第114話:グレイとセレナ
その日1日。ナナイたちと
ナナイたちが戦闘に慣れたら、俺とジェシカはフォローに徹して。基本的には4人だけで戦って貰った。
昼食を挟んで夕方まで攻略を続けると。元々レベルが低いこともあって、ナナイたちのレベルが上がった。
「なあ、ナナイ。俺の伝手を使えば、おまえたちのパーティーに入る前衛を見つけることはできると思うけど。どうする?」
今日1日付き合うだけで終わりっていうのも無責任だからな。一応当てもあるし。提案してみたんだけど。
「アリウスさん、ありがとうございます。ですが……」
ナナイは仲間たちに目配せして、頷き合う。
「私たち4人だけで、もう少し頑張ってみようと思います。私たち1人1人がカバーし合って、慎重に行動すれば。ダンジョンでも何とかなるって解りましたから」
『ガジェッタの大洞窟』の攻略を始めたときは、ナナイ1人が前衛と
だけど後半は、斥候のセラが戦っているときは、他のメンバーが周囲に気を配ったり。ナナイが忙しいときは、代わりに魔術士のカイルが指示を出したりと。お互いをカバーできるようになった。
「まあ、それもアリだな。おまえたちのペースでやれば良いんじゃないか。だけど撤退するタイミングだけは間違えるなよ。特にダンジョンだと余裕のあるうちに戻らないと、帰り道で
「はい、解っています。私たちには慎重過ぎるくらいが、ちょうど良いんですよね」
「あんたたち。何か困ったことがあったら、冒険者ギルド経由で私に連絡しなさいよ」
ジェシカは意外と目面倒見が良いし。ナナイたちを気に入ったみたいだな。
ナナイたちは『
いや、俺がフォローしても良いんだけど。SSS級の俺がやると、ギルドの連中が余計な気を遣うからな。
「アリウスさん、ジェシカさん。今日は本当にありがとうございました!」
ナナイたちに礼を言われて。俺とジェシカはラウドの街の冒険者ギルドを後にした。
※ ※ ※ ※
さらに1週間が過ぎて。再びグレイから『伝言』が来た。
内容はドタキャンしたことの詫びと。時間ができたから、向こうからロナウディア王国の王都に訪ねて来るというものだった。
今回もジェシカに声を掛けたら、ジェシカも来ると言うので。俺の実家にジェシカも呼んで、グレイとセレナと会うことになった。
「貴方がジェシカさんね。アリウスから話は聞いているわよ。私はアリウスの母親のレイアよ。よろしくね」
グレイとセレナとの約束の時間の前に、ジェシカを実家に連れて行くと。レイアが真っ先に出迎えた。
「は、はい。お母様。こ、こちらこそ、よろしくお願いします!」
ジェシカが緊張しているし。レイアはニマニマ笑っているんだけど。
「アリウス。ジェシカさんが私のことを『お母様』だって!」
「いや、俺の母親って意味で言っただけだろう。ジェシカ、適当に寛いでくれよ。俺の父さんと兄弟にも紹介するからさ」
「ア、アリウスのお父様……」
いや、だから何で緊張しているんだよ。
ダリウスに挨拶したときは、ジェシカはカチコチだったけど。シリウスとアリシアに会ったら『か、可愛い……』と心の声が駄々洩れしていた。
シリウスとアリシアは、子ども扱いされて頬を膨らませたけど。ジェシカがS級冒険者だと知ったら、目をキラキラと輝かせて。ジェシカから冒険者の話を聞いているうちに、直ぐに打ち解ける。まあ、ジェシカはホント面倒見が良いからな。
ジェシカに2人の相手をして貰っていると。グレイとセレナが到着した。
「このうちに来るのも、久しぶりね」
「9年ぶりか? ダリウスとレイアも変わってねえな」
ダリウスとレイアに案内されて、グレイとセレナが居間に入って来る。
「グレイさん、セレナさん。お久しぶりです!」
ジェシカが2人に駆け寄る。こういうところは、今でも子供っぽいよな。
「あら、ジェシカ。随分と綺麗になったじゃない」
「ジェシカもS級になったんだよな。アリウスから『伝言』で聞いているぜ」
懐かしそうに話をするグレイ、セレナ、ジェシカの3人。ジェシカと2人が会うのも5年ぶりだからな。
俺の方は2人と別れてから、まだ1年も経っていないけど。懐かしいというか――
「よう、アリウス。何をそんなにマシマジと俺たちを見てるんだよ」
「そうよ、アリウス。『伝言』でも話をしているし。そこまで久しぶりって感じでもないでしょう?」
セレナが
「2人とも、わざと言っているだろう。俺が言うのもなんだけど……グレイもセレナも強くなったよな」
グレイとセレナが強いのは当たり前だけど。1年ほど前に別れたときと比べて、2人の存在感は明らかに増している。
「アリウス、おまえこそ。別に疑う訳じゃねえが。ソロで『精霊界の門』を攻略したってのは、本当みてえだな」
グレイがニヤリと笑う。
「アリウス、ジェシカ。先週はドタキャンして済まなかったな。予定が狂ったと言うか、思ったよりも
「そうね。一応、私たちはアリウスの師匠だから。弟子に負ける訳にいかないわね」
何の話をしているのかと一瞬思ったけど。
「え……グレイ、セレナ。もしかして……」
グレイは勝ち誇るように、豪快な笑みを浮かべる。
「ああ。俺たちは6番目の
※ ※ ※ ※
アリウス・ジルベルト 16歳
レベル:5,616
HP:59,130
MP:90,342
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