第91話:共犯者
午後は学院ダンジョンの5階層を攻略する。だけどノエルは別メニューだ。
ノエルは10レベルだからな。15レベル以上の
具体的には俺が『
5階層の魔物の方も、数が多いときは俺が魔法で調整する。まあ、バーンとミリアは強くなったからな。そこまで数を減らす必要はないけど。
ダンジョン攻略の後は、今後の自主練の打ち合わせだ。
「バーンとミリアは引き続き魔力操作の練習だな。ミリアはコツが掴めたみたいだから、強弱をつけて魔力を動かすイメージで。バーンはとにかく魔力を何度も発動させて、魔力が流れる感覚を掴むことだな」
ミリアはやはり魔法の才能があるみたいで。すでに魔力を操作すること自体はできるようになった。だけど精度がまだ低いから、具体的にイメージしながら精度を上げていく必要がある。
バーンはまだ感覚が掴めていないから、スキルでも魔法でも良いから魔力を発動させて。魔力が流れる感覚を感じ取れるようにならないとな。
「ノエルも強くなりたいなら、魔力操作は基本だからな。毎日MPを使い切るまで自主練しろよ」
「アリウス君。MPを使い切ったら、気絶しちゃうよね?」
「ああ。だからMPが少なくなったら、ベッドの上で魔力を発動しろよ」
俺の言葉にノエルが唖然とする。
「ノエル、気持ちは解るけど。アリウスは真面目に言っているから諦めた方が良いわよ。魔力操作を教えることに関して、アリウスはスパルタだから」
「ふえええ! そんなことをしたら死んじゃうよ!」
「いや、死なないって。俺は小さい頃に散々やったし。ミリアとバーンだって、毎日やっているからな」
「ノエル、慣れれば気にならなくなるぜ。疲れ切って気絶するように眠るって言うだろう。毎日そんな感じだな」
「意外と翌日は何ともないのよね。睡眠時間を十分取る必要はあるけど」
「バーン殿下もミリアも、アリウス君に洗脳されているようにしか聞こえないけど……う、うん。私も頑張ってみるよ」
このメンバーで2週間後に再び学院ダンジョンを攻略する約束をして。みんなと別れた後、俺は
今週の月曜日は午後まで授業に出たからな。週明けの授業をサボることは決定で。俺は土曜の夕方から月曜の夜まで『魔神の牢獄』に挑み続けた。
※ ※ ※ ※
翌週は予想通りに、エリスが毎日のように絡んで来た。
昼飯は学食でランチプレートと一緒にエリスの弁当を食べる。それが毎日続くかと思ったけど。
「私だけがアリウスを独占するのはフェアじゃないから」
エリスはミリアと話をしたらしく。エリスの弁当の量が減って、ミリアも弁当を持って来てくれるようになった。
「私は……アリウス君、ごめん」
自主練を始めたノエルは弁当を作る余裕がないみたいで。弁当を作って来なかったことを謝っていたけど。別に謝るようなことじゃないだろう。
エリスとミリアに弁当を作って貰うようになったから。俺が学院をサボる日は、2人に事前に伝えることになった。
半分近く授業をサボっていることがバレて、ジト目をされたけどな。
だけどもう7月に入ったから、夏休みまで3週間を切っている。
俺の当面の目標は夏休みまでに『魔神の牢獄』をソロで攻略することだからな。時間的に余裕がないんだよ。
※ ※ ※ ※
「なあ、エリク。夏休みにエリスをグランブレイド帝国に連れて行くことは、今でも確定なのか?」
木曜日の昼休み。俺はエリクのサロンに来ている。この後エリスたちと昼飯を食べる約束をしているから、紅茶だけ出して貰った。
「ああ、そうだね。それに関しては姉上も拒絶していないからね」
「じゃあ、俺が一緒に行くのも確定ってことか」
「
エリスからも話は聞いているけど。帝国に戻るんじゃなくて『行く』って言っているのは、
「解ったよ。だけどその前に、エリクに確認しておきたいんだ。エリクの考えは解っているつもりだけど、おまえの口からハッキリ聞きたい。
なあ、エリクの1番の目的は俺を取り込むことと、エリスを自由にすることのどっちなんだよ?」
エリクが腹を割って、正直に話してくれるか。これは俺にとって重要なことだ。
「なんだ、そんなことか。僕の目的は両方だけど――なんて言っても、アリウスにはバレているよね」
エリクは苦笑する。
「目的のために非情になり切れないのが、僕の弱点だってことは自覚しているよ。僕は姉上のこともジークのことも、切り捨てることはできない。
だからアリウスを取り込むことと、姉上のどちらかを優先するしかないなら。僕はアリウスを諦めるよ」
エリクがここまで正直に話すなんて、思っていなかった。
「だけどアリウス、勘違いしないで欲しいんだけど。僕は相手がアリウスだから正直に話したんだ。このことは絶対に誰にも言わないでくれ。姉上やジークにもね」
「ああ、解っているよ。正直に話すことで俺を取り込もうというエリクの意図もな」
エリクは転んでも只では起きない奴だからな。素直に話した方が俺を取り込みやすいことは、当然計算している。だけどそれでもエリクが腹を割ってくれたことが、俺は嬉しいんだよ。
「まるで姉上の言葉みたいだけど。これからも僕は、僕のやり方でやるつもりだよ」
「まあ、エリクらしくて良いんじゃないか。あと俺は夏休みの前にやることがあるから、たぶん纏めて授業をサボることになる。その間に何かあったら、エリクがフォローしてくれよ」
学院は出席よりも成績重視で。俺はこの前の試験で学年1位だったし。前世の高校と違って、学院には夏休み前の期末試験はない。だから授業をサボっても問題はないけど。
「あまりサボり過ぎると、ダリウス宰相が良い顔をしないってことだね。まあ、それくらいは任せてくれて構わないよ。アリウスに頼み事をされるなんて初めてだからね。僕の方から宰相には上手く言っておくよ」
学院をサボるくらいで、ダリウスが文句を言うとは思わないけど。エリクと上手く付き合っていることを知れば、ダリウスも安心するだろうからな。
「じゃあ、みんなを待たせているから。俺はそろそろ行くよ」
「アリウス、最後に1つだけ。これは仮の話だから聞き流してくれて構わないけど――」
エリクはそう前置きすると。
「仮にアリウスがソフィアを僕から奪ったとしても。僕がアリウスとソフィアを恨むことはないよ。意外に思うかも知れないけど、僕は政治的な立場よりも君たちの方が大切なんだ」
「エリク、おまえ……」
完全な不意打ちに、エリクはしてやったという顔をしている。
「勿論、僕だって今アリウスが何をしたいのか解っているつもりだよ。だから、あくまでも仮の話で。君に腹を割って話したついでに、僕の素直な気持ちを伝えたまでだ」
ソフィアに関しても、エリクは何もするつもりはない。全ては俺次第ってことだな。
「ホント、エリクは食えない奴だよな。おまえらしいけど」
「ありがとう、アリウス。誉め言葉として受け取っておくよ」
このとき。俺とエリクは本当の意味で
※ ※ ※ ※
アリウス・ジルベルト 15歳
レベル:2,455
HP:25,774
MP:39,248
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