。冒険者アリウスは魔王の代理人として、勇者との争いを止めたのよ。フランチェスカ皇国は勇者を支持していた主要国の1つだから。

 停戦交渉のためにフランチェスカを訪れた冒険者アリウスが、自分がロナウディア王国のアリウス・ジルベルトだと認めたという話を聞いたのよ」


B:「なるほど、そういうことね……私はアリウス様推しだから、アリウス様が1年生の途中から全然学院に来なくなって心配していたんだけど。

 最近になってまた学院で見掛けるようになって、超嬉しいって思っていたら。学院に来なかったのは、魔王の代理人として仕事をしていたからなのね」


C:「私はエリク殿下推しだけど……なんで殿下は結婚しちゃったのよ!」


D:「あの……話の趣旨が変わっていますよね? まあ、学院の生徒が訊いたときも、アリウス様は認めたようですから。噂が事実なのは間違いないみたいですけど。

 アリウス様は去年のダンジョン実習で起きた襲撃事件でも大活躍でしたし。ヨルダン公爵が起こしたエリク殿下暗殺未遂事件でも、アリウス様が殿下たちを守ったという話ですから。SSS級冒険者でも全然不思議じゃないですよね」


C:「でもアリウス様は魔王の代理人なのよね? 18年前の『ロナウディアの危機』のこともあるし、魔族は私たちの敵でしょう。勇者もアッサリと魔族に負けちゃったみたいだし……魔王の代理なんて怖いわよね?」


A:「貴方は何を言っていますの。ロナウディア王国は魔王が治める魔族の国ガーディアルと同盟を結んだんですよ。同盟国のこと悪く言うのは不謹慎ですわ!」


B:「だけど魔族は色んな国と戦争を起こしているし。魔族に殺された人が沢山いるのは事実よね。魔族の国と同盟を結ぶなんて……ロナウディアはどうなっちゃうだろう?」


A:「別にどうにもなりませんわ。魔族の国との同盟は、エリク殿下が推し進めたことですもの。稀代の天才と呼ばれるエリク殿下が、間違ったことをする筈がありませんわ」


C:「もしかして、貴方もエリク殿下推しですか? 私と同志ですね!」


A:「いいえ、そういうお話では……」


D:「ちなみに私はジーク殿下推しですが。とりあえず、推しの話は置いておきましょう。魔族の国との同盟の件には、ロナウディアが誇るもう1人の天才エリス殿下も絡んでいますし。私もそこまで心配することじゃないと思いますよ」


B:「去年のエリス殿下とグランブレイド帝国皇太子の突然の婚約解消。アリウス様がエリス殿下を奪ったって噂だけど……

 アリウス様とエリス殿下が、一緒に同盟の話を進めたってことは……やっぱり2人はデキているの? アリウス様推しの私としては、物凄くショックなんだけど!」


A:「貴方という人は……何でも恋愛の話にするのはお止めなさい。さっきも言いましたけど、魔族の国との同盟の立役者はエリク殿下ですし。殿下の補佐として、ソフィア様や他の生徒会のメンバーも関わっていますわ」


B:「生徒会のメンバーって、ミリアさんとノエルさんのことよね? あの2人も可愛いし、ソフィア様だって……最近アリウス様に絡んでいる水色の髪の1年生も……アリウス様の周りには、なんで美少女ばかり集まって来るのよ!」


A:「だから、恋愛ではなく。同盟の話だと言いましたよね?」

 

 私は呆れた顔をするけど。そんなことお構いなしに。


C:「アリウス様のハーレムだって。男子たちが悔しそうに噂してましたよ」


B:「アリウス様のハーレム……私も入れて欲しいわ!」


A:「貴方たちねえ……ハーレムなどと言って、それこそ不謹慎ですわ。そもそもアリウス様は恋愛の話が好きじゃないみたいですし。ご本人の前では絶対に言わない方が良いですよ」


D:「え……そうなんですか? この学院の生徒は全員恋バナ好きだって思っていましたよ」


A「:貴方まで……話をややこしくしないで欲しいんですが」


E:「まあ、女子は恋バナ好きじゃからのう。何でも恋愛の話に結びつけるのは、仕方がないことだろう」


ABCD:「「「「は?」」」」


 突然出現した白い髪と髭の老人。だけど身長は190cm近くあって、身体つきも筋骨隆々。とても老人という感じじゃないわ。


B:(誰、このお爺ちゃん?)


C:(私は知りませんけど……)


D:(でも学院には家族でも簡単には入れませんし。ここにいるってことは、学院の関係者ですよね?)


 みんなが戸惑っているから。私は警戒しながら老人に声を掛ける。


A:「あの……学院の関係者の方ですか?」


E:「まあ、そんなところじゃが。お主らの話を聞かせて貰ったが、アリウスは随分とモテるようじゃな。朴念仁の戦闘狂だと聞いておったが、お主らはアリウスが怖くないのか?」


B:「はあ? あの、何を言ってるんですか? アリウス様は優しくて、超カッコイイですよ! 私がパーティーでダンスに誘ったときに。ステップをミスしたのに、アリウス様は何も言わずにフォローしてくれて。下級貴族で礼儀作法もダメな私のことも、アリウス様は笑わなかったわ!」


C:「ああ……そんなことがあったんですね。ちょっと羨ましいかも」


A:「貴方たちねえ……」


 年齢的に目上の人なのに。貴方たちは何を言っているの?


A:「私の友人が失礼しました。私たちはアリウス様とそれほど親しい訳ではありませんが。アリウス様は魔王の代理人というだけで、悪い噂は聞きません。

 それにアリウス様は誰にでも親しい方ではありませんが。接する機会があれば、優しく接してくれます。つまりアリウス様は、私たち生徒の憧れです!」


E:「なるほどのう……良く解ったわ。つまりアリウスは女たらしということじゃな」


A:「いいえ、そういうことではなくですね……」


 私はフォローしようとしたけど。


B:「もう、何を言ってるのよ! アリウス様は下心とか、全然無いんだから!」


E:「つまりアリウスは女たらしではなく、人たらしということか」


 老人は勝手に納得して、ガハハと豪快に笑う。


E:「ならば……そもそもエイジ如きに・・・では相手にならぬのは解っていたが。このまま捨て置くのはは勿体ない……お主らの意見、参考になったぞ」


 もう一度豪快に笑うと、老人は忽然と姿を消した。


B:「何……今の?」


C:「アリウス様のことを呼び捨てにしていましたし。アリウス様のお爺様とか?」


B:「え……私はアリウス様のお爺様に、生意気なことを言っちゃたの!」


 慌てているけど。たぶんそんなことはないわ。

 だって隠していたけど……アリウス様のことを語る老人の目には、明確な殺意が宿っていたから。


 あの老人が何者なのか……私には解らないけど。今日、学院の正門のところに現れた藍色の髪のイケメンよりも、危険な存在だということは解る。


 私は一応貴族ってだけで、王立魔法学院の中では平凡な生徒だけど。

 人を見る目だけには自信があるから。


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